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天使よ俺を巻き込むなっ!  作者: 小麦
水の天使ガブリエル
10/26

天使の任務(ラミエルズ・ミッション)

「……ん?」

 ここは……自分の部屋? あれ、俺死んだはずじゃなかったっけ? 何で自分の部屋にいるんだ? 確かガブリエルって天使と戦ってたんじゃなかったっけか? 気のせいか?

「おかえりなさい操様」

「……ラミエル?」

「はい」

 ラミエルが目の前にいた。まだ2日目だが、いつもの光景だ。違うのは、彼女の服がびしょ濡れになっていたことだった。

「よく分からないけど……もしかして、お前が助けてくれたのか?」

 俺は意識を失う寸前に彼女の声らしきものが聞こえたことを思い出し、そう聞いてみる。

「……まあ、そういうことになりますね」

 どうやら助けてくれたのはラミエルで間違いないらしい。……ん? だとしたらまずいんじゃ。俺は最後に聞こえた彼女の発言内容を思い出し、慌てて自分の体をまさぐり始めた。

「心配しなくても雷の烙印(パルスタンプ)は押してませんよ。不意打ちで押すのは嫌いですから」

 そこまで言った彼女は、俺の目の前に正座した。

「にしても、あそこまで危険な目に遭ったのによく生きてましたね。正直びっくりです」

「まさかお前、俺のこと見てたのか?」

 俺はジト目で見る。だったらさっさと助けてくれればよかったのに。

「あなたが水の弾に襲われてる辺りからですけどね。あなたが必死に避けてるのを見てるのはなかなか面白かったですよ?」

「もっと早く助けようか!? にしても、何でお前俺のこと助けられたんだ?」

 なぜラミエルは俺のことに気付けたのだろう。今更ながらに気になったのだ。

「あら、気付いてなかったんですか。ガブリエルが言ってたでしょう? あの空間は天使にしか通り抜けを許されていない空間だと」

「あっ……」

 そこで俺は気付く。ラミエルが雷の力を持つ天使であることに。

「そういうことです。天使である私はあの空間への干渉を許されていた。私があなたを仲間だと認識したからこそ、あなたを助けることができたんです。逆に、あの空間をガブリエルが作り出さなかったとしたら、私もあなたに気付くことはできなかったでしょうね」

 それに、と彼女は付け加える。

「こちらも任務中だったので。ただ、死ななかったとはいえ、あなたを死にかけるような目に合わせてしまったことは申し訳ないと思ってます」

「いや、そこまでしなくていいって」

 土下座しかけたラミエルを俺は慌てて制止する。

「でも、任務中ってことは、やっぱり何かあるんだな。昨日話した以外にも、俺にまだ話してない何かが」

「はい。まあ、そういうことになります」

 そこまで言ったラミエルは、しかし俺の目をじっと見つめてくる。

「でもそうですね……。あなたがここまで関わってしまった以上、私も全てを話してしまった方がいいのかもしれません。本当はあなたにも何も話さない予定だったのですが、今日のことがあった以上、誤魔化し通すにも限界があるでしょう。もし聞く覚悟があるなら、その時は私の協力者になってもらいますけど、それで良ければお話しします」

「……するとどうなるんだ?」

「操様の日常生活は半分、いや、七割五分くらい消え去りますね。ラノベを読む時間も減りますし、ギャルゲーをする時間もほぼ無くなるでしょう。聞くか聞かないかはあなたに任せます」

 ラミエルは少し考え、そう答えを出した。

「……ちょっとだけ考えさせてもらっていいか?」

 そんなに消えるとなると、多少の覚悟は必要だ。つまり俺はラノベ系主人公になろうとしているのだろう。実際読むのとなるのとではだいぶ違う気もするが。

「構いません。操様が私のことを手伝ってくれるというなら、これまでの非礼も改めますし、真のパートナーとしてあなたに寄り添うつもりです」

「そんなに重いのかこの決断!?」

「はい。何せ、私が人間界に降りてきた本当の理由と関係していることですから」

 ラミエルは笑顔を見せるが、その笑顔はどこか寂しそうだった。その顔を見た俺は覚悟を決める。

「分かった。お前に協力する。だから、すべてを教えてくれないか?」

「考えるといった割には随分とお早い返答ですね?」

「……ま、元々成田からお前のこと何とかしてくれって頼まれてたしな」

 それに、こいつのおかげで退屈していた日常が少なくともほんの少しだけ楽しくなってきたことは事実なのだ。乗り掛かった舟だし、最後まで助けてやるくらい、長い人生を考えれば小さな寄り道だろう。

「ふふ、ありがとうございます。では、これからあなたと私は公私ともにパートナーです。逃げないでくださいね?」

 半分脅しが混ざったような口調で彼女は俺に約束を結ばせた。

「……今日みたいなことが頻繁に続くようなら少し考えるけどな。で、お前は本当のところ何でこっちの世界に降りてきたんだ?」

 簡単に返事したことを後悔しながら、俺はラミエルに尋ねる。

「そうですね。まずはそこから話しましょうか。操様は天界で力を持っている4人の天使の存在はご存知ですか?」

「えっと、ミカエル・ウリエル・ガブリエル・ラファエルだっけ?」

 そこはちょうど今日調べたところだ。

「そうです。その4人の天使が基本的に天界を治めているのです。では、もしこの4人が一気に天界からいなくなったらどうなります? 日本で例えるなら大臣が急にいなくなるようなものですね」

「……まあ、混乱が起こるだろうな?」

 いまいちピンとは来ていないが、おそらく混乱が起こるだろう。

「ざっくりした答えですけど、そういうことです。つまり、今の天界は統治者不在の無法地帯になっているわけですね。ここまで聞けば、私が人間界に降りてきた理由も何となく察しはつくんじゃないですか?」

「そいつらを連れ戻すため、ってことか?」

 ラミエルは頷く。

「今現在4人は天界では行方不明の扱いになっています。全員が旅行中の事故で天界に戻れなくなったということになってはいますが、実際のところはただの家出ですね。何があったのかは分かりませんが、旅行中に天界に戻りたくなくなった、あるいは戻れない何らかの事情ができたのではないか、と睨んでいます」

「なるほど。で、さすがに誰も1月も帰ってこないのはおかしいと踏んだお前が探しに来たわけか」

「そういうことです。私を含む3人の天使が現在捜索中です。しかし、他の天使とも連絡がつかない状態になっているので、実際今天使を捜索できているのは私一人だけという形になっています」

 つまり、現状他の天使は全員行方不明という状態らしい。無能にも程があるんじゃなかろうか。

「何かお前ら単体の能力って思ったより低いのな? 持ってる力は強いのかもしれないけど」

「そこについては悔しいですけど否定できないですね」

 ラミエルも渋い顔をする。

「とりあえずこれが現在の天界の状況と私が人間界に降りてきた理由です。ここまでは理解してもらえたと思うんですが」

「ああ、何となくは分かった」

 俺が頷いたのを確認すると、ラミエルはむしろここからが大切だ、と言わんばかりに俺の目の前に顔を近づけた。

「では、今の話を踏まえた上で1つお願いです。操様、私と一緒に他の天使を探してくださいませんか?」

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