お料理
二人は佐和山への道を並んで歩いていた。
彼は白いフード付きの羽織に黒い袴姿に黒いスニーカーを履くというかなり目立つ格好をしていた。
剣道部だと思えば、そんなに不思議な格好でもないのかもしれなかったが、右手に持った金色の杖は隠しようもないので、高月渚は同級生の少年と歩いてるというより、異世界からこちらの世界に紛れ込んでしまった賢者と歩いているようだと思っていた。
だが彼女は躊躇わず話しかけた。
「高遠君、オランジーナってどこで買うの?」
「平和堂だ。駅前の」
「高遠君もお買い物行くんだね?」
「ああ、行かないと何も食べれないからな」
「ひょっとして、高遠君がお料理してるの?」
「ああ、芙蓉はできないからな」
「えっとー、同居人って芙蓉ちゃんなの?」
「ああ」
「そうなんだ、ねえ、芙蓉ちゃんと二人で住んでるの?」
「ああ」
「そっかー、ええっと、じゃあ、あのお弁当高遠君が作ったの?」
「ああ」
「えー、凄いよ。高遠君お料理できるんだね」
「別に凄いことでもないだろ。やったら誰だってできる」
「そうかなー、私なんて何にもできないよ」
「母親がいるからだろ。別に気にすることはないんじゃないか?」
「そうかなー、できたほうがよくない?」
「別に、必要に迫られたらできるようになるから、いいんじゃないか」
「そうかな」
「ああ」
信号で立ち止まると、同じ学校の制服がちらほらと点在していたが、知っている顔は見当たらなかった。
「ねえ、高遠君。高遠君は、佐和山に何をしに行くの?」
「修行だ」




