言質
「芙蓉ちゃん、髪切ったんだね?」
「髪は伸縮自在じゃ。気にせんでええ」
「そうなんだ、歩くの?」
「たまにはの」
芙蓉は高遠忍から降り、三人は高月渚を真ん中にして、朝の誰もいない道を歩いた。
高月渚は高遠忍が黒いリュックサックを背負っていることに気づいた。
「高遠君、それ何が入ってるの?」
「酒呑童子への土産だ」
「そうなんだ、ごめんね」
「あんたが謝る必要はない、元はといえば、俺の責任だ」
「高遠君の?何で?」
「俺を追いかけて山に入ったんだろう?だったら俺の責任だ。あんたを無事に帰せなかった」
「私、どこも怪我したりしなかったよ」
「切り落としに目を付けられ、腹に爆弾を仕掛けられた。どこが無事だ」
「でも、痛かったりしないし、お腹誰にも見えてないみたいだし」
「高月渚」
「何?」
「俺は何があってもあんたを酒呑童子とは結婚させない。全力で邪魔をするから安心してほしい」
「うん、別に何も心配してないよ、大丈夫だって信じてるし」
「だが、あんたも気を付けてほしい。迂闊に肯定しないこと。言質を取られないようにしてくれ。なんなら黙秘しろ。妖怪は人間と違って、根は単純で、わかりやすい。あと基本的に嘘はつかない。約束は守ってくれる。何でもいいから、そうだな。答えは先延ばしにした方がいい。奴らは人間と違って、限られた時間を生きているんじゃないから、気は長い」
「そうなの?」
「まあの。まあ、そんなに心配せんでええ。いざとなったら我が少し暴れてやろ」
「芙蓉ちゃんが?」
「まあ、ほどほどにな」
高月渚は暴れる芙蓉を想像してみた。
自分を縛ったみたいに金色の髪で九ちゃんをつるし上げる姿が浮かび、九ちゃんは芙蓉より少し小さいので彼女は哀れに思い「九ちゃん小っちゃいんだし、あんまり酷いことしないでね」と言った。
「それはあちら次第じゃな」
芙蓉はボールはあちらが投げる。
我は打ち返すだけよという笑みを見せた。
だがそれは来た球は全てホームランにできるという自信に満ち溢れたスラッガーの顔だった。




