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四重奏カタルシス  作者: 竜矢 崎森
第壱章 四人の探索者
6/23

第五話:探し物

始めに、作者から一言


投稿遅れて本っっ当ぉぉぁにすんませんしたぁぁぁ!!m(_ _;m)三(m;_ _)m




夜城 (………、さてどう仕掛けていきましょうか)

夜城は、ゲストルームにて一人考えを巡らせていた。

夜城 (飛鳥さんが調べ終えるまでの間に時間稼ぎそして何か決定的なものを見つけなければならない。 そのためには………)

彩夏 「ちょっと夜城」

思考を巡らせている夜城に彩夏がそっと耳打ちをした。

夜城 「何でしょうか? 彩夏さん」

彩夏 「どういうつもりなの? 飛鳥ちゃんを一人にしちゃまずいって言ったのはアンタでしょ。 一体なんてあの子に伝えたの?」

表情を強ばらせながら質問してくる彩夏に対し、夜城は済ました顔で言った。

夜城 「いえ、こっそりと彼のことについての調べてもらおうと思っていまして、職員室とかを調べてもらってます」

彩夏は、夜城に目配せでこう伝えた。 その顔は、呆れているようにも見えた。

彩夏 (それ違法捜査! バレたら私もアンタも始末書程度じゃ済まないわよ)

夜城は、何も答えず口の端を吊り上げ笑みを浮かべながら彩夏を見た。 彩夏は大きな溜め息をついた。

彩夏 (全く……しょうがないからノってあげる)

彩夏はそう目配せてから鬼原の方に話を振った。

彩夏 「えっと、少し脱線しましたが話を戻してもよろしいですか?」

鬼原 「ああ、はい」

鬼原の返事を聞くなり夜城は早速質問を投げ掛けた。

夜城 「そういえば、この部屋まであなたと警備員の二人しかいませんが、他の方々はどこにいるのですか?」

鬼原 「さあ?」

鬼原の首をかしげる様子を見ながら夜城はもう一度問いた。

夜城 「わからないんですか。 本当に?」

鬼原 「…………」

無言で頷く鬼原を見て、夜城はお茶を飲みながら考えを巡らせた。

夜城 (他の同僚達がどこにいるのかが分からないとは、また随分と怪しさが増しましたね。ですが、言いがかりはいくらでも言える。 この事で攻めるのは得策ではありませんね。 では、次は………)

夜城はコップをテーブルの上に置いた後、足を組ながら尋ねた。

夜城 「あの、警備員の人も呼んでもらえませんか? 彼とも念のため話をしたいので」

夜城の頼みに鬼原はあっさりと受け入れ、携帯を取り出した。 それから少し経った後、携帯をしまい、夜城たちに言った。

鬼原 「後、もう一回りしたらそっちへ向かいますと言ってました」

夜城 「そうですか。 では、もう少しあなたに聞きたいことがあるのですが」

そう言いながら夜城はポケットからある物を取り出し、テーブルの上に置いた。

鬼原 「何でしょうか? 写真?」

夜城 「事件の現場から出てきた物です。 何か心当たりはありませんか?」

その写真を見て、鬼原よりも先に彩夏が反応した。

彩夏 「えっ? 何でアンタがこの写真持ってんの?」

夜城は彩夏の方を見ずに腕を後ろに回して答えた。

夜城 「ここに来る前にちょっくら鑑識から失敬しました」

彩夏 「アンタ、警察署出入り禁止になっても知らないわよ………」

半目でじっと見つめる彩夏に再びキメ笑いをした夜城は鬼原の方に視線を戻した。

鬼原 「………………」

じっと黙る鬼原の表情を眺めてた夜城は、鬼原の顔に初めて変化が出ていることに気付いた。

夜城 「えっと見覚えありませんか?」

夜城は鬼原の顔をじっと見ながら質問した。 鬼原は辛うじて感情を抑えているような表情で答えた。

鬼原 「いえ、ありませんね。」

夜城 「そうですか……では少し気になったことをもう一つ、最近洋服のボタンを無くしたこととかありますか?」

鬼原はキョトンとした顔になり、その質問に対し疑問を問い掛けた。

鬼原 「最近はありませんが、でもボタンなんてしょっちゅう外れたりするものじゃないですか?」

夜城 「いえ、何でもありません。 忘れて下さい」

夜城 (写真のときは、あんなに緊迫していたのにボタンの話になったとたん元に戻った。 たかがボタンのことだから気にしていない? いや、それだと……となるとやはり…)

