彼女には何かがある
高月渚は俯き、途方に暮れた。
どうしよう。
お家に帰って着替えてきた方がいいのかな。
でも、どんな格好で行けばいいんだろう?
子供の時どんな格好で行ったっけ?
「それはなんじゃ?」
悩む彼女に高い所から声がした。
高月渚が顔を上げると高遠忍の背中に乗った芙蓉が高遠忍の肩越しに小さな顔を見せた。ツインテールにした金色の髪が七夕飾りのように揺れている。
「それって?」
「その左手に持った袋じゃ」
「あー、これ?お土産だよ、酒呑童子さんと九ちゃんへの」
「そうか、見上げた心意気よな」
「そう?」
「ああ、その心がけ。主はやはり見どころがあるわ」
「そうかな?」
「忍さっさと行くぞ」
「ああ、そうだな」
「ごめんね、高遠君」
「何がだ?」
「ううん、何か、何にも考えずにこんなかっこで来ちゃって」
「嫌」
「別にいいであろ?転ばないようにお前がちゃんとしてやったらいいだけの話じゃ」
「ああ、そうだな、行こう」
「うん」
彼女は弾んだ声で、楽しそうに笑った。
この瞬間を切り取ってずっと閉まっておきたくなる、そんな笑顔だった。
高遠忍は不思議そうに隣を歩く彼女をちらりと見た。
彼女は一体何なんだろうと思った。
彼女には何かがある。だがその何かが高遠忍にはまるで分らなかった。
だが確実に彼女に何かがある、それだけはわかった。
彼女は今まで高遠忍が会った誰とも違っていた。
だが一体どこが違うのかと尋ねられたら高遠忍は「わからない」と返答するしかなかった。
高遠忍にもわからないのだ。
でも違う。絶対に違う。
それだけはわかる。
彼女は違う。
彼女と同じ人間などいない。
彼女だけは違うのだ。




