誰にも見えない
次の日、幼稚園に行き、仲良くしている女の子のお友達にお手洗いに行きこっそり見せた。
「わー、キティーちゃんだー、かわいい」と素直に言われた。
今日のパンツはすましたキティーちゃんのドアップだったのだ。
幼稚園の先生にも見せてみたが、お友達同様キティーちゃんを褒めてくれただけで、白い蛇に驚いたりはしなかった。
京都に来たついでに立ち寄り泊まっていった祖父母にも見せてみた。
スカートを両手でたくし上げ無言でいる孫に祖母は「それ、なんかのモノマネ?流行ってるの?」と笑顔で聞いてきた。
祖父は「ごめんな、渚ちゃん。おじいちゃんお笑いとかわかんないなー」と言い京都駅で買ったと思われる赤福の包装紙をビリビリと破き「渚ちゃん、流行っててもお外でやっちゃいけないよ、さあ、食べよ、」と言ってくれた。
二人の呑気そうな笑顔を見て、渚は二人には見えていないのだとわかった。
「平等院綺麗だったよ、渚ちゃんも大きくなったら行っておいで」
「うん」
「宇治上神社にも行ったのよ、これ、渚ちゃんにあげるね。大吉だったから」そう言って祖母はピンク色の兎の置物とおみくじをくれた。
「もうお夕飯だから、一個にしときなさいよ」と母親に言われたので渚は赤福を一つだけ頬張った。
祖父が「上手に取れたね」と渚を褒めた。
祖父母は次の日石山寺と三井寺に行って、その次の日には岡山に帰っていった。夏休みに遊びに来た従妹にも見せてみたが結果は同じだった。
幼い彼女の傍に見える人はいなかった。