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四重奏カタルシス  作者: 竜矢 崎森
第弐章 予兆を告げる雫
15/23

第十三話:急変

9


雨も止み、太陽が雲から顔を出した昼過ぎの路上にてヤクザは深夜に事の大まかな所を話した。

深夜「六連合会シェイフォース? 」

全く聞きなれない言葉に首を傾げながらも再びヤクザに尋ねた。

深夜「それじゃあ、お前らはその組織の用心棒って奴か」

ヤクザ1「ああ、俺達はそいつらに頼まれた『図盛 翠雨を拐って来い』ってな」

まだ余裕のありそうな表情で答えているヤクザに三度(みたび)聞いた。

深夜「じゃあもう一つ聞こう。 お前達がさっき言っていた『ヘイズ』って奴は誰だ? 依頼主か?」

ヤクザはそのという言葉を聞き、一瞬身震いしてそこから先は黙ってしまった。

深夜「だんまりか……」

そう息を吐いて、深夜は自分のポケットから携帯を取り出し、番号を打ち出した。 それを見たヤクザは慌てて深夜に問いた。

ヤクザ1「まっ、待て! 何をする気だ?!」

その質問に深夜はしれっと端的に答えた。

深夜「お前が話さないというなら仕方がない。 俺達の仲間にお前らを引き渡し、洗いざらい話すまで監禁しておこうと思ってな」

飛鳥「うわぉ、地味に怖いこと言うね……」

ちょっと驚いた素振りをした飛鳥を他所にヤクザは先程よりも震えていた。

ヤクザ1「そ、それだけは止めてくれ…… そんなこと旦那にバレたら死よりも恐ろしい罰が待っている……」

深夜「ならさっさと話せ、話すこと話したら今回は見逃してやる」

威圧の視線に首肯し、話を続けた。

飛鳥「これじゃあ、どっちが悪党だか分かったもんじゃないね……」

その意見に翠雨も激しく同意した。


男の話したことは以下の通りでだった。


深夜達を襲ったヤクザの元締めは『園崎組』というここらでは有名なカタギの組織だった。

数日前に上の六連合会から命令が入り、遂行しようとしていた。 ちなみにその六連合会からの指令は、組織の組員からではなく『園崎組』頭領、園崎そのざき 凰華おうか直々から下されたものだという。

その後すぐに『園崎組』の大幹部、ヘイズからの指令も混合して『図盛 翠雨、時雨 飛鳥の二人を捕らる』という任務に移り変わった。

なお、ヤクザ達に別の指令を出したヘイズは、数ヵ月前から単独で行方を眩ませているとのことだった。


話を一通り聞いた深夜はヤクザにもう一つ質問を投げ掛けた。


深夜「もう一つ聞かせろ、お前達は鬼原きはら 義純よしずみと何か関わりを持っていないか?」

その質問にヤクザはただ無言のまま首を横に降った。

深夜「そうか…… それじゃあ行けよ」

そう言い、深夜はヤクザに向けていた木刀を下ろした。 その言葉を聞いたもののヤクザはただ呆然と深夜を見つめているだけだった。 深夜は溜め息をついた後、ヤクザから背を向けて飛鳥と翠雨の方を向き、静かに言った。

深夜「よし、行くか」

二人はヤクザ同様に黙って頷き、車へ乗り込んだ。 そしてすぐに三人を乗せた車はそのまま通りへと走り去っていった。


その直後、残されたヤクザの携帯から着信が入った。




10


沖と別れた後、彩夏と夜城は一旦彩夏の部署に戻るため車のもとへ向かっていた。

郵便局を出た後でも雨は未だ降り続けていたため、今二人は同じ傘の中で歩いている。 夜城の方は何食わぬ顔で歩いていたが、彩夏の方は何だか落ち着きがなくて少し距離を置いていた。 そんな様子に気付いたのか夜城は彩夏の方に身を寄せた。

夜城「彩夏さん、何やってるんですか? 体が傘から出てますよ」

彩夏「えっ、あ、そそうね……」

何やら落ち着かない彩夏を見て夜城は一つの結論に辿り着いた。

夜城 (あー、そういや彩夏さんあまり男の方との接点がないに等しい方でしたね。 きっと緊張しているのでしょう)

