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光の向こうの春

作者: 渡辺 ゆき

あの日から、彼は笑わなくなった。私は、ただ彼に笑ってほしかった。こころから。でも…


半年前…高校2年生の彼。


彼の両親がなくなった。トラックとの衝突事故。家族旅行で海に行ってたようだ。その帰り道、トラックが前から来た。そのため、彼の父は、ハンドルを急いで回したが、あっちのトラックが勢いよく来たことで、彼の乗っていた車の衝撃は、大きく両親と妹がなくなる。彼は、軽傷で済んだ。でも、彼のこころは傷よりも深い言葉にできないくらいのものだった。彼は暗闇に沈んだ。


事故から1ヶ月後、彼は、再び、学校に来た。親戚のおじさんとおばさんのところに行くこととなり、そこから通い出したのだ。彼は、前とは別人のような雰囲気で、あんなに元気いっぱいだったのに、暗くなった。


私は、実は、彼と幼馴染。ずっと、小さい頃から一緒だった。よく、その辺の公園で遊んだり、ちょっと遠めのところに冒険に行ってみたりしていた。小学校も中学校も同じでクラスも今のところずっと同じ。教室でも、会うと

「おはよ!」

ってお互いに挨拶したり、彼の家に行ったりすることも、しばしばあった。宿題を一緒にしたり、ゲームすることもあった。


高校2年生になって、ある日、登校途中の彼を見つけ、私は前のように

「おはよ!」

とスキンシップしながら言った。彼は振り向いたが、こわばった顔で、何も言わなかった。それでも、私は、彼に話しかけた。色々と。でも、彼は何も発しない。無だった。ただ、ひたすら歩く彼。学校に着き、教室に入ると、教室はざわざわとしている。自分の席に荷物を置いた後、彼のところに行き、彼に諦めずに話す。色々なことを。でも、彼は、やっぱり、何も言わなかった。チャイムが鳴る。お昼。

「一緒に食べてもいい?」

と聞く。彼は、やっぱり、何も言わなかった。そして、話しかけ続けた。次の日も。その次の日も。


学校が休みの日も彼の家に行ってみたり、彼の部屋で懐かしさを話してみたりと色々と話しかける。彼のあの頃の笑う顔を見るために。朝、登校する時も彼を見つけ、

「おはよ。」

って毎日、言ったり、一緒にお昼を食べたりと一生懸命話しかけた。


でも、なかなか、彼に変わる様子はなかった。彼は、まだ一度も何も言ってくれないし、顔が変わらない。表情が。しかも、なかなか、笑ってくれない。私は、諦めず話しかけ、笑わすようなことを言ってみたりと試みるが無だった。半年になり、1年経っても。


ある日、友達にいつも通り、

「ごめん。」

と言ったとき、友達は、

「好きなの?」

と聞く。私は、とっさに、

「え?」

と言う。友達は、

「そんなに毎日毎日。」

っと。私は、

「私はただ…彼の笑う顔を見たいだけだよ。」

と言うと、

「それにしてもさ…」

と他の人に

「ねえ?」

と回す。回ってきた友達は、

「え?そうだよね?」

という感じだった。私は、

「まあ、幼馴染っていうのもあるし…」

と言うと、

「うん…そっか…」

と。そして、お昼、彼のところに行って、いつも通りに、

「一緒に食べよう!」

と彼と食べる。私は、さらにいつも通り話しかけ続けた。


1年半が経った時のこと。クラスがまた同じだった。


私はいつも通り彼に話しかけた。朝、

「おはよ!」

って。すると、彼は、少し顔が柔らかくなっていた。いつもだったら、こわばった顔をしているのに。その時、私は少しうれしかった。彼に少しだけ、変化が見えたから。私はいつも通り微笑みながら話しかけ続けた。


教室に入ると、相変わらず、ざわざわとしている。私は自分の荷物を自分の席に置いた後彼のところに行き、チャイムが鳴るまで、話しかけた。朝、少しだけ、きのうせいかと思っていたが、やっぱり、彼の顔つきは、変わっていた。本当に無に見えたが、そうでもなくなった。


