第十四話:兆し
登場人物紹介
図盛 翠雨
年齢~11才
性別~女
身長~129cm
体重~22kg
髪の色~群青色に近い黒
職業~学生
家族~父(図盛 八社慈)、それ以外の家族構成については不明
好きなもの~お喋り、父親、親戚の叔父さん
嫌いなもの~争い事、悲しんでいる人
備考~《現在》、東京都に在住
概要~こちらも飛鳥同様、本当に何処にでもいる他人思いの心優しき女の子。 飛鳥とは正反対で大人しく控えめな性格。 ~です。 などといった口調が見られる。 事件に巻き込まれる前は八社慈の友、鬼原とも接点があったとか。
現在、園崎組に深夜共に誘拐されて失踪中。
沖合 将俊
年齢~29才(夜城とタメ)
身長~172cm
体重~59kg
髪の色~黒(長さはやや長め)
家族~両親あり
好きなもの~正義感、ボランティア、寿司(カッパ巻き)
嫌いなもの~不正行為、犯罪
偉業~拳銃の腕は東京都の中でトップ3に入るほどの実力
概要~彩夏の上司であり、階級は警部(ちなみに彩夏は警部補)。 六年前に警察に入り、曲がらない強い心と精進により今の階級に登り詰めた。 部下からの信頼はそれなりにあり、堅物と一部から言われているが本人は全く気にしていない様子。
一ヶ月前、夜城が現れてから何かしろと巻き込まれ、始末書も二回ほど出されている(両方とも彩夏、夜城の違法捜査について)
第十四話 兆し progress
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雨の降り続ける中、彩夏達はどうにか沖との待ち合わせ場所の警察署に到着した。
彩夏「どうやら先輩より早く着いちゃったようね」
夜城「そのようですね、どうします?」
その問いかけにため息をつきながら答えた。
彩夏「そりゃ、待機するしかないでしょ」
夜城「そうですか……」
そう言い、俯いた夜城を見ながら彩夏は先程の事を思い出した。
彩夏「ねえ、夜城」
夜城「はい?」
気力のない返事をする夜城に真剣な表情を向けて質問しようとした。
彩夏「さっきの事なんだけど……」
そこまで言いかけた時、前方から彩夏を呼ぶ声、否、歓喜の叫びが響いた。
?「さーやかちゃぁぁぁん!!」
その声を聞き彩夏は身震いをした。
彩夏「げっ、まさか……」
恐る恐る夜城の後ろを覗きこもうとした瞬間__ 夜城の体が『それ』によって壁に吹き飛ばされた。
夜城「ギャアアァァァ」
悲鳴が響く中、彩夏は目の前の人物によって押し倒された。
彩夏「いてて、郁里先輩何であなたがここにいるんですか?」
郁里「そんなこと言ったってぇ、目の前に彩夏ちゃんがいるなら抱きつかずにはいられないじゃない~」
そう言いながら彩夏の胸元で郁里は頬擦りをしていた。
彩夏「ひゃっ! キャアァァッ!」
その行為に驚き、彩夏は郁里を壁に向かって投げた__その先に夜城がいることも知らずに……
夜城「んごォォォ!」
夜城の謎の悲鳴が響いたところで事態は一時終結した。
夜城「それで彩夏さん、誰なんですか? その人?」
顔に絆創膏を張り付けながら、夜城は郁里に指を指した。
彩夏「ええっとねぇ、この人は先輩の幼馴染みで本部に所属している氷川 郁里先輩よ」
と、郁里に抱きつかれながら彩夏は説明した。
郁里「よーろしくーですぅ」
夜城「は、はぁ……」
気兼ねない返事をしながら彩夏と郁里の二人を交互に見た。 そこから何を察したのか彩夏が慌てて言い出した。
彩夏「言っとくけどあたし、えっと……その気はないからね!」
夜城「何言ってんですか……」
その呆れた顔にホッとしたのか彩夏の表情が和らいだ。 が、言葉はそこで終わりではなかった。
夜城「お二人がそういう関係でも私は差し障りない程度に接していきますから安心してください」
彩夏「わかってねぇ!!」
