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第五章5 『routeW 8』
また明日、と俺が挨拶を返す前に、凪は角を曲がって姿を消した。
本当に、まったく困ったやつだ。
凪の言う愚者の話はどういう意味だったのだろう。
螺旋のような旅という言葉も、少し引っかかっていた。
けれど、またいろいろ考え始めて、逸美ちゃんから聞いた収束理論を思い出した。そうだ、考え過ぎても仕方ない。
どうせ世界がただひとつの場所へ収束するのなら、俺の行動次第でどうこう変わることなどないはずなのだ。
「でも――もし、ひとつの選択によって未来が変わって、収束点が変わる場所がどこかにあったとしたら……」
いや、それを知るのは俺じゃない。俺は自分がすべきことをやりさえすればいい。
帰り道を、ひとりポケットに手を入れながら歩く。
勝負は明後日だ。