夜城は、普通のボリュームで彩夏に話し掛けた。

夜城 「彩夏さん一旦場所を移りませんか?」

その言葉に彩夏は唖然としていた。

夜城 「よろしいですか?」

鬼原にも提案したが、すぐに『わかりました』と了承した。 彩夏は、夜城の肩を引っ張り耳元で小声で話した。

彩夏 「この部屋を出ちゃったら、飛鳥ちゃんと入れ違いになるんじゃない? 第一にさっき呼んだ人は?」

夜城は相変わらずのポーカーフェイスで答えた。

夜城 「その心配はありません。 ていうか、呼んだ人はここには絶対来ないでしょう。 とりあえず、場所を移動しましょう」

そう言い、夜城と彩夏、そして鬼原は廊下に出てどことなく歩き出した。


しばらく歩いていると鬼原が夜城に質問をしてきた。

鬼原 「あの、刑事さん? どこへ向かっているのですか? それとさっきから落ち着きなく辺りを見回してますし」

夜城 (ここまでですね。 大体2、3分くらいか、良いでしょう)

夜城は後ろを向かずそのまま前を向いたままで話した。

夜城 「いいえ、ある場所を探していたんです。 それで地図があったのでそれに沿って目指していたのです」

鬼原 「その場所とは?」

鬼原の言葉に夜城はしばらく沈黙し、口を開いた。

夜城「…………《職員室》です。」

鬼原 「えっ?」

彩夏 (えっ?)

夜城の言葉に彩夏は、仰天した。

彩夏 (職員室っていったら、飛鳥ちゃんが調べものをしているところじゃない!!)

鬼原は彩夏とはまた違う方向で驚いた。

鬼原 「職員室ってここから全く真逆の場所じゃないですか! 方向音痴もいいとこですよ!」

夜城 「あれ? おかしいですね…… どこでしたっけ?」

舌を出しながら言う夜城に鬼原は呆れながら今来た方の逆の方向を指差した。

夜城 「すみません。うっかりしてました」

そう夜城も頭をかきながら鬼原の後に付いていった。

彩夏 (一体何か考えてるの? 夜城は………?)

彩夏は、そう考えながら後に続いていった。





一方で深夜たち三人は山の中を駆けていた。 そしてしばらくすると、深夜の見覚えのある場所に着いた。

深夜 「ここは……」

いつの間にか飛鳥と初めに会った小屋に辿り着いていたようだ。 小屋は、昨日のままとほぼ同じ状態でいた。 だが、小屋のドアは昨日見たときとは違い、半開きになっていた。 そしてドアの取っ手には血がついていた。