授業が終わりチャイムが鳴る。お昼。彼にいつも通り

「一緒に食べよう!」

と言って彼のところに行くと、彼はかすかに

「うん…」

と言った。私は、

「え?」

ととっさに口に出た。すると、彼が、少しだけ微笑んだように見えた。私は、

「もう1度!もう1度!」

とせまると、彼は、

「うるせよ…」

と発した。私は、うれしかった。彼が、こころを開き始めたことにすごく喜んだ。それから、話しかけると、彼は、返事してくれるようになった。でも、笑ってはくれなかった。


ある日、私は、彼を、笑わそうと色々と話すが、なかなか、笑ってくれなかった。でも、お昼の時、

「一緒に食べよう!」

と言い、彼は、

「うん…」

と言い、食べていた時、私は色々と話した。すると、私は面白いことを言ったわけでもないのに、彼は、

「フッフゥ」

と。そして、私のほっぺについた米粒を彼は取る。そして、

「ついてたよ。」

と再び笑った。私も笑った。


それだけでいいと思ってた。それから、彼は笑うようになった。あの時のように。こころから。一人でいることが多い彼に、暗かった彼に、人が集まるようになった。彼は、イケメンだし、暗くても彼のことをかっこいいと言う人はたくさんいた。


私は、それから、毎日、登校中に

「おはよ!」

から、放課後の帰り道に時々、寄り道したりと、彼と帰ったりを続けていた。私には、まだ、彼の中に暗闇があるように感じた。彼は笑うし、話すようになってきた。楽しく、過ごしていた。


隣のクラスの女の子のクループが私たちのクラスに来た。

「七星さん、いますか?」

と言う。私は、

「私ですけど…」

と言った。

「こっちに来てくれない?」

と言われた。私の友達が、

「この子に何か、用?」

と聞く。私は、

「大丈夫だよ。」

と言って行った。すると、

「あんたさ、大神くんとなんなの?」

と言う。私は、

「え?」

と言う。その後に、

「なんなの?って?」

と聞くと、

「とぼけないでよ!」

と言う。

「私が、大神くんをずっと前からすきだったんだから。」

と。私は、

「私は、そんなじゃなくて…ただ、彼に笑ってもらいたくて…」

と言うと、

「はあ?それで、そこまでする?」

と言う。私は、付け足したように、

「幼馴染だし…」

と言うと、彼女は、

「本当にそれだけ?」

と聞く。私は、うなづいた。

「大神くんにもう2度と近づかない。」

と言われ、

「え?なんで?」

と言うと、

「いいから。黙って聞け!じゃあないと、どうなるか、わかるでしょ?」

と言う。私は、おびえながら、

「はい…」

と言った。それから、彼をわざと避けるようなことをしてしまった。朝、彼から来るが、私は、

「朝なら、大丈夫かな?」

と思っていたが、見張られていた。帰りも一緒に帰らなくなった。


そんなある時、彼は、私に聞く。

「なんで、避けるの?」

って。私は、

「避けてなんかないよ。」

と言う。彼は、

「どうして?まい…」

って言う。

「私だって、話したいよ。れんと。」

でも…

私はその時、苦しかった。彼と話したいのに。彼の笑う顔を見たいだけなのに…


そんなことが続いて1ヶ月。彼を学校内で探していた時、校庭の端のほうでなにか話していたようだった。私は、近づいてみた。耳を傾けると、彼女は、彼に告っていた。

「大神くん、あのね…」

と言う。彼は、

「なに?話したいことって。」

と言うと、

「あのね…私…大神のことが好き。」

と言うと、彼は、即、

「ごめん。」

と言う。そして、

「俺、好きなやつ、いるから。」

と。私は、ドキドキとしていた変なかんじなのがあった。その時、気づいた。私は彼のことが…好きだってことに。彼は、私が窓のところから見ていたのを知っていたかのように

私を見つけ、

「お前…何してるだよ。」

と言う。私は、

「別に…何も…」

と言う。私は、意地悪に

「さっきの本当?」

と言う。

「好きな人がいるって。」

と言うと、

「お前…何聞いてるだよ!」

と言う。

「え?誰?」

と聞くと、

「言うわけないだろう。」

と言う。私がにやりとすると、

「なんだよ!」

と向きになる。私は彼をからかった後、微笑んだ。すると、彼も笑った。


それから、私は、彼に恋している。最初は、ただ、彼に笑ってほしかっただけなのに、彼をそっと思い続けていた。


きっと、彼に光の向こうの春は来たのだろうと思う。そして、彼への思いをそっと、隠した。


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