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四重奏カタルシス  作者: 竜矢 崎森
第壱章 四人の探索者
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第六話:不意討ち


飛鳥の後ろ姿を見送った夜城と彩夏は職員室前に着いた。 扉の前で夜城は溜め息をついた。

夜城「ほんっと遠かったです……」

彩夏「いや、アンタが迷わなければ良かっただけじゃないの………」

彩夏は腕を組ながら呆れている演技をした。 ちなみに先程のやりとりで彩夏は夜城から事の全部を聞いている。

鬼原「鍵、開けますね」

鬼原はポケットから鍵の束を取りだし、鍵穴に差し込もうとした。 すると横から夜城が身をのりだしリズミカルにドアを叩き始めた。

鬼原「け、刑事さん何をしているんです?」

夜城はくるりと鬼原の方を向き、当たり前のことを言うように答えた。

夜城「えっ? 何ってノックですよ。 ノック♪」

鬼原「どこの世界にそんなノックをして部屋に入る人がいるんですか……」

そんなツッコミを気にせず夜城は鬼原から鍵の束を取ってドアを開けた。

彩夏「まぁ鬼原さん、とりあえず部屋入りましょう」

彩夏は鬼原の背中を軽く押しながら部屋に入っていった。


夜城は職員室の中央らへんの机に座り、二人を手招きし、彩夏と鬼原を部屋の中央へと連れていった。

夜城「さて、それではお話しの続きをしましょうか」

そう言い、先程の質問の時と同じ体制をして鬼原に問いた。

夜城「鬼原さん、あなたは昨日ずっとこの学校にいた。そうですよね?」

その質問に鬼原は、頷いた。

鬼原「はい、証拠はこの部屋にある教員出席表を見ればわかります」

夜城「それは、どこに?」

鬼原「奥に張ってありますよ」

夜城「わかりました」

夜城はそう答え、部屋の奥へと歩いて、その際、気付かれないようにゆっくりと教員の机の下のスペースを見た。

夜城 (………ありましたね。 場所は覚えたから後は、戻るときに………)

夜城「………、確かにそうですね。 何度も同じ質問をすいません」

出席簿を見ながら夜城はそう言い、引き返してきた。 その途中、夜城のポケットから何かが落ち、机の下へ転がっていった。

夜城「おっと、いけない」

そう言って、夜城はしゃがみこみ机の下を調べた。 その覗きこんだ机の下には数枚の紙と白い粉の入った小瓶があり、それを見つけ、夜城はにっと笑った。

夜城 (飛鳥さん、ありがとうございます。 後は……)

紙と小瓶をポケットの中に突っ込み彩夏たちの方に戻って来た。

夜城「あのー、そういえばずっと気になっていたんですけど、飛鳥君は本当に何処へ行ったのでしょうか?」

鬼原の質問に彩夏はシドロモドロであったが、夜城は瞬時に答えた。

夜城「ここまで遅いとなるとおそらくお手洗いにでも行っているのでしょう。 ほら、年頃の少女のアレは、大人よりも長いというので……」

彩夏「ひどい言いくるめ方を見た………」

彩夏は、唖然としながらツッコンだ。

夜城「そしてもう一つ、あなたはこの学校で何をしていたのですか?」

鬼原「えっ、そりゃあ色々ですよ。 教師も暇なものじゃないので……」

今までの声と比べ、鬼原の声が心なしか小さくなってる気がしていた。 そこに夜城は畳み掛けるように鬼原に振った。

夜城「詳しく教えてくれませんか。 プライベートなものでもきちんと」

夜城の言葉に鬼原は、ただ黙っているだけだった。

夜城「だんまりですか。 いいでしょう、ではこちらも正直に話しましょう。 たった今、いや、つい先程あなたに犯罪の容疑がかかりました。 そしてそれは、確信に移っています。」

