特に何もない
白鼠がやってきたのは、小学校四年生の夏休みの朝だった。
彼女の住んでいる町内ではラジオ体操は七月中しか行われず、彼女は毎朝母親が起こさなければ、お昼まで寝ていることもしばしばだった。
母親はパートだったので、下の姉に起こされた。
起きた時左胸に幽かだが違和感を感じた。
彼女は姉が部屋から出ていくとネグリジェの中を覗き込んだ。
左胸の乳輪を覆い隠すかのようにして白い鼠が彼女の乳首にくっついていた。
彼女はすぐにこれがシロと同様の物であると確信した。
彼女は慌てず、騒がず着替えた。
白鼠はすっぽりと彼女のスポブラに収まっていた。
下に降りると、姉がちょうどお昼を食べようとしていたらしく、「寝起きだけど、カレーでいいでしょ?」と聞いてきたので高月渚は「うん」と返事をし、姉と一緒にカレーを食べ、部屋へ戻った。
Tシャツの中をのぞき込むと、スポブラの中で何の苦もないかのように眠っていたので、できるだけ優しく右手で首根っこを摑まえ机の上に乗せてみた。
白鼠からは何の表情も読み取れなかったが、彼女は対話を試みた。
「ええと、君は、どっから来たの?」彼女を見上げる白鼠は微動だにせず突っ立っていた。
彼女は諦め悪く話しかけた。
「鼠さん、で、いいのかな?」「何か食べる?」「何か飲む?」「おっぱいでないからね」
彼女が何を言っても白鼠は何の反応も示さなかったが、さっさと下着の中には戻りたいらしく、机に置かれた彼女の左腕を伝って、素早く服の中に入っていき、もう動かんぞとばかりに乳房に張り付いたので、渚はもう面倒になって、ベッドに横になり、姉に借りた野球漫画の続きに取り掛かった。
シロは何にも興味はなさそうだった。