小山 「この血まだ乾いていない………」

小山の言葉に藤谷は少し怯えた口調で話した。

藤谷 「おい。 ってことはこの中に誰かいるのか?」

小山「とにかく、この血の量は尋常じゃないな。 もし怪我をしているなら、一刻も早く病院へ連れて行ったほうが良いな。 深夜さんは念のため後ろに下がっていてください」

小山の言葉を聞き、深夜はそっと後ろに下がった。 それを確認すると小山はゆっくりと扉を開けた。

小山 「………中は真っ暗でなにも見えないな。 深夜さん明かりってどこにあるかご存じですか?」

小山の問いに深夜は『入り口から少し左にいったところにスイッチがありますよ』と言った。

小山 「うーん、見えないな。 しょうがない手探りで………」

次の瞬間、突然スコーンという軽快な音が響いた、藤谷と深夜は音の発生源を探そうと見渡したがそれらしいものはなかった。 だが、その直後悲鳴が小屋周辺に響いた。

小山 「うっ、うわぁぁぁぁぁ!!」

藤谷 「お、小山?! な、何があった?!」

藤谷は、暗闇の中を目を凝らし見渡したが何も見えない。 しかし、深夜にはうっすらと暗闇の中に銀色に光る何かが見えた。

深夜 「藤谷さん、危ないっ!!」

藤谷 「えっ? 一体な………」

その言葉を言い終わらないうちに藤谷の頬を何かがかすった。

藤谷 「痛っ! なんだ?!」

そう言い、藤谷は小屋の外へ飛び出そうとした。 が突如その視界が真っ白になった。

藤谷 「うわっ!!」

深夜 「なんだ? 何が起きているんだ!!」

深夜と藤谷は、必死に目を凝らして小屋の様子を見た。

小屋の中はメチャメチャに破壊し尽くされて見るに無惨だった。 だが、そんなものよりも目を見張るものが二人の視線の先にあった。

それは、小山の状態だった。 顔は、大量の切り傷があり、まるで熟しすぎたイチゴのようになっていた。 彼は、顔を両手で覆おうとしたが、覆おう為の右腕がなかった。

彼の右腕はすっぱりと骨まで切られていた

そして、もう一つは小屋の中央に立っている一人の男だった。

彼の顔は、小山とは違い、血ではなく涙とよだれでグショグショになっていた。 ただ、彼も同じく欠損している部位があった。

それは腹だった。 腹のど真ん中にドデカイ穴がぽっかりと空いていてた。

そして、左手には巨大な中華包丁が握られていた。 おそらく先程の音は小山の右腕を断ち切った時の音であろう。

深夜 「小山さん!!」

深夜は、ずたぼろになっている小山の元へ駆け寄った。 右腕が切断されていたが、出血は大したことはなく、すぐに病院へ連れていけば大丈夫そうだった。

深夜「藤谷さん。 一先ず戻りましょう!!」

しかし、深夜の言葉は藤谷の耳には入らなかった。 彼は男の顔を見てただ震えていた。 そして震えながらも彼はこう言った。

藤谷 「こ、コイツ。 れ、れ、例の連続殺人犯じゃないか。 な、何でこんな所に……」

深夜は、小山をそっと床に寝かせて男に近づいて話し掛けた。

深夜 「おい、アンタが小山さんをやったのか?」

表情は普通だったが、声には僅かに凄みがあった。 男は、深夜の言葉が聞こえていないのか何やら一人でぶつぶつ呟いていた。

その様子を不審に思った藤谷は男の肩を掴み揺さぶった。

藤谷 「おい!! 聞いているのか! お前がやったのか聞いているん………」

男 「うわぁぁぁぁ!! く、来るなぁぁ!!」

突如、男は大声をあげ闇雲に包丁を振り回し、藤谷の横腹に当たりそこから血が流れていた。

藤谷 「がはっ!」

藤谷は痛みによるショックで気絶しかけたが辛うじて重症に至らなかった。

男 「お、お前らもアイツと同じく俺を殺しに来たのか?」

深夜 「はぁ? 何をいってるんだ?」

しかし、深夜の言葉は男の激昂でかき消された。

男 「きっとそうだ!! お前らもあのバケモノと同じようにその姿で俺を騙しているはず、いいや! そうに違いないんだなぁぁぁ!!」

そう叫んだ後、男は突然項垂れて動かずにだらっと突っ立っていた。

深夜「バケモノってなんだ? 俺を騙しているってのも一体?!」

(?) 「………………、キヒッ。」

深夜 「? 何か言ったか?」