その言葉を聞き、鬼原の表情に焦りの色が確かに滲み出ていた。

鬼原「は? い、一体、何を根拠に………」

夜城「どうも声が震えて聞こえづらいですね。 それに根拠なら山程持ってますよ」

夜城は、先程入れた紙と小瓶そして、捜査本部から持ち出した小瓶の写真を見せつけた。

夜城「写真を見せた時のあなたの表情よーく見てましたよ。 他にも、私の嵌めのトラップにまんまと引っ掛かってくれましたからね。」

夜城は得意そうに腕を組み、ニヤリと笑った。

鬼原「嵌めのトラップ?!」

夜城「はい、そうです。 あなたが飛鳥さんとそのお姉さんに手をかけた犯罪者です」

夜城の物言いに耐えられなくなったのか鬼原は遂に激昂した。

鬼原「ふ、ふざけるな! 一体どう考えたら私が彼女達を誘拐した誘拐犯だと決まるのですか!!」

その激昂に全く動じず満面の笑みでこう言った。

夜城「鬼原さん………、いつ言いましたか? 飛鳥さんたちが誘拐事件に巻き込まれたなどと」

その言葉の後、鬼原の顔は一瞬で真っ青に変わった。

鬼原「えっ?! いや、絶対にどこかで………」

狼狽する鬼原に彩夏も続けていった。

彩夏「嘘だと思うなら、(第二話 その1、2) を見直して来なさい!」

夜城「彩夏さん、メタイです………」

夜城は、半目で彩夏を見ながらツッコンだ。

鬼原「な、な、なんてことだ」

夜城「はい、あなたも乗らない。 そして、あなたは次におそらく『どうして私を最初に疑ったのか』と考えるでしょう」

夜城の推測に鬼原は、口を開けたままでいた。

夜城「まず、第一に制服のボタンからです。 これは、生徒用ではないと飛鳥さんから聞かせてもらいました。 そして第二に、この写真の小瓶にあなたの指紋も発見したのでそこからです。 以上のことから、あなたを犯人と推測し、ボロを出すのをじりじりと待っていたわけです。 見事に引っ掛かりましたね。 人間、焦れば焦る程ボロを出しやすいですからね」

夜城の推理を一通り聞いた鬼原は、喉から振り絞った声を出した。

鬼原「す、すげぇ。 よくこの短時間でこんな推理を」

夜城「まぁ、推理というより騙しのテクなんですが……… と話がずれましたね。 それでは、あなたを逮捕します」

夜城は鬼原にそっと手を差し出した。

彩夏「本部こちら彩夏。 誘拐犯を確保しました。 至急応援を願います」

彩夏がそう通報し終わった後、さっきまで青ざめていた鬼原の表情からいきなり余裕かが表れた。

夜城「どうしました。 そんなに二ヤついて、気でもおかしくなりましたか?」

夜城の言葉に対し、鬼原はただ下を向いて笑っているだけだった。 やがて___

鬼原「クッククク、探偵さん確かにあなたの推理は素晴らしいものですが、一つ忘れていませんか?」

夜城「何がです?」

夜城は、不思議そうな顔で訪ねた。

鬼原「クックック、今あなた方は二人、こちらはすぐにでも増援を送れるのですよ。 察しの良いアナタなら分かってると思うけれどこっちにはまだ見方が3人いるんですよ。 たった二人で警察が来るまで足止めできますかね~」

鬼原の笑っている姿を見て夜城は、とぼけた顔でこう言った。

夜城「は? あなた、アホですか?」

鬼原「な、何をいっ………」

鬼原の声は、パトカーのサイレンによってかき消された。 彩夏も驚いた様子で窓の外を見た。

外は、学校の敷地の周りをパトカーが6、7台程取り囲んでいた。 その光景に彩夏も訳が分からないという顔になっていた。

彩夏「ど、どういうこと? 今さっき連絡したばっかりなのに………」

夜城「こんな敵が多すぎる場所に一般人の飛鳥さんをいつまでもこんなところに居させるわけないでしょう。 探し物が終わった直後すぐに警察に連絡してくれと頼んどいたのですよ」

