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エピローグ2 『ワールドフールの螺旋』

 あの連続放火事件以来、凪と鈴ちゃんはすっかり毎日のように探偵事務所に来るようになっていた。

 所長は忙しくてずっと顔合わせはできていなかったのだが、今日、やっと探偵事務所に顔を出した。ここ最近は俺たちが探偵事務所にいない夜か早朝に帰宅することが多かったから、鈴ちゃんは所長と初対面だ。

 所長がやってくると、慣れている凪は軽々しく手を上げる。

「やあ。所長さん」

「やあ。凪くん。そして、はじめまして。鈴ちゃん」

 初めて所長に会う人は、恐縮してしまうか、緊張してしまうことが多い。所長は男とも女とも取れないほどにカンペキに均整の取れた美貌を持っていて、その存在が現実離れした雰囲気を持つためだ。

「はっ、はじめまちて」

 鈴ちゃんはちょっと噛んでしまった。

「ん。いい子のようだね」

 噛んだだけでどうしていい子だとわかるのか。いや、たったひと目で常人では考えられない情報量を読み取ってしまう観察眼と推理力を持つ所長なので、なにかわかったのだろう。

 所長は自分の机に腰を落ち着け、俺たちに向かって人差し指の先を伸ばした。

「キミたちは良いハーモニーを生むだろう。したがって、キミたちは今日から列記としたチームになってもらう」

「チーム?」

 俺が首をかしげると、所長は宣言した。

「少年探偵団。それが、今日からキミたち四人のチームを表す名称だ」

「江戸川乱歩じゃないんだから」

 やや呆れ気味の俺に対して、逸美ちゃんは「いいわね~」と乗り気で、鈴ちゃんも「チームですか。なんだかすごいです」と感激しており、凪は期待に胸を膨らませるようにして、

「少年探偵団か」

 とつぶやいた。

 まったく所長も勝手な人だ。しかしまあ、今回の連続放火事件だってこの四人で解決できたし、チームというのも悪くはないのかもしれない。


 俺は今回の一件を経て、こう思った。

 人と人との出会いと別れは螺旋のようなものだ。

 また、再会と別れも螺旋になって、繋がっている。

 凪や郷ちゃんとの出会いは、別れを経て、今回のことで再会できた。

 しかし郷ちゃんとはまた別れてしまった。

 まあ、会えなくなったわけじゃないけど。

 でも代わりに、凪とはまだいっしょにいられている。

 浅野前さんとは出会って別れたけど、また会う約束もした。

 鈴ちゃんは出会って、まだいっしょにいる。

 中には出会って別れたらもう会えなくなる人もいるけれど、代わりに新しい出会いが待っている。

 時間もそうだ。

 冬があって、

 春が芽吹き、

 夏がいななき、

 秋が降りる。

 そして再び、冬が訪れる。

 でもそれは、まったく同じ冬じゃなく、螺旋の中にある、次の冬――

 人も時間も、そんな決して同じではない繰り返しの螺旋にあるのだろう。

 だからこそ思う。

 結局、凪が言っていた愚者の旅は、本当に終わったのだろうか。終わりと同時に、また始まったりはしていないのだろうか。

 きっと誰かの愚者の旅は続いていて、続き続けて、螺旋になっているのだろう。

 その螺旋が祝福のルートに向かいますように。

最後まで読んでいただきありがとうございました。今作はタイムリープを使った話になっていますが、途中で気づかれた方もいたかもしれません。いくらミステリーだからといって、救われないルートだけで終わる話ばかりではいやだなと思って、普通の青春ミステリーにそんなSFのエッセンスを加えた作品にしました。


また、少年探偵団や花音に興味を持っていただけたら、開たちのほんわかとした日常を描いた『あけちけの日常と少年探偵団の日常』も読んで笑ってもらえたら嬉しいです。

『あけちけの日常と少年探偵団の日常』は引き続き毎日更新していく予定なのでよろしくお願いします。


次回作についてですが、分量も多くなってしまって、まだ書き上がっていません。もう少しで完成するので4月中か5月上旬くらいには投稿を開始したいと思います。

今度は、開や凪たちが謎に満ちたVRゲームのファンタジー世界に入る話です。

最初はまた少年探偵団の発足メンバー4人で始まりますが、これまで大長編ではスポットの当たらなかった作哉、ノノ、花音の三人もメインで登場します。


最後に、改めて、読んでくださった皆様、ブックマークしてくださった皆様、評価してくださった皆様、本当にありがとうございました!

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