夜城がそんなことを考えているとまるでその考えを見透かしているかのように彩夏が横から呟いた。

彩夏「一応、アンタの考えていることは間違っちゃいないけど、何か傷ついたわ」

夜城「何で分かったんですか?! 後、何かすみません」

そんなやり取りをしている二人に不意に後ろから声をかけられた。

男「こんな雨の中、随分とお熱いのですね」

その声に二人は思わず飛び上がった。 そして彩夏はすかさず否定をした。

彩夏「いえいえいえ、そんなことありませんよ?」

夜城「語尾が上がってますよ……… ていうかあなた誰ですか?」

男「おっと、いきなり失礼しました。 私こういうものと言います」

夜城の質問に男は礼儀正しく会釈をし、ポケットから名刺を取り出した。

彩夏「占い師?」

彩夏の言葉に占い師は頷き、二人に誘いかけるように言った。

占い師「どうですか? もしお時間がありましたら占ってみませんか? あっ、お代は結構ですので」

彩夏はそんな占いなどそういった類いの話には興味はなかった何故か頷いていた。 それに対し夜城は探りをかける言い方で質問した。

夜城「何故に私達なんです? 占うなら他にもその辺を歩いている人でも良いんじゃないんですか?」

その言い方に占い師は何やら申し訳なさげに腕を頭の後ろに回した。

占い師「いえ、最近誰も占ってなかったので久々に占わないと腕が鈍るんじゃないかと思って」

夜城「いや、鈍るもんなんですか? そういうのって、しかも答えになってないし……」

ちょっと驚きながら夜城はツッコんだがその肩に彩夏の手が置かれた。

彩夏「まぁ、少しくらいならいいんじゃない? 何気にこういうのって初めてなんだよね~」

夜城「ちょっと飛鳥さん化しましたね…… まっ、良いでしょう」

占い師「ありがとうございます」

そう言い、占い師は雨の当たらない場所にテーブルと椅子を用意して二人を座らせた。 そして鞄の中から色々な道具を取り出した。

その道具を取り出している最中、鞄の中から何かが飛び出した。

占い師「あっ!」

占い師は慌てて『それ』を捕まえて再び鞄の中に突っ込んだ。 ちなみにそれの正体はハトだった。

夜城「この人マジシャンの間違いじゃないんですか……」

冷ややかにツッコまれながらも占い師はセッティングを続けた。


占い師「準備ができました。 それではどうぞ」

そう言い占い師は五枚のカードを二人に見せた。

占い師「お二人のうちどちらでも引いて構いません、それがお二人の運命に関わると思います」

彩夏「う、運命ってそんな……」

彩夏がしどろもどろになりながら迷っていると焦れったくなったのか夜城が一枚を抜き取った。

夜城「では、これで」

彩夏「あ、あんたね……」

彩夏は眉をひくつかせながら夜城を睨んだ。 占い師はそれを一瞥するとカードを見た。

占い師「おやおや、これは………」

彩夏「何が出たのですか?」

占い師の言葉に彩夏が詰め寄ったが、占い師はそれを止め、頭を下げた。

占い師「すみませんがお姉さん、彼と二人だけでお話しさせてもらえませんか?」

彩夏「えっ……」

慌てる彩夏に夜城は真顔で言った。

夜城「大丈夫ですよ。 話の内容は後で要約しますんで」

彩夏「わ、わかったわ」

彩夏は二人から少し距離を置くために道の反対側に移動した。


夜城「それで話とは何ですか? っと、その前にカード見せてくれませんか?」

占い師はカードをテーブルの上に置いた。 そのカードには炎の絵柄があった。

占い師「これがあなたのこれからの道を開くものであり、遮る存在となるでしょう。 それがこのカードが暗示するものです」

夜城「話したいことはそれだけですか?」

夜城がそう言うと占い師は首を振って答えた。

占い師「いえ、今のは占いの結果ですよ」

夜城「随分と考えさせられるような結果ですね、そういえば彩夏さんのはないのですか?」

