運命?
朝です。大成が昨日私をおぶってくれたお陰で、腹痛が嘘のように消えていきました。
今学校へ向かっている途中です。自転車にぶつかりそうになってしまうので、いい加減車道を走ってほしいものです。
学校の玄関に着くと、噂の大成が靴を履き替えていました。
下駄箱は1年生の時の場所と変わらないので、元同じクラスだった大成とは場所が近いのです。なのですぐわかってしまいます。
「あ、真穂だ。おはよう」
「おはよう」
「昨日はお腹大丈夫だった?」
「うん。大成のお陰で治ったよ」
「お、おうっ」
なぜだか大成は動揺しています。頭を掻く動作は動揺などの表れらしいです。本当かどうかはわかりませんが。
「あっ、ごめんね。待ってもらって」
「いいや、いいんだよ。俺が勝手に待ってるだけだし……」
勝手に待ってても待たせてるものは待たせてるのです。私は急ぎ目に上靴に履き替えました。
「ごめん、行こうか」
「オッス」
私たちは教室へ向かいました。3年生ともなると教室までの道のりは楽です。4階中2階に教室があるので、疲れずに済みます。
階段を上りきると、私のクラスが見えます。ここで大成とはお別れです。
手を振って別れたあと、私は教室へ入りました。
「次体育だぞお前ら」
叶魅がいつもと違う口調で言いました。
「知ってるよ」
音葉はさも当然のように答えました。
「外でテニスでしょ? なら暇な時間はいくらでもできるよね、私らうんこ野郎には」
「……いいや、ほんわかチームが入れてくれるかもしれない」
「けどそれは余り物の私たちを仕方なく入れてくれるわけであって、好意で入れてくれるわけではないっしょ」
「そっか」
何の話をしてるのかわかりませんが、早く行かないとグラウンド2周走ることになってしまうので、私は2人を連れてグラウンドへ向かわせました。
グラウンドへ向かう際も2人で言い合いをしていました。作戦会議でしょうか、人間関係についてでしょうか。
後者だとすればありえます。私たちのグループは比較的地味なので。これに快くんなど男の子も加わってくれれば地味から脱出できるのですが……。
「ねぇ、2人とも何の話してるの?」
私は聞きました。
「んー? 仲間に入れてくれるかどうかを……」
「それなら快くんたちに入れてもらおうよ! 叶魅の彼氏も音葉の彼氏もいるんだから」
「なるほどー! 男女混合はこういうとき役に立つのね~」
叶魅は吹っ切れたように軽快に走り出しました。それに続いて私と音葉も走り出しました。
私らが着く頃にはほとんど整列していました。慌てて列に入ります。
ある程度集まったところで先生が話始めました。色んな説明を終えてから、私たちが選択したテニスをやりにテニスコートへ入ります。
他にもベースボールとサッカーもありました。
「快~、いれて~」
早速音葉が声をかけてくれました。
「いいよ、多分音葉たちが入ればちょうどよくなりそう」
「やっふぅー! 叶魅と真穂ー、入れてもらえたでー」
「ありがとう音葉~。アンタいなかったら私ら死んでた」
「え?」
「ありがとうね音葉」
「ウィー」
とりあえずの難関はクリアしたので、あとは安心して過ごせそうです。
「壁打ちしよっか。……っていうか、音葉の方が詳しいと思うんだけど」
「そうだよな、それ思ったわ。さも私は初心者です、みたいな面しやがってよー。はよ教えろよ」
「……何のことかね? わしはバドミントン専門だ……」
「早く」
「はい……」
快くんのお友達の良平くんが音葉に教えの要求をしました。
「えっと……まずは__」
「はぁ~」
「疲れたけど戻ったらお昼だよ」
「そだね~。腹ペコだわ」
叶魅と私で教室へ向かいます。音葉は快くんと戻るそうです。
「何で音葉たちって学校で堂々と話せるのかな」
「音葉たち?」
「音葉と快のこと。私じゃ絶対無理なんだけど」
「あぁ。確かに叶魅と吉良くんが話してるの見たことない」
吉良くんというのは叶魅の彼氏です。しかも幼馴染みということなので、相当仲がよろしいかと思います。クラスの皆にバレないように付き合っているらしいのですが、果たして本当に隠しきれているのか疑問です。
叶魅の性格なら堂々と付き合えそうな気がするのですが、そんなことはないようです。
「だって恥ずかしいでしょ。あとさ、影で悪口言ってるかもしれないしさ」
「それはあるかもだけど……考えすぎじゃないかな。言われるのって大体地味なカップルとかだと思うけど……」
「私と吉良って地味じゃん」
「え? どこが?」
どこが地味なのでしょう。見た目も可愛い叶魅に、かっこいい吉良くんの組み合わせなんて地味なんて言えません。むしろ目立ちそうです。
叶魅も元キャピキャピ系女子でしたし。今も若干名残がありますが。
「どこがも何もクソみたいな私と吉良が釣り合うわけないんだって。吉良がもったいなく感じる」
「な、何で付き合ったの……?」
「好きだから」
ですよねー。
