運命めいた
高月渚はまた涙ぐんだ。黒い瞳が宝石のようにキラキラと光っている。
「・・・・・・・・・・・・・・何で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何でって、ずっと、言って欲しかったから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えるって」
高遠忍からしたら、見えることなど普通だった。
だが彼女には、普通のことではなかった。
たった一言。
自分以外の誰かに、たった一言が欲しかった。
それだけだった。
それだけで、彼を追いかけた。
やっと。やっと高遠君に話しかけられた。
想像していた最初ではなかったけれど、そういえば、高遠忍は不可効力ではあったにせよ、彼の方から高月渚の方へ舞い降りて来てくれた。
無口で運命めいた美少女ヒロインのように。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えるよ」
「うん」
「見える」
「うん」
「ちゃんといるよ」
「うん」
「ちゃんといる」
頂上からの眺めがこれほどに晴れやかに見えたことなど高遠忍には一度もなかった。
七月のまだ高い青い空。
二人は同じ景色を見ていた。同じ風に吹かれていた。
彼女のスカートの中には白い蛇。ブラジャーの中には白い鼠。
それを彼は知っている。彼だけは知っている。
平凡な市街地の景色を星空を眺めるように見ている美しい彼の瞳を、彼女は嬉しそうに見つめていた。
風が彼の髪を優しく撫で、彼女のスカートを揺らしていた。




