翌朝
翌朝五時に起きた高月渚はフルーツグラノーラで朝食を済ませ、五時半にこっそり家を出た。
母親には昨日朝早くに友達と出かけると言った。
まだ友達ではないかもしれないけれど、少なくとも高遠忍はクラスメイトなわけだし、嘘をついたわけじゃない。
今日は皆仕事がお休みなので、起こしちゃ悪いので、できるだけ物音を立てたくはなかった。
決して疚しい気持ちがあるわけじゃない。
高遠忍の家には五時五十五分に着いた。丁度五分前だ。
玄関のピンポンを押すとドアがガラガラと音を立て、中からいつもの黒い袴姿の高遠忍が現れた。
「おはよう、高遠君」
「おはよう」
ドアの外に出てきた高遠忍は高月渚に怪訝そうな顔で言った。
「その恰好で行くのか?」
今日の高月渚の恰好は白いノースリーブのワンピースに少し踵の高いサンダルに黒いポシェットを肩から斜めにかけ、長い黒髪は白いシュシュでポニーテールにしている。
「うん、可笑しいかな?」
「嫌、可笑しくはないが、山だぞ」
「山?」
「ああ、佐和山を登っていく、その恰好で歩けるか?」
「あー、歩けるんじゃないかなあ、多分」
「その白い服、汚れないか?」
「転んだりしなかったら大丈夫じゃないかなあ」
「虫とかいるぞ」
「私あんまり噛まれない方だから大丈夫だと思う」
「俺の服じゃ大きすぎるし、芙蓉の服じゃ小さすぎるな」
「いいよー、大丈夫だよー」
「でも歩きにくくないか?その靴も」
「そうかなー?」
高月渚はワンピースの胸元と足元のサンダルを見てた。
そしてこれは山に行く恰好ではないと流石に気づいた。
この間は夢中で気づかなかったが、今思い出してみると、道は細く、摑まるところもなく、ずるずると滑り落ちそうになった。