すると占い師はカードを裏にし、カードの表面を指で擦り始めた。 そしたらすぐに真っ黒なカードから白いマークみたいなのが浮き上がった。

夜城「これは……スペードのマーク?」

占い師「はい、彼女は近いうち死またはそれに近いものを負うでしょう」

カードをただじっと見つめる夜城に占い師は人差し指を突きつけた。

占い師「何故、この事を本人に言わないんだと思いましたよね? 答えは簡単です。 例え、彼女がこの事を知ってもどうやろうが抗えないからです」

夜城は顔に汗を浮かべながら挑発的に言った。

夜城「ず、随分と好き勝手言ってくれますね……… いきなり何を言い出すのかと思いきや、そんな非科学的な占いなん

ぞの戯れ言を述べられても困りますよ」

占い師「戯れ言ではございませんよ。 ただ私は色々なことも知り得ているのでカードの暗示と自らの知識を掛け合わせて未来を伝えているのです」

夜城「そんな酷なことを伝えているから客足も延びないのでは? もう少しマシなことを伝えればあなたの仕事にも精が出るでしょうに」

精一杯の皮肉を突き付けても占い師は顔色一つ変えずに話を続けた。

占い師「一応ですが、あなたのことも少しは存じていますよ。 夜城 霊さん、いや」

一旦溜めた後、夜城にだけ聞こえるようにそっと囁いた。


『____さんでしたっけ』


その瞬間、夜城の体に稲妻が走った。

夜城「な……なぜそれをあなたが…………」

驚く夜城に占い師はそっと語りかけた。

占い師「言ったでしょう、あなたのことを『少しは』知っているって」

占い師は固まって全く動かない夜城のポケットに白紙のカードを入れた。 そしてテーブルなどを片付けた後、こう言い残して去っていった。

占い師「そのカードがあなたの未来を変えていくものとなるかもしれませんよ…… では、『月夜の神に思し召しを』」


占い師が居なくなった後も夜城はすぐには動けずにいた。 その様子を遠出で眺めていた彩夏は夜城の元に駆け寄った。

彩夏「何を話していたの? 何だかすごく緊迫した雰囲気が出てたけど……」

夜城「……………、何でもありませんよ。 それじゃあ、改めて沖刑事との待ち合わせ場所に行きましょう」

そう言って、傘もささずに歩道を歩いていった。

彩夏「夜城?」

不思議そうに首を傾げながらも二本の傘を手に持ち、いつもよりずっと頼り気なさそうな背中を追いかけていった。


彩夏達の周りではまだ雨が止む気配はなかった。





11


ヤクザ達との一悶着の後、深夜達は近くのファミレスにて休憩をとっていた。

深夜「あーー、一仕事した後は疲れがどっと押し寄せてくるな~」

椅子に腰掛けて伸びをする深夜に飛鳥は笑いながら指摘した。

飛鳥「何だかすっごくオッサン臭いよ深夜」

深夜「お、俺がオッサン………… まだ22歳なのに……」

飛鳥「あっ、やっぱこの前の件といい気にしてんだそういうこと」

そう言われ撃沈した深夜の向かいにメニュー表を興味深そうに眺める翠雨がいた。

飛鳥「あれ? 翠雨ちゃんってこういうお店来たことないの?」

飛鳥の質問に翠雨は小さな声で答えた。

翠雨「こういうお店……始めて、なので……」

飛鳥「へー、そうなんだ。 じゃあ何でも好きなもの頼んでいいよ~、全部隣にいる『お兄さん』がなんとかしてくれるから」

深夜「おい、なんで最初っから俺が払うことになってんだ……」

深夜は何だか少し嬉しそうにツッコンだ。


それからそれぞれの頼んだものを一通り食べ終えた後、翠雨に起こった出来事を話してもらった。

事の始まりは夜城達が始めに請け負った、怪物襲撃事件とほぼ同じ内容だった。 が、2つ異なる点があった。 それは『襲われたのは怪物にではなく人間に』、そして『被害者は図盛 八社慈 (翠雨の父)だけではなく鬼原 義純の2名だった』というところであった。