そうため息をつきながら二人に言った。 そして鬼原は何かに気づいたのか突然声をあげた。

鬼原「まさか、さっきのアレは!」

夜城「勿論演技に決まってます。 証拠の確認と飛鳥さんの逃走する時間も考えて考慮しました。 私に抜かりはありませんよ?」

鬼原「ぐっ………………」

奥歯を噛み締めている鬼原に彩夏は、銃口を鬼原の脇腹に向けた。

彩夏「膝をついて両手を後ろに! 言っとくけど、私の拳銃の腕前は本部の中でもトップクラスよ、外すなんて馬鹿な考えをするんじゃないわよ」

夜城「さあ、チェックメイトです」

二人の言葉で鬼原の完全敗北は、決定付けられたと思われた。 しかし__

鬼原が右腕に何かを隠し持っているのを彩夏は気づいた。

彩夏「何を隠し持っているの? 見せなさい」

彩夏の威圧的な言葉を気にせず、携帯を彩夏達に見せた。

鬼原「いいですよ、ほら」

それには、こんなことが書かれていた。



ちょいとしくじった、だがまだ大丈夫だ。 予定通り《ツクヨミ》の覚醒に移れ。



夜城「………、何ですかこれ?」

夜城と彩夏は、互いに首をかしげた。 そこに笑いながら鬼原が話しかけてくる。

鬼原「名探偵さん、そして刑事さん、あなた方のために一つアドバイスを送りましょう」

夜城&彩夏「「………………?」」

しばらくした後、衝撃的な言葉が鬼原の口から出てきた。


鬼原「《あの娘を今すぐに殺しなさい。 でないと未曾有の大虐殺が起こりますよ》」

夜城「はぁ?」

夜城は見るからにマヌケそうな表情で鬼原を見ていたが、彩夏は真に受けたのか足が震えていた

彩夏 (何故だろう、この鬼原という人の言っていることがまるで本当の未来の暗示みたいに聞こえる………)

彩夏は拳銃を構えたまま一方前に歩んだ。

彩夏「夜城、下がっていなさい。 一体どういうこと?! ちゃんと説明しなさい!」

鬼原は、彩夏の言葉を全く聞かず言葉を続けた。

鬼原「今はまだ間に合うかもしれませんよ? とは言っても、もう《二つ程予備はありますがね》」

あまりのスルーっぷりに彩夏の中の何かがキレた。

彩夏「だから、ちゃんと説明しなさい! 予備って何? 飛鳥ちゃん以外にもまだ被害者がいるの?」

鬼原「クックック、まぁ、待ってますよ。 あの方と共にねェェっ!!」

その言葉を言い終えた瞬間、鬼原の背中から何かが飛び出してきた。 それは、彩夏たち目掛けて勢いよく飛んでいった。 夜城はそれに気付き、彩夏の元へ駆け寄ろうとした。

彩夏「危ない!! 彩夏さん!!!」

夜城「えっ?」


ズサッ!


何かが突き刺さる音だけが職員室という空間を埋め尽くしていた。



10


小屋の中では現在、二人の人間の戦闘が行われていた。

男の振り下ろした中華包丁を深夜は、最小限の動きで回避し、手首を捻り脇腹に鉄パイプを叩きつけた。

男「がはぁぁぁっ!!」

男は、口から血を吐き出しその場に一瞬うずくまったがすぐに立ち上がり包丁を横にして、凪ぎ払った。

男「うがぁぁぁ!!!」

深夜 (理性を失っているのか、それとも落ち着きがないのか……いずれにしても動きのモーションがかなり大振りだな。 避けることなんか楽勝っ!)

