気持ち
今下校時間なのですが……誰1人知り合いが見当たりません。1人も1人で楽で良いのですが。
「でさー、聞いてよ」
「なになにー?」
私の前に2人女の子たちがいます。この歩道は狭いのに2人で歩かれると抜かせません。……しかし、この2人は歩くスピードがそこそこ速いので歩きやすいです。
「3-Aだっけな、大成って知ってる? 卓球部だけど」
「あーっ、知ってる」
大成とは紀村大成の事でしょうか。知ってる人の話をしている人たちの話を盗み聞きするのは結構好きなんです。
「めいさ、その人の事好きだったのに好きな人いるんだって! その相手誰だか知ってる!?」
めいって、1年生の時に同じクラスだった子かもしれません。
「え、そこまでは知らないけど……」
「藤田真穂だよ!」
「えっ、あの子!? 中学一緒だったんだけど。でもさ、あの子可愛いと思う」
ま、まさかの私でした。しかも2人共私と顔合わせしたことあるなんて、この2人の後ろを歩くのが気まずいです。もし後ろにいるのを知られたらどんな反応するのでしょうか。これは聞こえてないフリをしないといけなさそうです。距離もある程度置いておかなければなりませんね。
にしても、私の聞き間違えでなければ大成はやっぱり私の事好きなのでしょうか。
「可愛くても地味な部類でしょあの子は。メンバーも地味じゃなかった?」
「え、それは知らないけど……」
「あ、そっか。でも地味だったの」
可愛いは気のせいだと思う……いや、思いたいです。地味は認めますが。
「でさ、そんな大成に告白してもフラれるだけだよね。好きな子いるんだもん」
「そうかもしれないけど、猛アタックすれば希望は見える気がする!」
そうですよ、諦めたら何も残りません。……心の中で訴えても聞こえはしませんが、アタックするべきだと私は思います。
「真穂より可愛くなれる自信ないもん。無理無理」
「真穂にはなくてめいにしかない可愛さってものがあるじゃん!」
「そんなの……」
なんて良いことを言うのでしょうか。全くその通りですよ。
「……頑張ってみようかな」
「そうだよ、頑張りなよ! 同じクラスなんだしさ」
「うんっ」
良い話を聞いたなと思ったところで私は道を曲がらないといけなくなりました。じゃないと家が遠くなります。まだ2人の会話を聞いていたいところでしたが。
私は聞きたいのを我慢して歩みを進めます。
「廊下ってうるさいね~、先生に怒られて指導喰らってしまえ」
「あれみたいにイチャつかれるよりはマシだ。あれこそ指導対象でしょうが」
2人共恐ろしいです。叶魅と音葉です。今私らは廊下にいます。
「そうだよねー、前先生が仲良くするのはいいけど公共の場でイチャつくのは止めろって言ってたもんねー」
叶魅は棒読みで言いました。羨ましがっているのもありそうですが。
「私はそんな……いや、あんなイケメンと付き合ってみたかった」
叶魅が指したのは……
「え」
「あんなイケメンいたのかぁー!」
頭を抱える叶魅。私は凝視するしかありません。だって、
「た、大成だ……」
「たいせい!?」
大成です。まさか大成がイケメンだとは思ってませんでした。普通の顔面をしてると思ってました。
「あれが大成なの!? 初めて見たんだけど!」
「はい?」
「はっ」
興奮しすぎた叶魅は口を押さえました。
「ご、ごめんね大成。気にしないでね」
「え、あ、うん。わかった」
大成は素直に去りました。
「あんなイケメン早く奪い取ってしまいなよ」
「どうやって奪い取るの?」
「好きですーって」
「無理だよ。だって大成の事を好きだって言ってる人がいて、大成に猛アタックして彼女になろうとしてるんだから、その人がきっと彼女になって大成はハッピーエンドで、うちは置いてけぼりだよ」
「そりゃないぜ真穂ちん」
きっと大成の好きな人は私ではなく、めいちゃんなのでしょう。昨日話し合ってたあの2人は、嘘の情報を得たに違いありません。
