スカートの中
顔を洗い着替えを済ませ、録画しておいた仮面ライダーを見ていると、姉たちが起きてきた。
先ほどの要領でスカートの裾を上げると上の姉が「何でパンツ見せてんの?」と寝起き特有の不機嫌そうな声で言ってきた。
「お姉ちゃん、見えない?」
「パンツなら見えてるよ」
「違うよ、へびだよ」
「何の話?パンツの柄?」
残念ながらパンツは水玉だった。
「仮面ライダーの話?」
「ちがうよー、ほらー、へびがいるのー」
高月渚は直も食い下がってみたが通じなかった。
下の姉などは、相手にもしてくれなかった。
だからと言って二人の姉が少し年の離れた妹を可愛がっていなかったわけではなかったのだが、八歳以上の差というのはやはり同性であっても異質なものに見えるものなのだ。
ましてや姉たちには見えもしない蛇がいると言っているのだから。
高月渚は諦めもよく聞きわけもいい子供だったので、両親にも姉たちにも見えないことを理解し、スカートから両手を離し、ソファに戻りしょんぼりしながら仮面ライダーを見た。
夕方母親と近所の平和堂に行った。
母親は何かを察したのか、それとも偶然か「今日の夜は、渚の好きなものにしようね」と言ってくれたので「ハンバーグにチーズのっけて」と言った。
高月渚は蕩けたあっついチーズが大好きなのだ。
さらに図々しさを発揮した彼女はガシャポンもさせてもらった。
その夜デミグラスソースに蕩けるチーズが絡まった美味しいハンバーグを食べた彼女は奇妙な決意を固めた。
お父さんにもお母さんにもお姉ちゃんたちにも見えないが、世界は広い。
きっと自分以外にも見える人がいるはず、見える人をさがそう、と。