気になる
「「あっ」」
2人同時に声が被りました。私と大成です。
何かと会うと反応してしまいます。相手もそうです。関係ないような人ならばスルーするのがいつもの私なのですが、大成は別のようです。何かを見つけてしまったような感覚です。嫌な意味ではありません。
「おはよう……」
「おはよう」
嘘だとしても、大成は私の事を好きなんだと意識してしまいます。そのせいか、顔がまともに見れません。
「最近よく会うね~。びっくりだよ」
「……う、うん」
え、今の間はなんですか。
「どうかしたの?」
「へ? あ、いや、やっぱりいつも気づいてなかったんだなーと思って」
「やっぱり……?」
私はヘマをやらかしたでしょうか。
「結構前から俺と真穂会ってるけど、真穂がいつも下向いてるから気づいてないだけだと思う……」
「なっ。ご、ごめん! 気づかなくてごめん」
「いやいや、いいんだよ。朝は眠いし下向くのもわかる……ん? 昼休みも放課後も気づいてないな。これは眠いから……」
「本当にごめん! こんなうちを殴っていいよ、ほらっ」
私はどうして気づいてあげられなかったのですか。せっかく相手が私とことを気づいてくれていたというのに。勿体なく感じてしまいます。
「な、殴りはしないよ」
「じゃあせめてお詫びでも……あっ、ジュース奢る! 今日のお昼ジュース奢ってあげる!」
「い、いいの?」
「うん!」
こうでもしないと申し訳なさが晴れない気がしたので。
「うち昼になったらA組の前に行くから待ってて」
「わかった。待ってる」
大成は微笑みました。可愛いです。
約束をした私達は、下駄箱の前で話続けているのもなんなので教室へ向かいました。
「それじゃあ昼に会おうね」
「オッケー」
いったん別れて昼まで授業を頑張ります。今日の授業は比較的楽なので忘れる前に昼が来てくれそうです。
「あ、藤田さん」
「はい?」
「昼休み始まったらすぐに美術の先生が来てほしいって言ってた」
「ひ、昼すぐに……わかった。ありがとう」
昼休みは奢る約束があったのに……。これは少しの間延期してもらわないとなりませんね。
……っと、今昼休み始まったところじゃないですか。とりあえず大成に理由を言って待っててもらうことにしました。
先生の用事は今日の部活の事についてでした。先生は午後から帰るそうで部活中には伝えられないとのこと。部長である私に伝えておきたかったみたいです。
案外早く済んでよかったです。私はもう1度大成の所を目指します。
A組を覗いてみると、大成はなんと入り口近くに座ってました。友達と話してる中声かけるのも少し気まずいですが……
「大成、後ろ」
「え?」
「あ、終わったよ」
「早かったね。てか本当に奢ってくれるの?」
「うん。約束は守らないと」
「やったね。ちょっと俺ジュース買ってくる」
「いってら~」
大成の友達のお陰で声をかけずに済みました。大成の友達には感謝です。
「大成の席はあそこなの? 入り口近く?」
「うん、そうだよ。出入りは楽かな」
笑いながら言いました。
「用があったらすぐ呼べるね。便利な席だ」
「確かに。でも、他クラスで俺に用がある人ってそんなにいないけどねぇ」
「あー、ほとんど同じクラスの子と話すしね、用はあまりないよね。じゃあ別に便利な席でもなんでもないことになる」
「そうなっちゃうね」
まったり会話をしているとあっという間に自販機近くまで歩いてきました。近いので楽といえば楽です。
「何が飲みたい?」
「んー。いつもこれ買ってるし……たまにはこれにするかな」
「わかった」
大成はグレープ味の炭酸ジュースを選びました。見るからに美味しそうです。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
大成は両手で受け取ってくれました。そんな些細な仕草でもキュンときてしまいます。二次元キャラと置き換えてしまっている自分でもいるのでしょうか。三次元ではそんなにキュンとしないはずです。
「冷たいうちに飲んじゃった方がいいかもね」
「そうしとく」
階段を上ります。上る最中ぶつかってしまいました。お互いごめんね、と言いながら笑いました。
「お帰り真穂」
「彼氏と楽しかったー?」
「ただいま。彼氏じゃないよ」
叶魅ではなく音葉がボケをかましてきました。
「どうせ彼氏になるんだから」
「え」
大人しいなと思ってた叶魅でしたが、やはり言ってくるものですね。
「ジュース奢るとかさ、別に可愛くないことしたね。もっとあったでしょ、ちゅーしてあげるとか」
「いやいやいや、無理だよ」
付き合ってもないのにキスはハードル高すぎます。
「大成と話した後の真穂の顔ってすごく幸せそうに見えるのは気のせい?」
「おっ、鋭いね音葉~」
……顔に出るものなのでしょうか。だとしたらすごく恥ずかしいのですが。
「やっぱりさ、真穂は大成に少しでも気があると思う」
「だよねぇ、うちが見てもわかるんだし」
「相当わかりやすいよね、真穂って」
「うん」
2人で話を広げてますが、やはりわかりやすいのですかね。その日の気分や体調までわかってしまうほどなのですから、気を付けなければ。
「早く付き合ってくんないかな~」
「真穂と大成の日常が楽しみのような気がする」
いや、2人とも何を言ってるの。
付き合うなんて無理です。仮に好きだとしても告白できません。告白されてもどうしたらいいのかわかりません。
「ささ、早くお昼食べよう」
私は話題を変えてみました。
「話を逸らしやがってぇ……」
「あー、美味しいなぁ。ご飯美味しすぎる」
私は聞く耳を持ちませんでした。
私の号令と共に部活が終わりました。少し時間がオーバーしてしまいましたが、きっと問題はないでしょう。
最後に部室に出る人は鍵を閉めてとお願いを伝え、私は帰ります。
校門を出ると、歩道には誰も歩いていませんでした。これは歩きやすいです。
道の右側をスタスタと歩くこと7分ほど、曲がろうかと思っていた矢先に、
「おーいっ」
声がしたので見てみると、大成が走ってきました。
びっくりした私は、とりあえず待ってあげようとその場に立ち尽くします。
「はぁ……はぁ……」
「な、なんかお疲れ」
「うん……さすがに疲れた」
「だろうね。全力ダッシュだったもん」
走ってまでどうして私に声をかけたのでしょうか。
「あのさ……ちょっと昼休みに神様が背中を押してくれてさ、今言おうかなって思ったんだけど……」
息を切らしながら言います。
神様とは一体なんのことなのでしょう。神様を信じる人だったのでしょうか。
「……思ったのはいいけど、言いづらいな。恥ずかしいや。歩こう」
「う、うん」
恥ずかしい事とはなんなのか。おしっこ漏らしちゃった、くらいしか浮かばない私の頭をどうにかしてほしいくらいです。
「えっと……覚悟したから言うよ? 延長とかしないからね?」
「お、おう?」
何なのかとても気になります。こういうのは躊躇わずにズバッと言ってほしいものです。
「俺さ……」
「うん」
急に周りの木々の音が静まりかえったような気がしました。
本来書きたかったことと全然違ってますのでぐちゃぐちゃです><