P8 同時刻 中国
中国の方の名前、おかしくないでしょうか?
火の海にさらされたここ上海では、異世界軍の侵攻を食い止めるために焦土作戦が実施された。なぜか、それは中国に侵攻してきた異世界軍が少し手強かったからである。
事の発端は30分前。
上海の裂け目から現れたのは甲殻虫、いわゆる巨大生物である。人が上に跨り操る巨大甲殻虫は、この世界で馴染みが深い生物の姿で襲いかかった。蟻、蜘蛛、蜂、ムカデ、ハエなど。突如時空の裂け目から現れた巨大甲殻虫は人々を食らい、上海全域を巣とした。
「くそっ!何て奴らだ!」
中国人民解放軍、南京軍区所属の陸軍兵である李天蔚上等兵は95式自動歩槍のサイトを除き、同期の兵士たちと共に迫り来る蟻の大軍に銃撃を繰り返していた。
「全然減らないぞ!?」
「撃て!撃ち続けろ!!援軍は必ず来てくれる!」
指揮官はそう言うが、来るはずがない。李は軍や共産党の本質を知っている。ただの捨て駒である自分たちに、貴重な援軍を送り込む必要がない。
「戦車隊攻撃開始!」
歩兵隊の後ろで待機していた99式戦車が、蟻の大軍に対して主砲を撃ち込む。しかし、それも足止め程度しかならず、虫たちの侵攻は止まらない。
「敵!上だ!!」
防衛線の上空に、蜂の姿をした巨大生物が迫ってくる。蜂に対して95式自走対空機関砲が25mm機関砲を撃ち込む。対空砲火の中をくぐり抜けた蜂が歩兵を掴み上げる。
「わっ!?わっ!?助けてくれぇ!?」
兵士を掴み上げた蜂は、そのまま空高く舞い上がると、その強いアゴで兵士の頭を噛みちぎる。防衛線の前に首がぼとりと落ちてくる。
「う、うわぁ!?」
「防衛線全部隊に通達する。党本部からの命令だ。あと五分、この場所を死守せよ。援軍が向かっている」
その言葉を信じ、必死で抵抗する。しかし、その圧倒的な物量に押され気味になってきた、李は隙を身図り、陣地後方へと撤退する。
「貴様!どこへいく!?持ち場を離れるな!」
「弾薬補充に向かいます!」
「嘘をつけ!弾薬がなくなれば銃剣突撃しろ!」
「……ざ……な」
「なんだと!?」
「ふざけるな能無しめ!」
李は腰のホルスターからマカロフを抜き取ると、政治将校の頭に発砲する。そして、近くにあったマンホールを開けると、後先考えずに下水道へと飛び込む。
そして数分後、第二砲兵部隊から発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)が上海に着弾する。上海は草木一つない荒野と化し、生き残ったのは下水道に潜んでいた李のみだった。
上海に発生した時空の裂け目は消滅し、李は放射能汚染の疑いがあるため、集中治療室で隔離されることとなった。
本怖のラスト感動した……泣