「好きな子をコロッコロと変えるような人じゃないはずだ大成は! 真穂一筋だよきっと」
「どうしてうちが好きだってわかるの?」
「よく話すんでしょ? 数少ない男友達で尚且つよく話すんなら大成しかいないっしょ」
「うわべだけかもね」
「音葉は黙って」
「……へい」
叶魅はなぜかと真剣になってます。
「とにかく、絶対あんたの事好きなんだから」
「そうなのかなぁ……」
ここら辺を区切りに私たちは教室へ戻ります。
モヤモヤします。スッキリしません。どうしたらいいのでしょうか。
今廊下にいます。帰りのSHRが終わりました。
授業中、大成のことばかり頭に入って集中できませんでした。もし好きだったらどうすればいいのでしょうか。告白されたら了承しないと駄目なのでしょうか。そもそも告白されるでしょうか……。
そんなことをずーっと考えてました。有り得るわけないのに。
私はもう部活に行くか迷ってます。行けば仲間と楽しく話してこのモヤモヤも消えるのでしょうか。そのまま待って大成と会えたらなんて思ったりもして……
「やっほー」
「わっ」
ガチでビックリした私は少し後退すると、目の前には大成がいました。
「た、たたた、大成」
「ごめん、ビックリしたよね」
今大成の事を考えてる最中でしたので、余計驚きました。
「いや、大丈夫だよ」
ここで会話が止まりました。なんとかして話を広げようと私はふと話題を振ってみました。
「そうだ。大成が好きだって言ってる女の子がいてね、大成に振り向いてもらえるように頑張るって言ってた」
あれ、こういう話って本人に打ち明けていいのでしょうか。名出しはしてませんが。
「そうなんだ……まぁ、俺他に好きな子いるから告白されても断る」
「だ、誰か知ってるの?」
「知らないけど、真穂ではないよね?」
「う、うん。うちは有り得ないと思うよ」
大成はやっぱり私じゃなくて他に好きな子がいるのではないですか。所詮は噂なんですよね。噂を信じてはいけないと思い知らされます。
そしてどこか、残念なところもあります。なぜでしょうか。
「有り得ない……か。真穂は恋愛しないの?」
「できるならしてみたいよ。恋してる人たちって楽しそうなんだもん」
「楽しいときもあるだろうけど、辛いこともあると思うよ。話したいのに話せなかったり、避けられてるんじゃないかって不安になったりもするしね。いろいろ忙しいよ」
「そっか。大成は好きな人いるんだもんね、大変だね。でも、頑張って」
「……うん、頑張る」
大成はニコッと笑いました。私はなぜだかドキッときました。けど、応援したのはいいですが、やっぱり何かモヤモヤします。うまくいかないで、なんて思っちゃったり。このまま誰の物にもならないでほしいくらいで……。
「いやいや……むぐっ」
何を口に出してるんですか自分! しかも今の気持ちはなんなのですか!
「いやいや?」
「ち、違くて……」
「違うの?」
「うん」
恥ずかしいです。猛烈に恥ずかしいです。変なことを妄想するから口に出るんです。些細なことかもしれませんが、私にとっては恥ずかしすぎます。
「あっ、そうだ。ライン交換しようよ」
「あ、いいよ」
話題が変わってひと安心です。
「QRコード見せるから撮って」
「うん」
私は見せてもらい撮りました。
「そろそろラインくらい交換したいなって思ってたんだよね」
「そうなんだ。うちラインは部活の事以外はいじらなくて」
「マジか。でも、依存しなくてよさそう」
「確かに」
私たちは笑いました。
「んじゃ、俺部活だから」
「うん。うちも部活行くよ」
「バイバイ」と声をかけて別れました。気分がいいです。
……なぜ気分がいいのでしょうか。
もう、この自問自答が毎回繰り返されてる気がします。
楽しい気分で部活を向かえたため、部活が終わるのが早く感じました。こういう日が長く続けばいいのに。
頭の中で(いわゆる妄想?)連載させてたものなので内容が薄れてるものだから、だらけてしまってますm(_ _)m