頭を抱えながら彩夏はシャウトした。
郁里「まぁまぁ彩夏ちゃん、彼氏君もああ言ってんだしこれは公認で良いんじゃない?」
彩夏の頭を撫でながら甘い声で呼び掛けた。
彩夏「なっ! 何を?!」
その狼狽っぷりに指を唇に当てながら彩夏の耳元にこう囁いた。
郁里「だって噂によるとあなた達デキてるって噂があるけど……」
彩夏「ダレトクですか?! それ?」
郁里「えっとね、彩夏ちゃんの下にいる『泣きぼくろ君』」
彩夏「あ…のヤロー」
恥ずかしさと怒りの繰り返しで彩夏の顔は真っ赤だった。 そこに完全に蚊屋の外にいた夜城が郁里に質問した。
夜城「あのレズ先輩……誰ですか? 『泣きぼくろ君』って」
郁里「レズじゃない、百合だもん!!」
彩夏「先輩。 字! 字ぃ気を付けて!!」
彩夏は半目でそう注意した。 (*小説くらいでしかわかりません……)
彩夏「うちの後輩よ後輩」
わりとどうでもよさげに言ったため夜城もそこまでは食い付かなかった。 その時、事務所のドアが開けられた。
沖「なんだ、お前達もう着いていたのか」
彩夏「あっ、先輩」
部屋に入ってきた沖の視線が郁里に向き、ため息をついた。
沖「おい、何でお前がここにいんだ……」
郁里「やっほー沖君!」
沖とは対照的に郁里はかなりハイな感じで呼び掛けた。 その様子を見ていた夜城は彩夏に話しかけた。
夜城「何か郁里さんって飛鳥さんに似てますね」
それに彩夏は同意した。
彩夏「確かに今、気づいたわ」
夜城「あっ、そう言えば沖刑事、ライターとか何か持っていませんか?」
ふと何かに気づいたのか夜城が急に問いかけた。
沖「あ? あるけれど、夜城お前、煙草なんて吸ってたっけ?」
夜城「あなたみたいなヘビースモーカーと一緒にしないでください……」
はぁ、と息を吐いて右手の手のひらを沖に向かって振った。 それを見て、沖はライターを夜城の手に投げた。
彩夏「じゃあ何に使うの?」
郁里に抱きつかれた状態で彩夏が聞いてきた。 そしてそれと一緒にアイコンタクトで『助けてくれ』と訴えてきた。
夜城「まぁ見ててくださいよ」
完全に彩夏のヘルプを無視し、ポケットから白紙のカードを取り出した。
彩夏「あれ? それってさっきの占い師さんからもらったやつ?」
その質問にコクりと頷き、ライターの火をつけた。 そして、その火を__
彩夏&沖「「ストーーッップ!!」」
夜城「わっ!」
突然、真横で叫ばれた拍子にライターとカードを地面に落としてしまった。
夜城「いきなり何すんですか! 危ないじゃないですか!!」
彩夏「それはこっちの台詞じゃー!」
夜城「うわっと」
逆に怒鳴り返されたため少し尻ごんでしまった。 そこに更に畳み掛けるように沖がポンと手を夜城の頭の上に置いた。
沖「夜城、お前は何故火を付けた? そういうお年頃はとっくに過ぎてると思っていたが……」
夜城「いや、何でそう考えんですか…… てか、そんなに凄まないでください色々と怖いです……」
そう言った後、夜城は少し焦げたカードを拾い上げてそれを彩夏達に見せた。
彩夏「これって炙り出し?」
彩夏の疑問に夜城はニヤリと笑って再び炙り出した。
夜城「あの占い師もなかなか粋なことしてくれるじゃないですか。 さっきの予言とやらも所詮あらかじめこうするつもりだったんでしょう」
後半は一人言となっていたが、周りもさして気にしてる様子はなかった。 そして焦げて黒ずんだカードにはこう書かれていた。
『待ち合わせ場所は8月29日の午後5時、あなたと会った近くにある『かもめ』という事務所で待っています。 そこで真実を話しましょう 』
夜城「……………」
彩夏「夜城?」
だんまりとしている夜城を彩夏はしたから覗き込もうとした。 その時、彩夏の携帯が突然震えだした。 確認すると相手は飛鳥からだった。
彩夏 (何かあったのかしら?)
