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天使よ俺を巻き込むなっ!  作者: 小麦
脱出ゲームwithマウンテンパーク
25/26

ステージ1 アナグラム

「着いたな山すそエリア」

「着いたね……っていうか、これ本当に山すそじゃないの?」

 ただ山の形を模しているのかと思ったら、どうやら本当に山のようだ。あの天使サリエルは本当に何を考えているのかさっぱり読めない。とりあえずこの山の頂上を目指してゲームクリアを目指していけばいいらしい。

「にしても、この山すそっぽいところにこの真新しい派手な建物は不釣り合いね……」

「そこはたぶん突っ込んじゃいけないと思う」

 ツッコミどころ満載のこのテーマパークに今更疑問を抱くのも野暮というものだ。何より、この空間そのものが天使サリエルが人間界のテーマパークをそれっぽく作っただけの場所にしか見えない。

「とりあえず入ってみようぜ。判断するのはそれからだ」

「そだねー」

「流行語はいいから」

 軽口を叩きながらドアを軽く押し、中に足を踏み入れる。

「よーうこそいらっしゃいました!」

「うわあびっくりした!」

 目の前に突然現れたのはニャクシー。このマウンテンパークのマスコットキャラクターである。

「……お前、いきなり現れるの何とかならないわけ?」

「それがこのニャクシーの特徴故、仕方のないことにございます」

「そんな特徴いらんわ!」

 そんなことを言い始めても仕方ない。とにかくこいつが出てきたからには何かしらの説明があってしかるべきだ。

「お前が出てきたってことは、ここでゲームが行われるってことでいいんだな?」

「もちろんでございます。ここで行われるゲームは、言葉の並べ替えゲームでございます。アナグラム、とも言われるものでございますね」

「アナグラム……」

 アナグラムそのものはそこまで難しくない。ただ文字を並べ替えるだけの単純なゲームだから、法則さえ分かってしまえば誰にでも解けるものだ。問題は、なぜこのゲーム内でアナグラムを選んだのか。そこに限る。

「そんなに気負わずとも、このゲームの難易度はレベル1。5段階あるうちの一番簡単なゲームですから」

「レベル1か……」

 難易度の調整のために選ばれた線もあるな、と俺は冷静に判断する。

「分かった。とりあえず問題を出してくれ」

「承知いたしました。では……」


さらさら食える雪が見える

上手い炙りかつお中身見た総理が血


「このアナグラムからある規則性のある言葉を除くと何が出てくるのか、よくお考え下さいませ」

「……いや何だこれ?」

 文章に繋がりはない。アナグラムなのは見れば分かる文章だし、問題に偽りなしだが……。何を表しているかと聞かれるとまるで分からない。

「とにかくひらがなにしてみる? 並び替えって分かってるんだからまずは変換してみるのがいいと思う」

「それもそうだな」

 俺は咲良の案に乗り、そのまま文章をひらがなに変えてみることにした。


さらさらくえるゆきがみえる

うまいあぶりかつおなかみみたそうりがち


「おい何だこれ」

「私に聞かれても……」

 とはいえ、変なことはしないのであればひらがなに変換するこの考えは当たっているはず。

「でも、この問題がレベル1ってことはたぶん何かとっかかりがあるんだろうな。でなきゃこれを簡単だなんて言えるはずがないだろうし」

「そうだろうね。例えば何かの名前とか……あっ」

「……何か分かったのか?」

 期待の眼差しで咲良を見る俺。

「いや、買い物の途中だったけどどうしようかなって」

「今思い出す必要あるかそれ!?」

 相変わらずマイペースな彼女、咲良有紀である。マイペースと言えばあの天使たちもだったな、と渋い顔をした俺だったが、そのおかげであることに気付く。

「……なあ、そういえばこの文章なんだけど、ガブリエルの名前がないか?」

「さっきラミエルさんと一緒に倒れてた天使の名前だっけ?」

 俺は頷く。そういえば咲良はまだ面識がないんだった。

「ああ。でも、俺この問題が難易度レベル1の理由が分かったような気がする」

「私も。それじゃ、ガブリエルさんの名前消してみよっか」


さらさらくえるゆきみ

うまいあかつおなかみみたそうりがち


「ラミエルさんの名前もあるね」

「消してみるか」


さらさくゆき

うまいあかつおなかみみたそうりがち


「何か文字が結構残ったな」

「残りは7文字くらいを見た方がいいかもね。でも、天使にそんなに長い名前はいなかったはず」

「だなあ……」

 そもそもエルとつく文字がもうない時点で天使の線は薄い。ということは他の線を探すべきだが……。俺はうーん、と文章を読み進め、あることに気付く。

「なあ、これお前の名前もあるんじゃないか? 咲良有紀」

「うっそお」

「ほら、この部分だよ」

 俺は最初の文章と最後の文章の序盤を指さす。

「ホントだ」

 なぜ咲良の名前まであるのか分からないが、見つけてしまったものは省いてしまうべきだろう。するとこうなった。


さまいあかつおなかみみたそうりがち


「ねえ、操の名前もあるわよこれ」

「まさかあ。そんなわけ……あったわ」

 よく確認してみれば確かにあった。とりあえず除外してみる。


いなかみたそうりがち


「減ったね。あと10文字か」

「……なあ、今気づいたんだけど、これあいつの名前もあるんじゃないか?」

「あいつ?」

咲良は一瞬怪訝な顔をする。

「成田だよ成田。何であいつの名前まであるんだ?」

「……ああ、ホントだ。あいつの名前ってそう言えば壮一だったわね」

 咲良も嫌そうな顔をする。成田壮一という男がなぜここまで嫌われているのかと言えば、典型的な利己主義の男である上に、人を見て態度をころころ変える男だからである。この説明が一番正しいし、そもそも俺がラミエルと出会うことになったのはこいつのせいだ。

「で、それを除くと……」


かみが


「これ……また並び替えるんだよね?」

「ああ。かがみ、だよな?」

 そう呟いた直後、ニャクシーがニィッと笑った……ように見えた。

「正解、でございます」

「……?」

 そしてそのニャクシーの一瞬の気配を、俺はなぜだかどこかで感じたような気がした。

「どうされましたか?」

「い、いや、何でもない……」

 まさか知り合いに似た空気を感じたとは口が裂けても言えなかった。

「天使操様、咲良有紀様、お2人ともゲームクリアでございます。では次はふもとエリア、鏡のフロアでお待ちしております……」

 そう聞こえた頃にはニャクシーの姿はすでに消えていた。

「やっぱり不気味ねあいつ」

「だな……」

 俺たち2人は顔を見合わせてため息をついた。

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