《幕間》 泡沫の月夜に
今回は番外編みたいなものです。
少しばかり分からないところもあると思いますが、その点については読者個人の感想で構いません。
空は黄昏色に染まり、夜へと変わるころ、二人の男女が手を繋いでいた。
男は右手を、女は左手を繋いで、星々が輝く夜空へと視線を変える。
「いつか、君とこうしてもう一度、この夜空を見たいと思っていたんだ。」
「あら奇遇ね。フフッ、実は私もなの。」
何気ない会話ではあったが、二人にとってはとても有意義なものだったらしく、頬を紅潮させている。
「俺は・・・その、君を迎えに行くまでにかなりの時間をかけてしまった。申し訳ない。」
男が頭を下げて女に謝罪するが、それは間違っていると言わんばかりに首を横に振る。
「それを言うなら私のほうこそ。あなたに会えなくて、あなたと過ごした時間が何よりも大切に思っていたの。だから、ずっと我慢してあなたがあれを継承して、私は花嫁修業を積んできたのよ。確かに時間はかかったけど、こうして出会えたんだもの。プラスマイナスゼロってやつよ。」
彼女はそう言って時間がかかっても会えたことに変わりはないのだから過程なんて関係ないということを彼に突き付けた。
反対に彼は、少し困惑したもののそれならそれでいいかと心の底で納得した。
「私には、あなたの見ているものが、あなたが目指す理想が何なのかはわからない。でも、夫婦になるんですから、最初は分からなくったっていいよね?」
「ああ、そうだな。他人を百パーセント理解できるのは心を読まない限り不可能に近い。だが、こうして話し合うだけでも少しずつではあるが、君という一人の人間を認識できる、分かり合えると俺は思う。」
「フフッ、少し不愛想だけど真面目で勤勉でとにかく自分の信じた道を突き進む真っ直ぐ。だから私はそんなあなたを好きになった。」
「ハッ、何を言っている。それを言うなら俺だって。優しくて暖かくて傍にいるだけでこんなにも心が安らぐ女性に出会ったことはない。あの月のようにすべてを包み込む優しさを持つ君だからこそ、俺は初めて自分の意思で選んだんだ。」
二人は互いに相手の良いところを言い合い、自分がどれだけ大切に思っているのかを告白した。
今宵は満月。すべての闇が優しい光に包まれる時間。そんな時に二人はあることを言い出す。
「「実は・・・あっ」」
「フッ、レディファーストだ。そちらからどうぞ。」
「あっ!逃げた!ずるーい!!そういうのは男の子からって相場が決まってるんですぅ。」
お互いに何を言いたいのか分かり切っていたようで、彼はレディファーストと言いながら自分から告白することを実は恥ずかしいと思っている節があった。
対して彼女は、告白するなら男の方からがいいに決まっているとどこかの少女漫画のようなシチュエーションに淡い憧れを抱いていた。
「はあ・・・分かった。こういうのは苦手なんだがな。」
「知ってる。」
「ふぅ・・・。俺と、結婚してくれますか?」
「ええ!勿論。」
雲一つない満天の星空を式場に、二人は永遠の愛を誓った。