そう考えながら通話ボタンを押した。 すると___
飛鳥『やっと繋がったぁ! あっ、大変な事になっちゃったの!! 彩夏さん!!』
今までに一度でも聞いたことがない緊迫した声に彩夏は硬直した。 だが、すぐに我に帰り言葉を返した。
彩夏「飛鳥ちゃん、何があったの?! とりあえず落ち着いて説明して」
彩夏の焦りが伝わったのか夜城と沖、そして郁里が詰め寄った。
沖「おい! どうした急に__」
彩夏「先輩! 一回黙っててください!!」
沖はその気迫に押されて一歩退いた。 そしてそれとは逆に夜城は近づき、静かに言った。
夜城「彩夏さん、皆さんにも聞こえるようにお願いします」
その頼みにただ小さく頷き、スピーカーのボタンを押した。
飛鳥『実は今___』
飛鳥の声が四人だけではなく事務所全体に響いた。
飛鳥『深夜と翠雨ちゃんが何者かに拐われちゃったの!!』
一同「「「!!!!!」」」
その報告に事情を知らない郁里以外の三人は目を見開いた。 彩夏は心の奥から湧き出てくる言葉を押さえ込んでことに至るまでの流れを聞いた。
飛鳥『実は___』
話が始まった後、皆ただ黙って聞いていた。
飛鳥『ということがあったの……』
話終えた後、沖は身を震わせながら言った。
沖「園崎組と六連合会だと……?」
夜城「知っているんですか?」
夜城の問いに沖は静かに答えた。
沖「ああ、六連合会は世界六ヵ国に存在する超大規模な組織の名前で、世界の選りすぐりのエキスパート共を集め、その戦力で様々な企業を支援して成り立っている。 だが、それによって経営が支えられている企業も全世界の80%を占め、実質今、世界の中心に立っていると言っても過言じゃない__」
沖の説明に彩夏は驚きながら質問した。
彩夏「で、でもそんな噂一度も聞いたことがありませんよ……」
夜城「沖刑事、その話一体誰から聞いた情報ですか?」
二人の問いに沖は額に汗を流しながら首を横に振った。
沖「この話は全世界共通のトップシークレットだから詳しくは話せん…… 俺がどこでその情報を掴んだのかも……」
夜城「………………」
頭を下げた沖を黙って見つめたまま、夜城はまた質問をした。
夜城「それで沖刑事、園崎組とは何ですか? 聞いたところ、どっかのヤクザとかそういう感じの匂いがしてますが……」
沖「園崎組は元々は六連合会の幹部の一人が日本に居住するために作られた場所だ。 そしてその用心棒としてそいつの旧友のヤクザの当主を雇い、そいつらの影響が強かったのかただの仮住まいのはずが、いつの間にかこの地域で最大の組のなった。 が、それから一年もしない内にその幹部、つまり当主とその家族が妻を残して殺され、園崎組は崩壊寸前に追い込まれた。 そこで六連合会は組織としての評判を落とさないために当主の妻、園崎 凰華を強制的に次期当主にして自分達の面子を守り、今に至る。 俺が知ってるのは以上だ」
夜城「そんな大規模な組織と極道が何故、図盛 翠雨さんを狙ったのでしょうか?」
夜城の問いに沖はかぶりを振った。
沖「分からない……… が、今は誘拐さえれている彼女とお前達の仲間の保護が第一だな」
彩夏「そうですね、今はそんなこと考えてる暇は無さそうね……」
その意見に同意した彩夏は夜城を見て、こう言った。
彩夏「でも夜城、アンタは行きなさい」
夜城「えっ?」
意外そうな顔をして夜城は彩夏と沖を交互に見た。 二人は無言で頷き、沖は夜城の肩に手をポンと置いた。
沖「事情が分かったら、説教と一緒に聞かせてもらうからな」
