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葬送の転廻者ーウロボロスー  作者: マシュマロ
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悩んでても

 真実を知った時ないし知らされた時、人は一体どのような表情、心理を浮かべるのか。

グラフェルの場合は、虚無感。ただそれだけである。

誰にも知られたくない、知ってほしくない情報など、生きているうちに一つや二つはあるだろう。

それは画策せずともいずれは知る運命にある。


 だが、グラフェルは自身の出生を知っても、なにも驚かず、慌てず、ましてや憤りすら感じてなどいなかった。


 自然ではなく、人工的に産まれた。たった一つの現実が、その言葉が深く胸に突き刺さった。

苦しい?辛い?死にたい?様々な言葉を投げつけられようとも、彼のいままで生きてきた時間は決して無駄ではなく、決して幻ではない。


 【生まれ落ちたからにはなにかしらの運命が導き、あなたという人を作り出すの】

そう教えてくれたのは他でもない父と母だった。


 グラフェルはこのことを仲間たちに知られてはいけない。多少なりとも罪悪感はあれど、自分の親なのだから何か理由があるのだろう。そう思ってメッセージを送った。


 -ただ本当の理由を知りたいがためにー


 時を戻して、二人は深刻かつ火急の案件となったグラフェルの出生について。

護衛天使達には少し席を外すと言って、それっきりである。

出生についてはいずれ話そうと思っていた。もう現実を受け止めきれるだけの心を持っているのだから。


 しかし、彼らが心配しているのは自分で知ってしまったグラフェルに、どんな顔で向かわなければならないのか分からないでいた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・はあぁ」


 「ため息をするのは別段いいとして、・・・どうしたものか」


 かなり、というかものすごく悩んでいる二人をこっそりと見ていた天使たちは密かに緊急会議を開くことにした。護衛天使だけでなく、天使総出で。


 「ではこれより、緊急会議を始めたいと思います。本日は業務中の方もいらっしゃいましたが、この度の会議への参加、誠に感謝の言葉を述べさせていただきます。」


 「本日の司会兼審査員を務めさせていただきます、アマリエルです☆皆様、どうぞよろしくお願いいたします☆」


 アマリエルという女性の天使は、天界でも地上でも人気のあるいわばアイドルのような存在で、彼女が天界に住まう天使だとしても、それでもファンでいられるほどの人徳と人気を得ている、天使としては非常に珍しいタイプ。

 そんな彼女がなぜこのような場所にいるのか。それは、グラフェルに関係する、と誰かが小耳にはさみ、そのことを彼女に伝えてしまったからである。

 ちなみにアマリエルは、グラフェルよりも二つほど下、ということらしいが、天使に年齢という概念は人為的な存在であるため必要はないのだ。にもかかわらず、そのようにして年齢というものさしではかっていれば、年下というイメージをつけやすくすることができる。

 したがって、アマリエルがグラフェルより年下と思わせるほうが彼女にとっては都合がいい。

なぜなら、甘えることができるからだ。

 また、彼女の口癖は語尾に。の代わりに☆がついている。彼女なりにどうやって行けば可愛いままでいられるのか、必死に研究している非常に真面目かつストイックな姿勢を見せているので、周りは逆に彼女を応援したくなるというスパイラルが形成されていっているのだ。

 

 



 「さて、今回の会議のテーマは、グラフェルお兄様と旦那様、奥様のわだかまりをどうにか我々で解決できないか、ということです☆皆様、知恵を振り絞って、お三方のために、今こそ我らの結束の力を見せるときです☆」


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォオ!!!!!!!


 たくさんの天使たちが一斉に声を張り上げる。家族同然の人(神)の悲しい顔や悩みごとを、みすみす放っておかせるわけにはいかないのが、彼等天使の思いである。


 それからというものの、一向に話が決まらないというのは、また別の話。

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