抱っこ
「森の奥に酒呑童子が待ってるよ、行こう、ママ」
「うん」
「まだ歩くんかえ?」
「お前は歩いてないだろ」
二人のやり取りをじいっと大きな瞳を見開き見つめる九ちゃんが頬を膨らませ、高月渚に甘えるように言った。
「ママ、抱っこ」
「いいよー、おいで」
高月渚は両手を広げ、「よっ」と言い、九ちゃんを持ち上げた。
九ちゃんは「わーい」と言い高月渚の胸元にぽすっと顔を埋めた。
「おい、高月渚が重いだろう、俺が抱っこしてやる」
「陰陽師おっぱいないから嫌」
「いいよー、高遠君。九ちゃんそんなに重くないし」
「うん、九ちゃん重くないよ」
「我も渚の方がええかの、九とやら代われ」
「嫌だよ、九ちゃんのママだもん」
「ママじゃない」
「ママだもん、もうすぐ酒呑童子と会ったら、本当のママになってもらうもん」
「ならない」
「なるもん、陰陽師、邪魔しようと思ってるだろうけど、そうはいかないからね」
「本当に重くないか。高月渚」
「うん、平気、九ちゃんずっと真っすぐでいいの?」
「うん、いいよー」
「すごいね、何かゼルダの伝説とかファイナルファンタジーに出てきそう」
「なあに、それ?」
「ゲームだよ、そっかー、九ちゃんやったことないよね。今度やろっか?」
「うん。九ちゃんやりたい」
「高月渚」
「ごめんなさい、遊ぶのもダメなの?」
「当たり前だろ、今日は縁を切りに来たんだぞ」
「そうなの?」
「何だと思ってたんだ」
「縁なんか切らないもん。結婚するんだから」
「しないと何回言ったらわかるんだ。しない」
「する」
「しない、いい加減高月渚から降りろ」
「いやー」