夜城「は、はぁ………」
何とも言えない顔をしている横で郁里が手を上げた。
郁里「ねぇ、保護するのは分かったけど、肝心の二人が何処にいるのか分からなかったら探すのに時間がかかるんじゃ……」
郁里の言葉に夜城は不敵な笑みを浮かべて言った。
夜城「心配ありませんよ。 何せ私達の仲間4人にはGPS付きの携帯を常時持たせているのですから」
そう言った後、夜城は受話器に語りかけた。
夜城「飛鳥さん、深夜さんと図盛 翠雨は二人とも同じ車に乗っていましたか?」
その質問に少しだけ落ち着きを取り戻した飛鳥の声が聞こえてきた。
飛鳥『うん、確かにこの目で見たよ。 それに深夜を最後に見た時、ちゃんとケータイを持っていたし、大丈夫だと思うよ』
夜城「なるほど、分かりました。 沖刑事!」
夜城は一回受話器から手を離し、沖の方を向いた。
沖「何だ?」
夜城「この部署にいる誰かに飛鳥さんの保護をお願いします。 彼女もまだ他の事件の容疑者に狙われている可能性も高いので」
沖は『分かった』と言い、部下に出動命令を出した。 部下の警官達が事務所を出ていく様子を見送り、彩夏は飛鳥に言い聞かせた。
彩夏「飛鳥ちゃん、念のため人の多いところにいてね。 警察が保護しに来るまで決して気を抜かないでね」
飛鳥『分かったよ、彩夏さん達も気を付けてね』
飛鳥がそう言った後、電話は切れた。 彩夏がただ携帯を持ったまま立ち尽くしている間に、夜城は上着を着て、彩夏達を背にして言った。
夜城「それでは、行ってきます」
沖「分かった。 くれぐれも無茶するなよ」
沖の言葉に夜城は後ろを向いたまま親指を立てた。 そして事務所を出ようとした時__
彩夏「夜城!」
不意に彩夏の声が聞こえて、一旦夜城は立ち止まった。 彩夏は何かを言いたそうに口をパクパクさせていたが掛ける言葉が見つかったのかいつものようなハッキリとした口調で呼び掛けた。
彩夏「………気を付けてね」
その言葉に一瞬だけ振り返り彩夏に笑みを見せた。
夜城「ご安心ください。 必ず真実を掴んできます」
そう言い、事務所のドアはパタリと閉められた。
彩夏「先輩__」
残された彩夏と沖は向き合い無言のまま頷いた。 そして沖は事務所に散らばっている警官達に呼び掛けた。
沖「お前達、今から15分後に出動するぞ! 念のため銃も忘れるな!」
そう言い残し、沖も事務所を出た。 恐らくタバコでも吸って気を落ち着けるためだろう。
そして、彩夏はまもなく日が沈む夕方の空を見ながら、小さくだが、確かな声で言った。
彩夏「待っててね、深夜さん、図盛 翠雨ちゃん……!」
はい! 不定期投稿が相次ぐ竜崎でございますっ!
気がつけばもう雪が降り始め、一段と寒くなっています。 実を言うと今月の始めに風邪をひきエライ目に遭いました(笑)
それはさておき、やっと五話ですよっ! 夏に一度トラブルがあったものの飽き性な自分がよくここまで続けられているなぁとしみじみ感じます。
そして次話は来週からテスト期間に入るのでまたしばらく空くと思います。すみません!(≡人≡;)
そして、新作情報です。
近日にあの東方projectの二次創作を書くことにしました。 ですが、あまり詳しくは知らないにわかの可能性があるので『ふざけんな!』って方は読まない方がおすすめです。
では次回予告↓
深夜、翠雨救出のため動き始める彩夏達__ 飛鳥がいなくなった一瞬に何が起きたのか?
そして、夜城は占い師と真相に迫る対談を行う……
第五話 その2 12月初旬投稿予定!(?)