好きじゃないと付き合いませんもんね。叶魅はもっと自分の顔に自信を持っていいと思うのです。私から見れば叶魅はモデルさんみたいな顔立ちにスタイルだと思います。
「あーもう。昼休みは真穂と大成の出来事を聞いてリフレッシュだな!」
「は、はい?」
今理解不明なことが聞こえた気がしたんですが気のせいでしょうか。
昼休み、弁当を食べ終えた私たちは、早速先ほど叶魅が言った私と大成の出来事を聞いてきました。
「で、何かあった?」
「うちはあったよー」
「アンタに聞いてない」
叶魅は音葉の両頬をぷにーっと潰しました。潰したまま私に聞いてきます。
「何かって何?」
「例えばキスしたとか、ハグしたとかいろいろ」
「…………んー。昨日おんぶしてもらったくらい」
「はっ!? おんぶ!?」
大きく目を見開いて私を見てきます。なんとなく恐ろしいです。
「どういう成り行きで!?」
「うちがお腹痛くなってうずくまってたら、家まで送ってあげるって……」
「何それズルい! 私じゃ持てないって言って拒否られそうなんだけど!」
「い、いざとなったら持てるんじゃないかなぁ」
「んなこたぁないぞ!」
「そ、そうすか……」
何をそんなにはしゃぐのでしょうか。確かにおんぶはびっくりするでしょうが、歩けなくなった時なら普通にしてくれそうな気がします。お姫様抱っこはなしですが。
「そんなん惚れるでしょ。ね? 惚れたよね?」
「……惚れた?」
「死ねっ!!」
叶魅は頭を抱えました。私は何か変なことでも言ったでしょうか……。
「好きにならないの? おかしくない? 二次元に没頭しすぎてる? 確かに二次元にはいいキャラがたくさんいるけど恋愛は三次元でしょうが!」
「ど、どうやって好きになるの?」
「自然と好きになるでしょ」
「じゃあ、そのうちかもしれないよ」
「その前に卒業してそうだわ」
高校3年生でした。早く恋愛しないとレベルアップしちゃいそうです。大学生の恋愛は高校生より倍は難しそうです。
「うちに恋愛なんて向いてな……」
「そんなこと言ったら音葉に負けた事になるよ、いいの? こんなヤツに負けるなんて女子力の欠片もないって思っちゃわない?」
「あ……」
「あってなんだよ!」
私は確かに負けるのは悔しいと思いましたが、音葉にしてみれば馬鹿にされてるようなものでしたか。失礼な事を言ってしまったようです。
「だって音葉だよ? いかにも恋愛興味無さそうな顔してるし」
「え? それどんな顔?」
「いや~、真穂と大成の今後が楽しみ」
「話聞け? おい?」
叶魅は完全に音葉をスルーです。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「オッケー」
急に尿意を感じたのでトイレへ向かうことに。
教室を出ると、私は真っ直ぐトイレへ向かおうとしたら、男子トイレから大成が出てきました。
「!」
大成は私に気づいたようです。
「ま、まま、また会ったね」
目線は私に合わせずに下を向きながら頬を掻いています。まるで照れてるように見えます。
「だね。さっき大成の話題が出たからかなぁ」
「お、俺の?」
「うん。なんか叶魅が聞いてきてさ」
「へぇ……。叶魅って誰だかわからないけど、俺を題材にしても面白くないのに」
「叶魅は面白そうにしてたよ~」
「マジか。きっと俺を小馬鹿にしてるんだよな、うん。そうだ……」
「ね、ネガティブだよ! ポジティブシンキングじゃないと!」
「あ、ごめんごめん」
大成は「じゃあね」と手を振って教室へ戻りました。
私は大成と話してる間、尿意を結構我慢してました。漏れる前にトイレへ駆け込みます。
私がトイレを出たと同時にチャイムが鳴りました。トイレで昼休みを終えたのがなんとなく悔しいです。
教室へ戻ると、お弁当食べる体形が戻ってました。
「あ、真穂ー。昼休み終わっちったな」
「ね。けど大成に会えたしいいや」
「大成いたのか。しょっちゅう会うね。運命か」
自分の席へ着くと、音葉が話しかけてきました。私と音葉は席が近いのですが、私と叶魅となると席1つ分が空いてしまうのであまり話ができません。よって、こうやって自分の席に着いてる時は音葉と話すことが多いのです。
「運命じゃないと思うよ。どうせ同じ学年だし、会うことだって多々あるよ、きっと」
「あ、そっか。そうだったねぇ」
叶魅に比べて音葉は軽いので話がスムーズに進んでいいです。叶魅は所々つっかかるもので。
「あ、先生来たぞ」
「本当だ」
残り2時間授業を寝ずに頑張りました。友達といる時間が楽しくても、授業は楽しくないので、早く家に帰りたいと思ってしまいます。
最近、大成と帰りに会えるかな? なんて思ったりすることもあります。なにしろ楽しいですから、大成といると。
一人称を私にしました。うちじゃ違和感満載でしたね(;;ー ー)
真穂が会話で喋る時は「うち」ですがね
この回はだらだらでした