お手紙着いた
それは世界史の授業中だった。
高月渚の苦手科目は古文と英語である。
彼女は世界史と日本史は得意な方だった。
覚えるだけだからだ。
世界史資料集のヴェルサイユ宮殿の鏡の間の写真を見てあんまり住みたくないなあと彼女が思っていると、頭に何かが乗っかったのがわかった。
高遠忍の白兎だった。
白兎は彼女の机の上にぴょこんと下りると可愛らしい手で彼女に紙切れを渡した。
彼女は白兎から紙切れを受け取ると、二つに畳まれた白い紙を開いた。
「体に異常はないか?あるなら言ってくれ対処する」と癖のない綺麗な字で書かれていた。
彼女は高遠忍から何かアクションを起こしてくれるなど考えてもいなかったので、嬉しさの余り白い紙を見たまま固まってしまった。
白い頬が赤くなっているのが見なくてもわかった。
固まった彼女の黒い左の髪の束を白兎は引っ張った。
どうやら返事がいるらしい。
彼女は世界史のノートの一番最後のページを破き、「大丈夫だよ。昨日はありがとう」と書いた。
そして紙の余白が異常だということに気づき、他に何か書かなければと思い考えた。
「携帯の番号とメアド教えて」と書こうとしたが、こんなこと女子から聞いていいものかと我に返り考えた。
そもそも彼女は自分から携帯の番号を男子に聞いたことなどない。勿論メアドも。
それどころか彼女は女子にすら自分から聞いたことなどなかった。
彼女は友人関係と言うものを小学一年生からずっと一緒の田畑美澄に完全に取り仕切ってもらっているため、常に受け身で自分から積極的に動いたことなどなかった。
高遠忍が初めてだった。
高遠忍だけだった。
自分から狂おしいほど話したいと思ったのは。
白兎は待ちくたびれたので彼女の膝の上に移動しようとしたが白い蛇が出て来てけん制したので、仕方なく制服のシャツに窮屈に閉じ込められている彼女の胸にぴとっとくっついてみた。
高月渚は気にしなかったが、白鼠はボタンとボタンの隙間から顔だけを出し、新参者の白兎をにらみつけた。
彼女はこれ以上待たせても悪いと思ったので何も付け足さず紙を定規で半分に切り白兎に渡した。
白兎はぴょんとひとっ跳びで高遠忍のもとに帰り彼に彼女からの返事を渡した。




