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葬送の転廻者ーウロボロスー  作者: マシュマロ
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そんな馬鹿な...

「...こ、ここは?私は一体、どれほど...」

彼女は天使のゼルエル。フェルセーン共和国に向かったところまではよかったのだが、何故か分からないが、ここ数日間の記憶が曖昧だ。酷ければ全くないというほどで、どうしてこんな所にいるのか彼女自身知らない。


 (そういえば...)


 彼女がふと思い出そうとする。それより先に、周りを見渡すと暗くてあまり見えないが、暖炉の焼けた匂いが微かにするということは、ここは家の中であると気づく。

しかし、頭を強く打ったのかどうかは分からないが、記憶が混乱している。


(私は何故ここに?それに、他の皆様はとっくに連絡を終えているはず。どうにかしてここから通達できればいいのだが...)


 ゼルエルは手当たり次第に探してみる。だが、干し肉や干し草といった保存用の食料ばかり。

これだけしかないのは非常に残念だが、腹が減っているので仕方なく腹に入れることにした。


 現在の状況がまずいのかどうかはさておき、ゼルエルはこの暗さにようやく目が慣れたので扉のあるほうへ足を運ぶ。

だが、結界を張られているのだろうか手が弾かれてしまった。


 (くっ...こんなところで足を引っ張るわけには...いかないのに!)


そう思ったのも束の間。急に扉が開く。いきなりだったので後ろへ下がるゼルエル。

何もない空間から彼女の天器≪てんき≫、銀の柱≪アルギュロスパイル≫を取り出し、目前の敵と思われる人物へ向ける。(天器とは、彼女達天使が使用する独自の武器。形は十人十色で、同じものは発見されず、二つはないとされている。)

だが、ゼルエルが見たのは、あまりにも想像とかけ離れた人物だった。


 「おう。目が覚めたのか。そりゃあ良かった良かった。...それと、武器はしまえよ。俺がお前を助けたんだからな。」


 現れたのはガドムという男。淡い水色の髪に、空のような澄んだ青色の眼を持っている細身で長身。

実は彼は、グラン達が探している神のうちの一柱で、結界を造ることが出来る神。戦うことは苦手だが、サポートという点においてはかなり優秀。だが、性格は非常にがさつなので、意外と苦手意識を持つものが多いらしい。彼女もまた、その一人。


 「な...何故、貴方が此処に?それにこの家は...。」

「まあ、落ち着けゼルエル君。とって食ったりはしねえから安心しな。」

彼女を落ち着かせるガドム。だが彼女は、ずっと警戒心むき出しでガドムの方を睨みつけるように鋭く見ている。


(ありゃ、これは信用されてねえなあ。ま、当然と言えば当然か。)

実はこう見えて、ガドムは根は優しい。...のだが、この場合はただの誘拐と言われてもおかしくなかったし、何より彼は、女性が好きな女たらしなので、いつもこんな感じで相手にされる。ほぼ自業自得だ。


 (なんでよりにもよってこの方が?それに...痛っ?!)

体を動かそうとすると、激痛が走る。よく見ると簡素ではあるが左肩に包帯が巻かれている。どうやら、彼女は怪我をしていたらしく、どこかでガドムに拾われた。そう考えればこの状況に納得がいくと、そう自分に思い込ませる。


 「ああ、無理しちゃいかんよ。君は俺の家の前で倒れていたんだから。」

「家の前で...ですか?」

どういうことかとガドムに説明を求めると、ガドムは少々申し訳なさそうな顔をして、

「あ~、その...何だ。君は、俺たちの戦いに巻き込まれて怪我をしたんだ。いや、この場合はさせてしまった、が正しいか。すまん。」


(戦い?)

それは一体何の戦いか問いかけると、急に顔を俯いて、

「それは......」

と、歯切れの悪い返答をしてきた。


 もしやと思ったゼルエルは、思い切ってガドムに質問する。といっても、最初は何でもない質問だが。

なぜここに住んでいるのか?と。


その質問は予想だにしなかったのだろうか、ガドムは目を見開く。

「いや、俺は元々ここの生まれなんだわ。はっはっは。」

と、笑い飛ばしながら質問に答える。


 「そう...だったのですね。失礼いたしました。では本題に入りましょうか」

話を切り替えるゼルエル。その雰囲気に対してガドムも姿勢を正し、ゼルエルを見つめる。


 「なぜ貴方は天界≪ヘブリエーム≫に帰ろうとしないんですか?私としては、貴方が生き残っていたのであれば、そのまま連れて帰ることもできますが、敢えて質問しました。」

天使達は、神からの命令で地上に派遣、あるいは派兵されることが多いため、門≪ゲート≫を作って、いち早く報告できるようにとされている。神もまた然り。その質問に対してのガドムの答えは以外にも単純だった。


 「俺は、あそこを出てきてこっちに来た。というよりは帰ってきたといったほうが正しいかな、俺的には。そして、ほかのやつらも、なんか見過ごせねえんだわ、これが。」

屈託のない笑顔を見せるガドムではあるが、よく見てみると手が震えているのが分かった。やせ我慢をしていた。他の神達がどこで、何をしているかわからないが、彼の反応を見るからに、推測ではあるがかなりやられたとみるべきだろう。こちら側としてはかなりの痛手だ。だが、向こうも相当手傷を負っているはず。

 神一柱の戦闘能力は、それこそ個人差があるが、平均すると一般歩兵一万人分を一瞬で蹴散らすレベルだ。戦闘においては神の方が圧倒的優位。しかし、ガルガンチュアを使用したとなれば話は変わる。


 「ではこれから、どうなさるおつもりで?」

「..................それは」

考えてはいないのだろう。そうとった彼女はそそくさと準備を始める。

「ま..................待ってくれ!!!俺を...俺を連れて行ってくれないか??」

「はいいいい??!!」


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