幸せ
「俺さ……えーっと……」
「えーっと?」
「待ってね、なんて言えばいいのかわからないや。普通に言えばいいんだろうけども」
「早く言っちゃえ」
気になるので軽く唆してみました。
「あのー……」
目が泳いでいます。何かを探してる証拠です。
「真穂が好きに……」
「ん?」
斜め下に目線をやりながら頭を掻いています。
今言ったのでしょうか。あまり理解ができませんでした。
「だからその……」
「うん」
「真穂の事を好きになっちゃった……いや、前から好きだった」
「……え?」
私は思わず目を見開いてしまいました。
真穂の事が好きとは果たして本当ですか。ましてや好きになられてるという噂は本当だったということに……。
「う、嘘だ……」
「いや、嘘なんて言わないよ!? どうして今嘘をつかないといけないの」
「だって、大成には好きな人がいるって……あっ、それが噂ではうちだってのも流れてたけど現実的に無理だし、だけどうちはその噂を聞いて意識してたというか……あれ?」
途中から私は何を言ってるのか自分でもわからなくなってしまいました。
「えっと、言いたいのは……」
「意識してくれてたの?」
「へ? あ、いや、違……くないけど……」
「じゃあ、俺のこと……どう思ってる?」
「えっと……大成は大成で……」
「質問を変えようかな。うーんと……好き? 嫌い? それとも普通?」
普通という選択肢まであるとは。しかし、嫌いでも普通でもないんです。大成には大変興味があるのですがこれは……。
私は迷います。嫌いでも普通でもないなら好きしか残ってません。その好きという感情があまりわからないのですが、告白を断るのがとても勿体なく感じています。
「うちは……大成のことす、好き…………」
勝手に口が開きました。こんなこと言うつもりはなかった気がするのですが……。
「ほ、本当!?」
「う、うん……」
私は今顔が真っ赤でしょう。顔をあげられません。
「やったぁー!」
大成は歓喜のあまり私に抱きついてきました。大成がとても暖かく感じます。
「俺すごい緊張したぁ……」
大成は私にうずくまって言いました。
よく頑張ったね、と心の中で呟いて大成の頭を撫でました。
「これからよろしくね、真穂」
「うんっ」
思い返してみれば、所々大成に対して恋愛感情が芽生えていく瞬間というものがあった気がします。1番大きいのはおんぶしてくれた時でしょうか。あの時から大成を少しずつ意識し始め、噂を聞いて更に大成を見るようになり……。しょっちゅう大成と出会う時は、目線をできるでけ大成に向けて気づいてもらおうとしていたりもしてたかもしれません。
男の子相手に飽きずに話続けられているのも大成くらいでしょう。
恋人同士になった今、手を繋いで歩こうと誘ってくれたので繋ぎました。このままの通学路を歩けばすぐに家に着いてしまうので、少し遠回りをして帰ることにしました。
「おっはー」
「おはよう音葉。聞いてよ、ビッグニュース!」
次の日の朝教室へ入ると、音葉が挨拶してきたので返しました。そして、昨日の出来事を話しました。
「なぬ!?」
「えへへ」
「やっぱり付き合ったか~」
「うん。あり得ないなんて思ってたけど」
大成にはもはや完敗です。
「お二方」
後ろから声がしたので向いて見れば叶魅がいました。
「私より先に音葉に言うなんて」
「叶魅がいなかったから……」
「待っててくれてもよかったのにねぇ~。ま、それは置いといて、おめでとう! ようやく彼氏できたね!」
「こ、声がでかい……」
「あっ」
叶魅は口を押さえますが、もう遅いです。
今の叶魅の発言でクラスの大半がこちらへ視線を向けてきました。誰? なんて聞いてくるのがほとんどですが、あえて言いません。なにかと面倒でしょうから。
「言うなら……同じ学年かな」
皆一斉に誰だろう、と考察を始めました。朝のSHRが始まるというのにざわめきは収まりそうにないです。
すると、携帯のラインの通知音が鳴りました。見てみればそこには、
[今日1日授業頑張ろう!!]
と、大成からメッセージが来ました。
この些細なメッセージがとても嬉しくて、思わずにやけちゃいます。返信をして、私はやる気が溢れてきました。
「誰からー?」
「勿論大成だよ」
「あ、あれか。愛してるってか」
「違うよ~。それより、早く席に着かないと」
「んだな」
私も音葉も叶魅も席に着くと、タイミングよく先生が入ってきました。
これからどんな日々が待っているのか、とても楽しみです。
終わりました。実際その後も考えてはいるのですが、そんなに見てられないと思うのでこのくらいで。
読んでいただいた方たちには感謝してます。ありがとうございます^^