謎の奇声は、確かに男の方からした。 だが、依然として男は、突っ立っているだけだった。 そして緊迫した空気がしばらく続いた。 すると、男は突然笑い始めたのだった。

男 「くくくくくくくく、コキキキカ、くははハハハハハハハハ!!」

「「?!」」

男の豹変ぶりに深夜と藤谷は驚き、ただ男を見つめているだけだった。

男 「人間が恐怖で怯えているときどうしたらそれをぬぐい去ることができると思う? なぁ、わかるか? わかるか? ワ、カル、カナァ? それはぁぁ………」

いきなり自問をし始めた男は深夜たちの方を向きニヤリと不気味な笑みを浮かべこう叫んだ。

男 「目の前のバケモノをブチコロガスことだよなァァ。 ギャハハハ!!」

そう発狂した男は、飛び上がり倒れている小山の喉元に躊躇わずに中華包丁を突き立てた。

が、包丁は小山の首のすぐ隣に突き刺さり小山は致命傷に至らなかった。

藤谷 「こいつっ! 小山から離れろ!!」

藤谷は、拳銃を構え男の右腕目掛けて発砲した。 弾は、男の右腕に当たり貫通し壁に突き刺さった。 だが、男は撃たれたところも気にせずに藤谷の方に走り飛び付いた。 そしてすかさず拳銃を奪い取り零距離で藤谷の腹部に何度も発砲した。

藤谷 「あっ………、あああああっっ!!」

男 「ギャッハハハハハハハ!! 死ね死ね死ねシネシネシネシネェェ!!! 俺をこんな目に遭わせた報いってやつだよぉ!! バケモノがぁぁぁ!!」

藤谷は、床に崩れ悶絶してその後、痛みで気絶してしまった。 深夜は、男の様子をただ見ていることしかできなかった。

深夜 (コイツ、すでに正気じゃない!! 言葉もまともでもなく、何か俺達を別の何かと認識してる。 このままだと俺も同じように……だがこのまま二人を放っておくわけにも………)

深夜は、少しの間動かなかったが壁にもたれかかっている鉄の棒を見て小さく呟いた。

深夜 「………、仕方ない。」

男がまだ気絶している藤谷を眺めている合間に、深夜はすかさず小屋の中にあった鉄の棒を握り、男に向けて構えた。

男 「あぁぁん? まだ、いやがったか………。 このバケモノがぁ………」

男はそう言い、落ちている中華包丁を右手で握りゆらりと深夜を見た。

深夜 (全く、何でこんなことに………)

深夜はやれやれと言わんばかりの顔でため息をついた。

深夜 (こんなのは、初め………いや、二回目か)

男と対峙している深夜は、何となく落ち着いて見えた。 そして、男は深夜へ目掛けて飛び出した。





一方、飛鳥は………

飛鳥 「うーん、なかなか見つかんないなー」

鬼原の机の引き出しの中を探しているが、見つかるのは成績表や問題集ばかりで逆にあさっている飛鳥がダメージを受けるようなものしか出てきてない。(主に精神的に)

飛鳥 「やっぱり鬼原先生は、違う気がするな~? 結局、教員の出席簿も先生参加していたし………」

何てことをぶつくさ言っていると、飛鳥はあるものを見つけた。

飛鳥 「あっ!! こ、これは!!」

飛鳥は見つけた物を天井向けて掲げた。

飛鳥 「来週にやると言われていた抜き打ちテスト&その回答じゃないですかーー!! ラッキー♪」

なにやら説明口調ぽいことを言っていたら、プリントの中から小さな紙が複数落ちた。

飛鳥 「ん? なんだろー、これ?」

飛鳥は、二種類の物を見つけた。

一つは、地図であった。 この学校を中心として遠く離れた所に幾つか赤丸がつけられていた。それらの赤丸から一つ見覚えがある場所があった。それは、飛鳥が監禁されていた山小屋であった。

もう一つは、深夜が山小屋から持っていったものとは違う白い粉が入った小瓶を3つほど見つけた。

深夜 (昨日の夜城さんの状況整理の時にも似たような地図を見たからしっかり覚えている。 そして、この瓶も怪しさMAXだし…… ってことはやっぱり………)

飛鳥は地図とその他の紙をポケットに入れ、夜城のメッセージを思い出した。


夜城 『探し物が見つかったら、それを封筒に入れて鬼原さんの机の下に置いてください。 職員室ですから必ず封筒くらいは、あるでしょう。 ですが、複数見つかった場合のみだけ、一つはあなたが所持していてください』



