やっと
高月渚は夜ご飯を食べ、お風呂から上がり、ベッドに寝転んだ。
ふわふわして夢を見ているような気分だった。
遂に高遠君と話してしまった。ようやく。やっと。高遠君と。やっと本当に出逢えた。
彼女は寝転びながら、自分の白い太腿を見た。
もう彼女が黒いタイツを履いて学校に行くことは当分はないのだろう。
明日からは普通の靴下だ。
彼女は寝転んだまま本棚に置かれたピンク色の兎を見つめた。
彼女の本棚には姉たちが「もう置くところがない」と言って持ち込んだ漫画がぎっしりと詰まっている。彼女はおもむろに立ち上がり、机の引き出しの中にある、神奈川に住んでいる母方の祖母に買ってもらったおもちゃの宝石箱を取り出し、中から、白い紙を取り出してみた。
待ち人来ますと書かれたおみくじだ。
「待ち人、来ます」
彼女は声に出していった。
明日額を買ってきて飾ろうかと思った。
高遠君に聞きたいことがいっぱいある気がした。
やっと話しかけられて、見えると言ってもらえたのに、もう次は何を話せばいいかと考えていた。
高遠君と、もっと話がしたい
思っていたよりも、ずっと、ずっと優しい声だった。
あの瞳を思い出すだけで。
ああ、眠ってしまうのがもったいない。
目が覚めてすべてが夢だったらどうしようと思う。
ならさっさと覚めてほしいし、覚めないでほしい。
明日教室で逢ったら高遠君におはようと言って、お礼を言おう。
ウサちゃんにも話しかけて、お馬さんにもお礼を言って。
もし夢だったとしたら、何度だって話しかけよう。
明日も明後日も。何度だって。
私は、高遠君に話しかける。




