第六章6 『routeW 14』
帰路についた俺は、ひとりいろいろと考えながら歩いていた。
家に帰り夕飯を食べて終えてお風呂にでも入ろうとしていた俺に、花音が思い出したように言った。
「お兄ちゃん! そういえば、昼間お客さんが来てたんだよ」
「へえ」
「なんで興味なさげなのー? お兄ちゃんのお客さんだったんだよ?」
「俺の?」
「うん。郷ちゃん!」
花音は笑顔でそう言った。
年齢的に、花音は昔の郷ちゃんのことを覚えていないだろう。なのにもう郷ちゃんと呼んで仲良くなっているなんて、さすがは俺の妹だ。というか、俺のお父さんの娘だ。うちの父は誰とでもすぐに仲良くなれる人で、花音はその血を色濃く受け継いだのだろう。まったくもって感心する。
いや、それ以上に俺は気になって聞いた。
「それで、郷ちゃんはなんで来たの?」
「お兄ちゃんとおしゃべりしに来たんだって。あと、お母さんに挨拶もしたかったって」
「ふーん」
それだけか。確か郷ちゃんは今日も部活があったはずなのに、それほどしゃべりたいことがあったのだろうか。連絡があれば家に帰っていたのに。とはいえ、わざわざ来てもらったのに悪いことをしたな。明日、郷ちゃんとはちゃんと話そう。
「サンキュー、花音」
「いいよ、別に。あたしも郷ちゃんとちょっとしゃべって楽しかったし」
「そうか」
と、それだけ言って、俺はお風呂に入った。