飛鳥はその言葉を思い出しながら鬼原の机を漁った。

飛鳥 「えっと……あったあった。 後は、下に置いてっと」

飛鳥は、指示通りに動き、小瓶と地図を一つずつポケットに入れた。

飛鳥 (よしっ、後は………)

そう飛鳥が思った瞬間、ガチャガチャと職員室のドアが開く音がした。

飛鳥 「?!」

飛鳥は、その音に驚きその場で固まって動けなかった。

飛鳥 (ど、ど、どぉしよーーー!! あっ、でも鍵を開けられるなら彩夏さんたちかもしれないし、別の先生かもしれないし、ここにいても大丈………)


夜城 『決して誰にも見つからずに行動してください』


ふと、そう思った飛鳥の頭のなかに夜城の言葉が再びよみがえった。

飛鳥 (やっぱりダメだ、どこかに隠れないと………)


飛鳥は、辺りを見回して隠れ場所を探し、錠の掛かっていないロッカーを見つけた。 しかも運の良いことに中には何も入っていない。

飛鳥 (よしっ、ここなら………)

そう思い、ロッカーへ向かおうとしたが、何かにつまずき物音をたててしまいガタンという音が部屋中に響き渡った。

飛鳥はその音に反応し、慌ててロッカーの中へ飛び込んだ。 そして中に入りロッカーの扉を閉めた瞬間、職員室のドアが開けられた。

声の数からして部屋の中に2~3人の人が入って来たようだった。 その三人の人物は、部屋を歩き回りながら会話をし始めた。

したっぱA 「しっかし、どこにもいねぇなあの女子高生」

一人が気だるそうな口調で喋ったのに対し、入り口付近にいる男がこう答えた。

したっぱB 「他に行きそうな場所は、ここしかねぇってお前さっき言っていたじゃねーか!!」

ひどく焦っている様子でその言葉の後、別の男が怒鳴り返した。

警備員 「うるせぇな!! そんなこと言ったってお前らだって何も思い付かなかったじゃねーか!!」

飛鳥には、その声に聞き覚えがあった。 それは、校内を案内した警備員の声だった。

すると、気だるそうな口調で話していた男は、二人に提案するように話した。

したっぱA 「とにかく、ここにはいないってことで別のところを探さねぇか?」

警備員 「いや、ちょっと待て」

ふと、警備員が部屋を出ようとしかけた男二人を呼び止めた。

したっぱA 「どうした?」

一人が呼び掛けに答え、警備員が言葉を続けた。

警備員「この部屋に入る前何か物音がしなかったか?」

飛鳥 (げっ………)

したっぱA 「そうか? 俺らは、聞こえなかったが………」

したっぱB 「あぁ、同じく」

二人がそう答えても警備員は腑に落ちなかったようで、部屋の中をもう一度歩き回った。

したっぱB 「おい、そんなことしてる暇はないって言ってんだろ」

怒鳴り返してきた男がつま先を床に叩きながら焦るように言った。

警備員 「なぁ、とりあえずそっちは、並んでるロッカーの中を調べてくれないか」

したっぱA 「わかったよ………」

飛鳥 (や・ば・い)

飛鳥は、焦っていたが動こうとすると物音をたて、三人に気づかれてしまい身動きがとれなかった。

怒鳴り返した男は、焦らす警備員に対し、ひどく腹をたてているようだった。 もう一人の男は、警備員の言葉を聞き、順にロッカーを調べて始めた。

したっぱB 「お前まで………、時間がないだろうよぉ」

部屋を調べ始めた二人を見て、男は怒りのあまり身体が小刻みに震えていた。

飛鳥 (ど、どうしよう。 このままだと本当に………)

飛鳥が入っているロッカーは、男が調べ始めたところの左隣から八番の所にあった。

ガチャン、ガチャンと次々にロッカーを調べる音が近づいてくる。 その迫りくる瞬間の中、飛鳥は、ただ動かないという選択肢のみを強いられていた。

そして、隣のロッカーが調べ終えてしまった時、部屋を調べずにただ立ち尽くしていた男がロッカーを調べていた男の前に立ち塞がり、飛鳥の入っているロッカーを思いっきり殴り付けて激昂した。

