ティー・・・タイム?
ブロンフェイゼ皇帝国に、各地から任務をこなしてきたスレイ、エルシア、レティシア、ゼルエルの四人が集結していく。皆それぞれの思いを背負ってグラフェルのもとへと向かう。
待ちわびた再開。この瞬間ほどグラフェルにとって嬉しいことはない。やっとのことで集まったためか、ほかの四人も、顔が緩み切っている。
グラフェルは早速、近況をみんなに話す。魔族狩りが行われているのは、この帝国からが発端の一つであり、それが段々と各地に感染するかのように広がっていった。
ここまでは全員が調べた通り。だが、ここからが本題だった。
「さて、みんな集まったことだし、早速だけど本題に入るか。」
グラフェルが最初に切り出し、皆もそれに同意見だ。長々と話していられる時間などもったいないからだ。
「じゃあ、まずは皆が集めてきたもらった情報を整理する。一つ目は、今世界のどこかで戦争を勃発させようとしている集団の噂を耳にしていること。二つ目は、神罰を執行しようと躍起になっていた神が、ガドム以外は全滅していること。」
グラフェルが話していることは確かに真実ではあるが、それでも信じられないというような顔をしている四人は、グラフェルの顔をそろりと見ていると、悔しがっている、というよりはいつものようにしている表情だった。だが、そんな表情をしているグラフェルでも、心の奥底ではかなり不愉快だという感情をなんとかしている始末。
「ところで、なんで僕は、こう、鎖に繋がれなきゃいけないの?まあ、こういうシチュエーションもアリだけど。」
後ろでグルグルに鎖で巻かれているガドムを見て、全員なんでこんな奴がここまで来ちゃってんの?といった表情をしていた。ゼルエル以外は。
「ゼルエル。なんであの役立たずをここに連れてきた?必要ないし、何より天界に送還するのが任務の一環じゃなかったか?」
流石のグラフェルも呆れたとしか言いようがない。それもそのはず、ガドムは戦闘では防御という点においてはとても優秀であるものの、戦力に数えるかというとどちらかといえば数えられないぐらい、弱い。
「ひっどいなあ。僕もそれなりに戦えるんだけどなあ。グラフェル様はもしかして性格的にドSなの?それだったら僕と相性がぶぺっ?!」
「な、なにを言ってるんですか貴方は!?うちのグラフェルを侮辱しないでくれますかね!!?」
ガドムが話している途中でいきなりグーパンチをかますゼルエルもゼルエルだが、それ以前に変なことを言い出した彼が悪いため、誰も全力で殴ったことについてはスルーしていた。
「ち、違うよお。全然ディスってないよ。大体、なんで僕が彼を蔑む必要があるんだい?!僕は彼が天界の新たな王になってからは好き勝手出来るようになったし、それこそ感謝しかないんだよお。ねえ、グラフェル様もなんか言ってやってくださいよ。僕一人じゃどう考えても説得はおろか、話すら聞いてくれそうにもないし。」
確かにその通りだ。ガドムはただえさえちゃらんぽらんでどうしようもないが、これでも最古参の神の一柱でもあり、むしろグラフェルに対しての感情は非常に好意的だ。
「・・・・・・まあ、そこは確かにそうだが」
「グラフェル様、この神はやはり送還すべき、・・・でしょうか?」
異様なほどに不機嫌、しかめっ面をするゼルエルに、流石のグラフェルも判断に困る。いくら何でもこのまま送還するのは彼でも少し気が引いてしまう。
「いや、送還はしなくとも、監視付きで自由にさせればいいんじゃないのか?ガドムも、流石にまだ帰りたくはないだろうし」
判断に困っているところをスレイが助け舟を出す。そのことにグラフェルとゼルエルの二人は困惑を通り越して呆れ果て、肝心のガドムはというと、まるでここに本物の神様が舞い降りてきたかのように目を輝かせている。
「そうだろうそうだろう。やっぱり、僕がいないとみんな心配するんだから。この照れ屋さんたちめ。」
「ちょっと一回黙ってもらえますか。非常に不愉快です憤りを感じます侮辱します送還します。」
「その蔑んだ眼で見られると興奮しちゃうじゃないか。あと送還だけはやめてくださいお願いします。」
性癖が非常に拗れていてキャラが濃ゆすぎるというか、何というか。
そんなこんなでいろいろあったものの、結局のところガドムは送還せず、自分たちの目が光っていられる場所に置いておくことになった。やっぱり僕がいないとみんな寂しいんだねとは本人の弁だが、ここまで調子に乗らせてしまうのは流石に誰にも責められない。むしろオープンすぎるその性格ゆえにこうなっているわけではあるが。
「みなさぁん。そろそろお茶にしませんかぁ?」
コンコンとドアをノックした後にグラフェル達が今いる邸宅の主が一人、ミレーユが茶菓子と紅茶を持ってきてくれた。
「ん、なんだ。もうそんな時間か。」
「んん~。ふう、少し休憩、としようか」
「「「さんせえ~」」」
和気藹々とティータイムを過ごす六人、とガドム。ガドムはというと、鎖から解放されてはいるが手の甲に鮮やかな群青の紋章がくっきりと浮かんでいる。これは契約を交わす時に出来る「制約章」といって、これがある限りは精神的に負担がかかるが、肉体的には自由になっているため、彼もこれなら動けると快諾してくれた。
「あら、今日の紅茶、これは・・・マルヴェール山脈地方のダージリンですね?」
「良く分かりましたね。エルシアさんの言う通り、このダージリンはマルヴェール山脈地方で採れたダージリンです。しかし、どうして飲んだだけで分かるんですか?」
「実は私、これでも貴族の端くれでしてね、紅茶に関してならば少々嗜んでおりますの」
嗜んでいるどころか産地まで当てるのはむしろすごいことなのでは?
誰もがそうツッコもうとするものの、ミレーユのすごいといわんばかりに目をキラキラ輝かせていては、流石にツッコむ気も失せてくる。
「ところでぇ。」
何やらミレーユが妙にソワソワしているのは気のせいだろうか?と皆疑問符を頭の上に浮かばせる。
「グラフェルさんは、レティシアさんとエルシアさん、どちらが将来のお嫁さんですかぁ?」
「「「ブフォッ!!??」」」
全員が全員、今の質問に口に含んでいたダージリンを一斉に噴き出した。
「な、な、な、・・・何をいいいい言っているの??!!」
「そそそそうですわ??!いきなりなんてことを仰いますの!!?」
流石に二人は突っ込まずにいられなかった。もちろん、顔を赤くしながら。
グラフェルに至っては、顔中真っ赤にして俯いていた。もうどんな顔をしていいのやら分からないこの雰囲気に、全員支配されていた。
そして、誰もがこう思った。この子、恐ろしすぎる!!!
どストレートすぎて草