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遮断機
「そうなのか?」
先ほどまで芙蓉の部屋で彼女は項垂れて弱弱しく頼りなげで所在なさそうに見えたのだが。
「うん。高遠君がいたら、大丈夫な気がする、何て言うか、きっと何とかしてくれるって」
「そうか」
「うん、ごめんね。よろしくお願いします」
「ああ」
丁度踏切が見え、彼女は踏切を超えないので、ここで別れることとし、彼は「じゃあ、俺はこっちだから」と言った。
「うん、じゃあ、また明日。修行頑張って」
「ああ」
彼女が手を振った。彼も手を振り別れた。
一人で少し歩き、踏切を渡ろうとした彼の羽織を幽かな力が引っ張った。
高遠忍が振り返ろうとすると遮断機が降りた。
「あのね、高遠君」
高月渚は彼の羽織を掴んだまま、俯いている。
言わなきゃ。勇気を出さなきゃ。
彼女を鼓舞し、お味方ですぞとばかりに電車が来た。
「あのね、ケータイの電話番号教えてほしいの、後メールアドレスも」
彼女はええいと大きな声で叫んだ。すぐ傍にいるのに。
踏切の向こうの彼に呼びかけるように。
電車が通過し、遮断機が上がると、高遠忍は振り返った。
彼女は言ってすっきりはしたがのだが、顔を見るとやはり恥ずかしく、目を合わせることができずに、肩にかけた鞄を両手で握りしめた。




