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やっぱり君がいいみたい  作者: 恋のいくよん
1/5

きっかけ

短い連載ですがよろしくお願いします。

一気に投稿はしないのであしからず。1日1回のペースで投稿できたらいいなぁ。

真穂(まほ)さ、今モテ期到来してるよね」

「え? 本当に?」

「うん。だって私が聞いた限りでは5人くらいは真穂の事好きだって言ってる輩がいるもん」

「おぉ……」

 モテ期は3人以上から好かれることを言うみたいですが、今うちはそのモテ期が来てるみたいです。信じられませんが。

「名前忘れたけどABCD組全部に真穂を好きになってる人いるって話」

「えぇっ」

 そんな情報どこから取り寄せてくるのでしょうか。いつも不思議に思ってます。この子、叶魅(かなみ)はこの学校の情報屋とも言えちゃいます。……このメンバーだけの。

 このメンバーと言いますと、もう1人いまして、

「真穂モテ期か! うちもあったけど!」

「あったの!?」

 うちより先に叶魅が反応してしまいました。

 今モテ期あったぞ発言をしたのが、音葉(おとは)という女の子。二次オタでありスポーツ系女子である音葉ですが、彼氏がいるんです。二次オタというとずっと恋人ができないイメージがあるんですが、そんなことないようです。

「先輩と(かい)と幼稚園の頃の……」

「幼稚園の頃とか大昔のことは含まれないから! 馬鹿!」

「えぇ、そうなの? 自慢できると思ったのに……」

 叶魅に激しくツッコまれてしょげる音葉。幼稚園の頃の話はもう大昔になってしまうのですね。今は高校3年生ですが……。

「でさ、真穂って男子と交流あるの? あまり無さそう」

「うーん、中学からの知り合いと高1の時にクラスが一緒だった男の子数人となら話したことあるけど……あ、その数人も中学の同級生かも」

「中学からの知り合いって誰? 何組? このクラス?」

 恋バナとなると凄く食らいついてくる叶魅。これぞ女子って感じです。

「言ってわかるのかなぁ」

「そうか……。んじゃあその人何部?」

「え? 3人くらいいるけど……」

「マジか。特に仲が良い方で」

「うんと……中学から存続してるなら卓球部かなぁ。うちも卓球部だったし」

「え!? 卓球部だったの!?」

「うん」

「知らなかった……真穂って謎だらけね」

「え?」

 別に謎になるような事はないと思うのですが、それは置いておきましょうか。

「で? 名前は? 卓球部ったら(かい)もいるし、大体わかるかも」

 快というのは音葉の彼氏なのです。叶魅は快くんを物凄く毛嫌いしてるんです。なぜだろうか……。

「名前は……紀村(きむら)大成(たいせい)

「…………えっ!?」

「ん?」

「知ってるわー。快がいっつも話題に大成が~、って言ってるわ」

「あっ、うちもよく聞くよそれ。大成って人がなんちゃらーって」

「ふ、2人ともよく聞くんだ……」

 それだけ快くんと大成は仲がよろしいのでしょうか。

「大成? だっけ? 大成は真穂の事好きなんだろうね」

「な、なぜそう断言できちゃうの」

「だって真穂と話すのって数人しかいないんだから、絶対大成は真穂の事好きだよ」

「それはないと思うけど……」

「どうしてー? またあれか、どうせうちなんか好きになってくれないよ、なんて言うのか」

「そ、それは……」

 図星です。こんなうちを好きになってくれる優しい男の子なんているはずないんです。地味な女は興味がないでしょうし。

「そしたらあの人どうするの? よく本屋さんで会う人」

「あの人より今は大成でしょ」

「えー? うちは本屋さんの人を応援するわ」

 本屋さんで会う人というのは、うちが何気なく土曜日に本屋さんへ向かったところ、タイミングよくその人が出てきていつもぶつかりそうになり、というのを繰り返すうちに仲良くなり、ラインを交換する仲に達した人。

