台無しの序曲
俺は、小川久。
高校2年の17歳。と言っても、つい先日まで異世界でまる1年を過ごしてきたから、精神的にはプラス1歳ってところかな。
……まぁ、急にこんな事言いだすとアホかと思われるかもしれないが、事実だからしょうがない。
いつも眠たそうな目をしているからガチャピンとあだ名されていたような俺だが、ガチャピンより数奇な運命に巡り合うとは思ってなかった。
冬休みのさなか、ある事故に巻き込まれ、気が付いたら異世界に居た。成り行きで魔王と戦うことになって、旅に出た。いや、ホントに。
そして、仲間たちの助けと運もあって、魔王を倒す事はできたんだ。
もとの世界では、猛犬注意の札すら怖がって避けてたようなビビリの俺が、魔王を倒せるなんて嘘みたいだった。最初は最弱のスライム相手にすら逃げてばかりだったけど、この旅の中で成長したと自分でも思う。今だったら目の前にケルベロスが出て来ても驚かない。
そのままそっちに残る事も出来たけど、俺は元の世界に帰ってきた。とても悩んだけど、やっぱり残して来た家族が心配だったんだ。
でも、1年も向こうに居たっていうのに、こっちではまったく時間が経過していなかった。
これには驚いたけど、あれが全て夢だったわけじゃなかった。
なにしろ、向こうの世界で鍛えに鍛えぬいた俺の体はそのままで、トラックを正面から受け止めているところで目が覚めたし。しかも、ケガひとつなかった。
向こうで覚えた魔法は使えなくなっていたけど、身体能力や剣術、武術はそのまま。何しろ命懸けの修羅場だとか人間の潜在能力の解放する試練だとかを繰り返して魔王に勝てるまでになっていたから、こっちの世界では完全にオーバースペック。握力計を握りつぶして破壊してしまう握力は、うっかりドアノブをもいでしまうし、ちょっと走ったつもりで車を追い抜いてしまう。
帰宅部やめて運動部にでも入るか、いやでもこれ、反則みたいなもんだしなあ……なんて悩みつつ、まぁ休み明けに久しぶりの学生生活を始めるために登校して……うん、登校したはずだ。
それで、なんだっけ? 学食で腹いっぱい飯食った後に眠くなって……




