さすがに見せられない
高月渚は安易だが白鼠に「チュウちゃん」と名付け、シロと同様水を飲ませようとしたが、チュウちゃんも飲まなかった。
彼女は完全に冷静だった。
もう誰にも「見える?」と聞こうとは思わなかった。
もう人前で下着姿になる年は家族であれ、超えてしまったのだ。
シロもチュウちゃんも彼女に何かを要求することはなく、ただ彼女の太腿と左胸に間借りしているだけである。
これがアニメや漫画なら、この二匹が不思議な世界の案内人となって、彼女を日常ではない、非日常な世界に誘い、そこで考えもしなかった戦いや、出会いや別れが待ち受けているのだろうが、そんな展開は結局なかった。
彼女はこの国宝彦根城以外何もない、徳川四天王井伊直政を初代藩主に譜代大名だった井伊家の居城でありながら関ケ原の敗軍の将石田三成押しの穏やかな城下町で特に何もないまま高校生になっていった。
彼女の身長は同い年の友人の中では一番小さかったが、胸だけは他の追随を許さぬ大きさに成長していった。
二匹?は基本おとなしく彼女の傍で、緩やかな時を、嵐の前の静けさに微睡んでいるようだった。
彼女はもはや誰にも見えなくていいと思っていた。
ふと大人になったら見えなくなるのではと思ったりもしたが、それは寂しく考えるのをやめた。
結婚して子供が生まれて、生まれた子供に見えたりしたら素敵だなと思ったが、まだうんと先のことで想像もつかなかった。
受験を終え、中学を卒業し、十六歳になり、そして彼女は出会ってしまった。
幼い頃に探した。
見える人に。