 音葉も叶魅も付き合っちゃいなよ、なんて言ってくるのですがうちはその人をなかなか好きにならず、ましてやラインすらしなくなってしまった人なんです。

「もう本屋さんの人は脈なしだっての。今の時代は大成だよ」

「いや、そんなこと言って実は真穂は本屋さんの人が好きなんだよ」

「か、勝手に話を進めないでほしいなぁ……」

「真穂はぶっちゃけどっちが好きなのさ」

「え」

「大成でしょ?」

「いや……」

「まさか本屋さんの人?」

「違うけど……」

「どっちだよ!」

 叶魅にぐいぐい攻められてしまいますが、どちらも恋愛対象で見たことがないのでなんとも言えません。

「そ、それより早くお昼食べないと時間が」

「あ。あと5分しかないぞ叶魅!」

「えー? 食べきれるかな」

 とりあえずうちらは弁当を急いで平らげて午後の授業の準備をしました。



 そして午後の授業が終わり、帰宅時間に。今日はなぜか部活がないので真っ直ぐ家へ帰れます。

 ……ちなみに卓球部ではありません。今は美術部です。運動が億劫になってしまいました。

 生徒玄関を出て、校門を出て、通路を歩いて数分後、足音が聞こえてきます。ランニングでもしてる人がいるのでしょうか。それにしては足音が大きすぎる気がしますが……。

「真穂っ」

 男の子の声です。……あ、もしかして男の子ではなく先生だったりするのでしょうか。後ろを向いてみると、

「やっほー真穂。なんか久しぶりだね」

「大成……」

 お昼にすごく話題になった人です。久しぶりなのも仕方ありません。何せ、1年は話していないのですから。

「真穂部活は? 美術部だったよね?」

「あ、うん。そうだけど……何で知ってるの?」

「えっ。あ、いや、それはその……ほら、部活動紹介とかで見かけたっていうか……」

「ほぅ……」

 そうか、それなら知ってるのも当然……。じゃあ、何でうちは大成の部活を知らなかったんでしょう。それほど興味が……いやいや、そんなことはないはず。

「た、大成は卓球部?」

「そだよ。中学と変わらない。もしかしたら真穂もいるかなー? なんて思ってたけどそんなことなかったっていう」

「あ、ごめんねなんか。卓球じゃなくて美術部に入っちゃって」

「そんな、謝ることはないって。ただ、寂し……ゴホッ、何でもない」

「そう?」

「うん。それより一緒に帰ろう」

「いいよ」

 大成と一緒に帰るのは何年ぶりでしょうか。これまた1年以上ぶりになるんでしょうね。卓球部だった頃はほぼ毎日一緒に帰ってた気がします。他にも部員が数人いましたが。

「部活楽しい?」

「うん、楽しいよ。ゲームの話もできるし、一緒に絵も描けるし。油絵が楽しくてさ、1年の頃は面倒だな~なんて思いながら描いてたんだけど、2年に上がってからすごく油絵描きたいって思い始めて、今に至ってる。修正も効くし、一石二鳥だよ」

「そうなんだ、楽しそうで何よりだよ。部活って楽しいよね、友達増えるし」

「そうだよね! ただ、うちのクラスにはうち1人しか美術部いないんだよね……」

「マジか~。これまた不便だったりしない?」

「ううん、大丈夫だよ。部活のラインでなんとかなるし、美術部3年生だけのラインもあるし、情報交換はきちんとできるし」

「なるほどね」

 そうこうしてるうちに家の近辺まで来てました。時間があっという間に感じてしまいます。

 うちと大成の家は真逆なので、この先の曲がり角で別れてしまいます。

「ここで別れちゃうね」

「家まで送るよ」

「え?」

「もう少し話していたいし……」

「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ」

 そう言って大成はうちの家まで一緒に歩いてくれることに。

「…………」

「真穂? お腹痛いの?」

「うん……さっきから痛いなーと思ってたんだけど……」

「大丈夫?」

「大丈夫……じゃ、ないみたい」

 お腹が急に痛み始めました。今までに感じたことのない痛みで、歩くのも困難です。

 うちは耐えきれずしゃがみこんでしまいました。

「真穂大丈夫!? 歩ける?」

「無理……」

 これはもしかすると生理痛かもしれません。朝に来てしまっていたので、仕方ないと言えば仕方ないですが……。こんなに痛くなるとは思ってもいませんでした。

「真穂、俺の背中に乗って」

「そんな、持てるはずないよ」

「俺は中学ん時より大きくなったし力も強くなった。だから真穂くらい余裕で持てるって」

「けど……」

「ほら早く。痛いんでしょ?」

「うん……」

 大成はうちを背負うためにリュックを前にかけていました。うちは大成の背中にゆっくりと乗る。崩れないか心配でしたが、大成はスッと上体を起こしました。心配は無用でした。

 まさか大成におんぶしてもらうなんて思ってもいなかったので、少々、いや、かなり驚いていますが、何より背中が暖かいです。リュックを背負っていたからなのでしょうか。

「家はあっちだよね」

「うん……」

 近辺に着いたとはいえ、まだ少し距離はあります。

 お腹の痛みが少し和らぎました。大成の背中はとても落ち着きます。

「…………」

「…………」

 しばし無言が続きました。痛くてしゃべる気にもなれないので、ずっと黙っていました。大成も空気を読んで黙ってくれているのでしょうか。だとしたら気遣いのいい人だと思います。

 にしても、気持ちよくて寝てしまいそうです。流石に背中で寝ては迷惑かと思うので我慢です。

 少し痛みはあるものの、大成の背中パワーで和らぎました。こんな短時間で和らぐなんて大したものです。

「真穂ん家だ」

 大成の声と共に顔を上げました。

「よいしょっと」

 ゆっくり背中から下ろしてもらいました。

「ありがとう大成。さっきより痛くなくなったよ」

「本当? よかったよかった。お大事にね」

「うん。本当にありがとうね」

 うちは大成に手を振りました。大成も手を振り返してくれました。おまけに笑顔も貰いました。

 うちは家の門を開けると、兄が日向ぼっこ……(日はありませんが)らしきことをしてました。

「見てたよ真穂」

「あ……」

 おんぶされてるところを兄に見られてしまいました。流石におんぶされてるところを見られるのは恥ずかしいものです。例え女の子におんぶされてても恥ずかしさは変わりません。

「彼氏?」

「いいや、違うよ」

「彼氏でもないのにおんぶしてもらったのか」

「彼氏とか関係ないとおもうよ」

「いや……関係あると思うけど」

「あるの? まぁ、いいや」

 うちはお腹が痛いので兄は後にして家の中へ入りました。

 なぜだかわかりませんが、うちは気分がとてもよろしいです。あの心地よさは忘れられません。

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