そう頭の中で考えた深夜は、地面を蹴って後ろに跳び包丁を危なげなく回避した。

深夜「当たらんな………どうした? そんなもんか?」

男「な、ナメンじゃねェーーぞォォ!!」

深夜の挑発的な口調に男は再び激昂した。 それを見ても深夜はまだ冷静さを保ってた。

深夜「…………、そうかなら次はこちらから行くぞ」

そう宣言し、深夜は前に飛び出した。 男は、それを見てニヤリと笑い包丁を前に突き出し深夜を刺すモーションをとった。

男「甘えぇぇのはテめぇなんだよバケモノがァァ!!」

そう怒鳴り、包丁を深夜目掛けて突き出した。 その言葉に対し、深夜は静かに冷淡に言った。

深夜「バケモノは、お前だ。 どんなことがあったかは知らんが狂気に落ち、自我を完全に失っていることにすら気づかないのか」

男「黙ァァれェェェ!! そして、死ネェェェ!!!」

男の突き出された包丁を深夜は手に持っていた鉄パイプを使い、鉄パイプに包丁が刺さる形で受け止めた。

男「?!」

ガキンという金属と金属がぶぶつかる激しい音がして男は、後ろによろめいた。 その隙を突き深夜は、鉄パイプを捨て、男の後ろに回り込み首を右腕を使い、締め上げた。

男「あ……、が………ぎ、ガガガァァ………」

男は、気道を徐々に圧迫されていき意識が遠退いていくのを感じた。

深夜「怪我人に手を出すのは、嫌だったがこの場合は仕方ないよな。 悪いがしばらく眠っていてくれ」

深夜は、気絶寸前の男に話し掛け、腕の力を込めた。

男「うゥ、こ…の……ヒトゴロ………しぃがぁぁ……」

男は、そう言って意識を失った。 深夜は、倒れた男を見て一人こう呟いた。

深夜「人聞きの悪いこと言うな………」

そう言った後、携帯で救急車と警察の手配を済ませた。 そして、待機している間、小山と藤谷の手当てをした。

深夜 (素人の応急手当てだがこれで持つだろう)

ちなみに男の方は小屋にあったボロボロのカーテンを使い、丸めて身動きをとれないようにしていた。

深夜 (さてと、怪我人はこれでよし。 あとは………、?)

深夜は、ふと何かの足音が聞こえたような気がした。 それは気のせいではなく小屋の方に向かって来ていた。

深夜 (警察の応援部隊か? いや、それにしては、足音が一つしかないな………)

小屋の電気を消して、割れた窓から外のようすをうかがった。 そして、深夜の視界にうすぼんやりと影が見えた。

深夜 「?! まさか、あいつは!!」

曖昧な像だったが、深夜の記憶を呼び起こすには、十分なものだったらしくそれを見た深夜は小屋を飛び出し《それ》を追おうとした。 だが、その場にいたはずの《それ》は姿を消していた。 ただ、雨の音だけが森の中に静かに聞こえた。

深夜 (消えた……? だが、見間違いでない。 でも、あいつは確かに俺が………)

深夜は一人思考を巡らせていたが結局結論は出てこなかった。

深夜 (考えても仕方がない、一旦小屋に戻ろう。 何かまだ置いてあるものがあるかもしれないな)


深夜が小屋へ戻っていく姿を《それ》は、見ていた。《それ》は深夜の後ろ姿を見て悲しそうに口を歪ませてその場を立ち去っていった。




11


彩夏「………………………、な…んなの……、今のは?」

彩夏の全身に真っ赤な鮮血が飛び散っていた。 次第に近づくパトカーのサイレンが鳴る中で鬼原はただ笑いながらこう言った。

鬼原「クッククッククッ、な~に、ただ単純なあなたのようなトリックですよ。 探・偵・さん。 最もあなたは推理、私は手品ですがね。 それでは、私はこれで」

誰も鬼原を追うものはいなかった。 彩夏は、身体を震わせているだけで身動き一つとれない状態でいたからだ。 なぜなら_____


彼女の視線の先には、頭から大量の血を流して倒れている夜城がいたからだ。


彩夏「そんな、私を庇って……… 嘘だよね? 夜城?」

つい先程まで、会話を交わしていた人物からの答えはない。 ただ静寂だけがそこにはあった。


彩夏「夜城ぉぉぉぉぉ!!!!!」



to be contenued next episode

どーも、竜崎です。


この作品を書き始めてから、早2ヶ月が過ぎました。 皆さんどうお過ごしでしょうか?


まずは、お詫びから、第二話その1からその2までの投稿のペースが遅れてしまい誠に申し訳ございません。 こちらにも用事が多数ありまして………………。


というわけなので、今後も不定期に連載が遅れる可能性が出てくると思いますので、その伝は、よろしくお願いします。


さて、次回はメンバーが集まるところからのスタートです。 夜城は、果たして無事なのか、鬼原の謎の言葉とは、そして飛鳥になにが? 第三話は、なるべく来週の月曜までに投稿出きるよう努力します!!


最後にこの作品を評価してくださった人ありがとうごさいます。 こんな拙い作品ですがどうぞ暇なときにでもご一興下さい。 では、また来週~( ・ω・)ノ

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