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『声優志望』について

 声優志望、声優になりたいけどどうすればいいのか、といった言葉を最近はよく見る。その際の反応のパターンは大体、二つに別れる。一つは「現実を見ろ! 食えるのはほんの一部だ!」というもの、もう一つは「頑張って! 夢を諦めないで!」というもの。だが、個人的にはどちらにも不満を持っている。


 個人的に不満を感じるのは何故かと言えば、声優というのは広い意味で役者であって、そこで実際に芝居、演技に対するノウハウとか、どのように芝居をすればいいかという具体的な意見がほとんど見当たらない点にある。いろいろな数字を上げて、「食える役者はこれぐらいしかいないんだぞ!」と言っても、では、「食える役者」とは何で食っていけているのか、どのようなノウハウを持っているのか、プロとして長年やれる人の芝居は、他の人の芝居とはどう違うのか、という具体的な問題にはまず踏み込まない。


 もっとも、声優のような業界では、使われる側なので、色々難しいだろうとは思う。いわゆる「枕営業」のような事があっても、そう驚かない。しかしそんな「営業」で首の皮を繋いでいっても、すぐにプツンと切れてしまうだろう。問題は、流動していく社会の中で、自分自身に自信を持てるスキルを持てるかという事にある。そしてそのスキルは(できれば)人間的なものであるべきだろう。単なる知識の寄せ集めとか、何か機械的な運動を人並み以上にやれるという事ではなく、その人の個性と表現が一致したスキルが望ましい。


 自分の記憶では、初期の声優は元々、役者の側から流れてきた人達だったはずだ。彼らは役者としては食えないから、声優に流れてきたのかもしれない。「声優になりたい!」という夢は結構な事かもしれないが、世の中が求めるものと、自分が社会に提供できる能力との調整点というものを広い意味で考えたほうが良いように思う。例えば、芝居が好きで、演じる事に自信があるというのであれば、声優だけが仕事ではないはずだ。そこから舞台役者に行ったり、テレビドラマに役者として出たり、色々な可能性が考えられる。自分で脚本を書いて演じるという可能性もある。問題は「プロの声優になる」事ではなく、広い意味で何かを演じる事で、人々に価値を提供するという事にある。では、そのような能力を自分は持っているかと自問するのが、役者ー声優を目指すという点ではもっともオーソドックスではないか。


 「プロの声優になる!」と考えるとかなり門戸は狭くなるし、色々煩雑な問題は起こってくるだろうが、どうしても芝居が好きである、何かを演じる事によって社会的価値を生み出したい、というのであれば、例えアニメ業界が斜陽になり、声優が「オワコン」になっても生きる道はあるように思う。「何かを演じる事によって人々に価値を提供する」という事柄はそれこそ、能や狂言の時代から今まで連続的にある。声優を目指すというのであれば、そういう観点に立って自分が何ができるのか、どんな芝居ができるのか、そう考えてみても良いと思う。


 もっとも、このような考え方は時代遅れなものなのだろうとは自分でもよく分かっている。現在は数量化されたモデルの中でゼロサムゲームをするのが基本になってきている。何かを生み出すよりは、何かを取り合う事が主流となっている。


 そういう中でも、「声優になりたい!」というのであれば、自分の核となる芝居そのものがどのような社会的価値があるのか、そもそも、演じるとはどういう事か、人はどんな演技に心を惹かれるのか、そうした事を普通の観点から考え直すのもそう悪くないのではないかと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言]  昔、知り合いが声優志望でそうした学校にまでいったが、結局は、素人舞台の役者という感じで終わっていた。  とはいえ、舞台上の彼が輝いていたのは確かだった。  彼の場合、純粋に憧れだけで門を…
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