深夜「鬼原がその怪物事件とやらの被害者ぁ?!」

深夜と飛鳥は驚きの顔を翠雨に向けた。 翠雨はビクッとその視線に怯えたがこくりと頷いた。

深夜「なるほどその後は?」

翠雨「その後、私は何処かわからない場所に連れてこられて…………」

飛鳥「いやらしいことをされた。 と」

深夜「おい」

間髪いれずに入ってきたボケをそれと同じスピードのツッコミを返してやった。 そこから妙な間が出来たがすぐに話題を戻した。

翠雨「その後、さっきの人達にずっと追いかけられて今に至る感じなのです」

飛鳥「追いかけられてるってどのくらい?」

翠雨「三日……」

深夜「なっ…………」

体を震わせながら答えたものに深夜達も戦慄を覚えた。 それもそうだこのたった10歳の少女が見知らぬ男達に三日三晩追い続けられるなんて並大抵の恐怖じゃないはずだ。 それをこの少女は耐え続けたのだ。

深夜は自分の中で怒りが沸々と煮え上がるのが感じられた。 そして翠雨に頭を下げた。

深夜「すまない……」

翠雨「なんで謝るんですか?」

深夜「俺達がもっと早く見つけてあげたら君が苦しまずにすんだのに……」

しばらく深夜の顔を眺めている内に翠雨の中から突然込み上げてくるものがあった。

翠雨「ふふっ……」

飛鳥「あ! 翠雨ちゃんここに来て始めて笑った!!」

飛鳥のものすごく嬉しそうな声に翠雨もニッコリと笑顔を返した。

翠雨「やっぱりあなたはあの頃と変わらない優しい人なのですね」

深夜「い、いや……そんなことないぞ……」

翠雨「あの人とそっくりです」

最後の言葉はかなり小さな声で言ったため、深夜は聞こえずに首を傾げていたが翠雨は何事もなかったように先程の満面の笑みを向けた。

二人のやり取りに最初は笑顔だった飛鳥の顔が今は少々膨れていた。 そして何かを思い出したのかちょっと意地悪な顔で深夜に質問した。

飛鳥「そ・う・い・え・ば、さっきのヤクザの人達とのやり取りの中で深夜、何かカッコいい事言ってなかったっけ~?」

深夜「なんだその如何にも何か企んでるような顔と話し方は?」

そう言ったが当の本人は口笛を吹きながら『別に~』と誤魔化していた。 ため息をついた後、深夜は先程の『あの言葉』を思い出した。

深夜「あー、あの通りすがりの○○だ。 みたいな奴か? 」

飛鳥「そう! それ!」

翠雨「誰かの言葉ですか?」

深夜は頷いてその出来事について話し出した。

深夜「いつの事か忘れちまったんだが、たまたま出会った旅の人が言ってた言葉だった気がしたんだよな……」

飛鳥「えっ? 忘れちゃったの? そんな大事なこと」

あり得ないをそのまま形にしたような表情な顔をしたが、深夜は然程気にしてない感じで、顎に手を添えながら呟いた。

深夜「実は俺、一部の頃の記憶がないんだ……」

飛鳥「えっ?! そうだったの?」

翠雨「何だかさっきから驚いてばっかりなのです」

翠雨の柔らかいツッコみに飛鳥は困惑しながら答えた。

飛鳥「だって、だって、記憶喪失とかまたなんか主人公に対してありそうな設定じゃん? 深夜ばかりそんな設定が入って来ると主人公かつヒロインの私の立場がなくなるんだよーー!」