したっぱB 「いい加減にしろよ!! お前ら、ここまで探していねえならきっと別の所にいるんじゃねぇかと考えられないのか!! すっとこどっこい共!!」

男の怒鳴り声に残りの二人は、なにも言えずに無言でいた。 しばらくすると警備員が口を開き謝罪をした。

警備員 「す、すまねぇ。 こっちもアテが外れまくって癪だったからつい……」

申し訳なさそうにしている警備員にもう一人の男が話し掛けた。

したっぱA「おい、お前の携帯鳴ってるぞ。」

その言葉に警備員は反応し、携帯を開いた。 それを見終えたあと二人にこう言った。

したっぱA 「鬼原さんが一旦ゲストルームに来いとよ。 とりあえずいくか」

そう言った後、三人の男たちは、ようやく職員室を後にした。


飛鳥 (………………、ふはぁ~~。 あっぶなかった~~~)

足音が完全に聞こえなくなった後、飛鳥はロッカーの中から物音をたてずにそっと出た。

飛鳥 (今ので寿命10年くらい縮んだ気がするよ~)

そう一息ついた後、飛鳥の中で2つの選択肢が浮かんだ。

飛鳥 (この後は、一体どうするべきだろう。 このままここで待機すべきか、それともここから一刻も早く避難して、警察の人に連絡をいれるべきか……)

しばらく考えた後、飛鳥は学校から避難すべきだと思った。

飛鳥 (もしもの時に、人を呼んでおかないと向こうは、今だけで4人もいるんだから彩夏さんたち二人だと危ないよね)

飛鳥 「よし、そうと決まれば……」

飛鳥は、そう言い先程ポケットに入れた地図と瓶、そしてちゃっかり抜き打ちテストの回答を片手に抱えこっそりと職員室を後にした。





夜城 「はぁっ、それにしても遠いですね。 職員室」

夜城がため息をつきながら鬼原の後に続いていた。 それに鬼原は、呆れながら呟いた。

鬼原 「いや、始めから私に聞けば良かったじゃないですか」

それに続けて彩夏も意外そうな顔で言った。

彩夏 「それにしても、夜城って方向音痴なんだね。 万能な奴かと思っていたけどやっぱ苦手分野とかあんだ」

夜城 「失礼な、私にだって欠点の一つや二つありますよ。」

反目で彩夏を見る夜城に対して鬼原は、なだめるように話した。

鬼原 「まあまあ、誰にだって欠点があるとあるもので………」

夜城 「全く………??」

夜城がふと左の方を向くと、片手に何かを抱えている飛鳥の姿が目に入った。 そして、その光景を見て夜城は心の片隅で安心したが呆れ果てた感情が 先に埋め尽くされた。

夜城 (確かにこのまま学校から出るという考えはナイスですが………何ですか! そのいかにも関係無さそうなプリントの束は!! おまけにメッチャ落としているし………)

飛鳥が通った後には、夜城の見た通り点々とプリントが落ちていた。

夜城 (あの様子だと証拠は見つかったようですが、あの性格何とかなりませんね…)

眉間を人指し指で押さえている夜城に彩夏は問いかけた。

彩夏 「どしたの夜城? ん? てか、なにあの紙の束は?!」

仰天している彩夏を引っ張り夜城は、鬼原の後に黙って付いていった。

鬼原 「? どうかしましたか?」

鬼原の問いかけに夜城は端的にこう答えた。

夜城 「何でもありませんよ、行きましょう………」




飛鳥 「はぁー、やっと外に出られたよー! さてと、まずは交番へ……あるぇ?!」

自分の手元を見た飛鳥は突然、す頓狂な声をあげた。

飛鳥 「ない! プリントの束が一枚も! しかも、先生が言ってた補習プリントも忘れてたし!! うぉぉぉ、やっちまった~」

一瞬また引き返そうかと思ったが、飛鳥は少し項垂れたまま真っ直ぐ交番へ向かって走っていった。

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