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第六章7   『routeM 15』

「逸美ちゃん。犯人が蒲生郷里を殺すのに使った凶器は、ナイフか短剣だ」

「うん。そうね」

 遺体を一瞥する。

「それと。これはまだ、警察に連絡しなくていい。本当は警察に連絡すべきなんだろうけど、俺は犯人と話をしたい。だから、警察への連絡はあとでいいかな?」

「わたしは開くんがそうしたいって言うなら、警察よりも開くんの事情を優先させるわ」

 ふと。

 今日の夕方、俺の家を去る前に唐突に郷ちゃんが言った言葉を思い出した。

 ――わたしは殺すのだけは嫌だ。それは最低だ。だったらわたしは、潔く死のう。

 あの言葉は、己の死を予感して言っていたのかもしれないな、と思った。

 自分の死期なんて、余命少ない病人ならともかく、刺されて焼かれて殺される人間が予感できるはずもないのだけれど、なにかしら思うところはあったのかもしれない。

「まさか殺すとまでは予想していなかったよ」

 いや、していたのかもしれない。この結末も、少なくとも可能性の段階では、想像くらいはしていた。だが、先手を打つことができなかった。助けることができなかった。

 とんだ役立たずだ。無能にもほどがあった。

 できるのはこれから犯人を捕まえることだけだ。

「それで、開くん。どうするの? これから」

 決まっている。

「犯人を捕まえるよ。今回の蒲生郷里殺しと連続放火事件の犯人は同一人物だ。そいつを捕まえて、俺が全部終わらせる」

 決着だ。

「開くん、わたしも行こうか?」

「いいよ。逸美ちゃんは心配性なんだから。俺一人で平気。いや、俺が一人で犯人と話をつけたい」

 逸美ちゃんはわかってると言わんばかりに、ふうと吐息を漏らす。

「そっか」

「そうしたいんだ」

 うなずく逸美ちゃんを見て、俺もうなずき返す。

 さて。

 俺は携帯電話を取り出した。

「いまから犯人に電話する。出ないはずがないからね。俺が電話を掛けることも、わかっているかもしれない。そうでなかったところで、電話には出るよ」

 そのままやり過ごすつもりなのか、俺と対峙する気満々なのかはわからないけれど、電話には出るという確信があった。

 画面を見る。時間を確認すると、どうやら放火が起きる直前に逸美ちゃんに時間を聞いてから、随分と長いこと打ちひしがれていたようだ。逸美ちゃんがそばにいなかったら、何時間でもそうしていたかもしれないけれど。

 気を締め直して、電話を掛ける。

 発信ボタンを押し、ケータイを耳に当てる。

 ワンコール目。

 相手は、すぐに出た。

『もしもし――』

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