じたばたしている飛鳥を他所に話をそのまま続けた。

深夜「5、6年前の記憶だけがないんだ……」

翠雨「その時に何かあったのですか?」

深夜「それは………」


確かに覚えていた。 たった1つだけだが…………

見るにも無惨に荒らされていた我が家、血で汚れされた手、愛する母の血まみれの姿、そして……全ての元凶の……


翠雨「ん……やさん! 深夜さん!」

再びあの出来事に入り浸っていたらしい。 身体中が汗にまみれていた。

深夜「あ、ああ……何もない、よ」

深夜の様子から何かを察したのか飛鳥は自分の携帯を取り出した。

飛鳥「そ、そうだ! 彩夏さん達にも翠雨ちゃんを無事保護したよって伝えた方が良いよね?」

深夜も『あっ!』という顔をした後、飛鳥に親指を立てた。 勿論顔芸付きで。

飛鳥「もう、ええわい……」

呆れた顔を深夜に向けたものの、またもや本人に効果はなかったようで普通の口調で話した。

深夜「でも、店内じゃ携帯電話の通話は禁止って書かれているからな…… どうするか」

飛鳥「それじゃあ、トイレで話してくるよ」

深夜「わかった。 頼んだぞ~」

携帯を持った飛鳥が席を外して、翠雨が聞きずらそうに尋ねた。

翠雨「あの、彩夏さんって?」

深夜「ああ、俺達の仲間の婦警さんだ」

翠雨「婦警?」

始めて聞く言葉に翠雨は首を傾げた。 その仕草がまた可愛らしかったため、深夜は笑みを浮かべたまま説明した。

深夜「女の人の警察官ってことだ」

翠雨「え?」

突如、翠雨の表情が一変した。 顔は真っ青になり、小さな身体を震わせてた。

深夜「ど、どうした?!」

只ならぬ様子に慌てて駆け寄ったが、翠雨に突き飛ばされてしまった。

深夜「いてて、急にどうしたんだよ?」


翠雨「け、警察はダメです!!」


今までとは比べ物にならないほどの声量で翠雨は叫んだ。

深夜「な、何でだ?」

翠雨「それは………」


バンッッッ!!


翠雨が言葉を発する前に店のドアが乱暴に開かれた。




飛鳥「あっれ~? 繋がらないな?」

全く彩夏達に繋がらず携帯と悪戦苦闘していた飛鳥だが遂に諦めてポケットの中にしまい、 鏡に映る自分の姿を見て軽くため息をついた。

飛鳥 (そういや、飛鳥の外見を見ても翠雨ちゃん別に何も質問してなかったな~。 然程珍しくないのかな、飛鳥の髪の色?)

髪を弄りながら翠雨について考えていたら、不意にある違和感に気づいた。

飛鳥 (あれ…… さっき翠雨ちゃん、深夜との会話の時『あの頃』とか言ってたよね? もしかして昔どこかで会ったことがあるのかな……… 後で聞いてみよっと)

そう思い立った途端に__


ドンッ! ドンドンッッ!!


誰かがドアの反対側から思いっきりノックをしてきた。

飛鳥「もー、うるさいな~。 はいはーい! 入ってますけど~! 箱入り(トイレのこと)娘入ってますけど~?!」

そう怒鳴った後、音は止まったがドアの向こう側から悲鳴が聞こえた。

飛鳥「今のって翠雨ちゃんの?」

慌ててトイレから飛び出そうとした矢先、先程とは比べ物にならないほどの轟音がドアの反対側から響き、そのドアからミシリというイヤな音が鳴った。

飛鳥「ゲッ……」

身の危険を察した飛鳥は急いでトイレの窓へとよじ登り、そこから店の裏へと逃げ出した。


裏路地をひたすら逃げ続けながら、もう一度彩夏達と連絡をとろうとしたがまだ繋がらなかった。

飛鳥「うっ、どうしよう…… 電波が悪いのかな?」

少し躊躇いながらも通りへ出ようと決心し、裏路地から抜けた。


その時___


飛鳥は一台の黒塗りの車が横をよぎるのを見た。 そして驚愕の光景を見てしまった。

飛鳥「えっ?」

鼓動が高鳴り、汗が全身から吹き出した。

飛鳥「い、今のって……」

その車の中には目隠しをされている翠雨がいたのだった。 だが、飛鳥が驚いたのは『それ』ではない。

飛鳥「し、深夜………?」


そこにいたのは翠雨よりキツい拘束をされた深夜がいた。


飛鳥「まっ、………」

飛鳥が遠ざかる車に手を伸ばすものの、あっという間に飛鳥の視界から消えてしまった。

飛鳥「一体、何があったの?」

そう問いかけたが、答えるものは当然いる筈がなかった。


再び、雨が降り始め、呆然と立ち尽くす飛鳥の体を濡らしていった。


To be continued NEXT episode……

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