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四重奏カタルシス  作者: 竜矢 崎森
第壱章 四人の探索者
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第一章 エピローグ:新たなセカイ


「う、うーん」

薄暗い部屋の中で飛鳥は目を覚ました。

「ここは? どこ?」

部屋を見渡すとどうやらそこは病室のようだった。 外はまだ夜のようだった。

軽く伸びをした後、喉が乾いていることに気付き病室のテーブルの上にあるペットボトルの水を少し飲んだ。

「とりあえず、一回シャワーでも浴びてスッキリしたあと寝よう。」

廃墟での血まみれていた姿はどうやら拭き取られていたようだったがそれでもまだ気になるところがあったのだろう。 飛鳥は、サンダルを履き病室を一旦出た。




「それにしても何だか一日と言うか一週間くらい動き回った感じがするなー。」

そんなことを言いながら、身体に付いている泡を流した。 そして廃墟でのことを思いだし考えた。

(どうしてあの時飛鳥は撃たれたはずなのに身体には傷一つ無いんだろう。 それにあの例の頭痛あれがまた起きた後からの記憶が何もない………)

「まっ、後のことは彩夏さん達に聞こうっと。」

そう気楽に独り言を呟いた後、しばらくの間シャワーを浴び続けた。


「ふー、サッパリしたー。」

脱衣場には彩夏達が用意したのだろうか飛鳥の着替えも置いてあった。 服を着終わって紙を乾かした後、再び飛鳥に猛烈な眠気が覆い被さってきた。

「よーし、それじゃあ戻ろうかなー。」

飛鳥がそのまま戻ろうとしたが、ふと思い留まって鏡で身だしなみを整えようとした。

そして鏡を覗き込んだ後、自分の姿を見て絶句した。

「え? 誰?」


高校生になってもまだ子供と間違えられそうなくらいの童顔自体にはに変わりはなかった。 だが、その他のところはまるで違っていた。

髪は艶のある黒い色だったはずが、色素を完全に失った白髪とは言えない完全な透明に変わっていた。

目の色も何故か赤よりも更に濃い紅色に染まっていてまるで充血したようであった。


慌てた飛鳥はとっさに自分の服を全て脱ぎ去った。 変化はまだ他にもあった。


左胸の所に小さな六角型の黒い星が付いていた。

それは引っ掻いても取れなくホクロと言うよりはむしろ身体の一部のようになっていた。


「一体何なの? これ? 飛鳥の身体に何が………………。」

驚愕の表情を隠せない状態のままフラフラと病室に戻っていった。





「それで? 状況の方は?」

所在のわからない暗闇の中でで鬼原義純(きはらよしずみ)は部下と連絡を取っていた。

『妹の方は現在警察の保護により迂闊には手を出せそうもありません。』

部下が申し訳なさそうに言ったが鬼原は笑いながら答えた。

「はっはっは、まあそっちの方はあの名探偵さんもいるから今はまだ放っておいてもいいよ。 姉の方は?」

「それが………どうやら車で連れ去っている最中に何者かに連れていかされまして……」

鬼原は目を見開いて軽く驚いたような声を出した。

「へぇ、ってことは 《あのかた》の言った通り他の奴等も動きだしたって訳か。 くっくっく、こりゃまた面白くなりそうだな………」

心の底から愉快そうに笑っている鬼原に部下はおずおずと尋ねた。

「あのー、それでは生け贄の方は………?」

「ふっ、なんのための予備だと思ってんだ。 たったその程度じゃ痛くも何ともないよ好きにやらせとけば良いさ。」

そう言った後、そのまま通話を切って、そっと息を吐いた。

「ふっ、俺としてはやっぱり 《彼女》が最有力候補だと思うな。 くくく、これからが楽しみだ。」

そうして鬼原はそのまま闇の中に消えていった。


「きちんと育てよ、飛鳥くんツクヨミの種と共に………」





「えっ? どういうこと?」

「ですから昨日の晩話した通りです。」

翌日の朝、彩夏と夜城は病室で話し合っていた。

「昨日の廃墟に入る前、《本当に私達と電話で会話してないの?》」

そう言いながら彩夏は携帯の通話履歴を見せた。

「確かにこれは私の番号です。 ですがあの後私は《ある人の病室》にずっといましたから、電話は一切使っていません。 廃墟の近隣の警察署にも事前に連絡をしたんですよね?」

夜城が言葉を止めそこに被せてくるように彩夏が言う。

「そうよ。 でも飛鳥ちゃんを病院に運んだときの事情説明で初めて知ったて言ってのよ……。 一体どういうことなのかしら?」

夜城はお見舞いの品の茶菓子を頬張りながら答えた。

「私の推測だと、連絡を行き来が私達の間ではなく別の道筋を通ったのではないかと。 つまり私達に成り済ましていてかつ高度なハッキング技術を持っているものでないと不可能だと。」

「でもそんなことが出来る奴なんて………、」

「相手の手の内がまだ未知数な、鬼原達の連中の可能性が大でしょう。」

その言葉に彩夏は声を震わせながら言った。

「じゃ、じゃあ私達は今後成り済ましの罠にも気を付けなくちゃいけないの?」

「その心配は要りません。」

夜城はきっぱりと答えた。 それに彩夏はどうしてと尋ねた。

「昨日の彩夏さんとの会話の後アニマに私達との連絡は私達間だけで会話できる回線を用意させました。 後で設定をしますので携帯はそのとき………」

「本当に何でもありね………」

彩夏はハァとため息をつきながら言った。

「後はあの二人が来たら話しましょう。 その時に私が考えたもう一つの対策できるをお話ししましょう」

夜城はそう言ってベットにゴロリと横になった。




コンコン

場所は同じく病院内、飛鳥の病室のドアを深夜はノックした。

「飛鳥、入るぞ。」

深夜の呼び掛けに対し返事は無かったが僅かに物音が聞こえてきた。

一瞬躊躇ったが深夜はドアを開けた。 飛鳥はベッドの上で体育座りの格好になって踞っていた。

「飛鳥…………」

「………………………………」

言葉は返ってこなかったが、その姿は変わり果てた自分の姿を見て欲しくないと語っているようだった。

「今からまた夜城の部屋で作戦会議を行うが一緒に来てくれないか?」

「………………………。」

(流石の飛鳥もショックだったんだろうな。)

深夜がそうしんみり思っていると答えが返ってきた。 その声はいつもとは違う元気の無い声だった。

「どうして? こんなことに成っちゃったのな?」

深夜は飛鳥の頭にポンと手を置いた。 そこから飛鳥の頭を撫でた。

「俺にも彩夏達もわからない。 でもな、一つだけお前に頼みがある。」

「何?」

深夜は笑いながらこう言った。

「しょげてしまうのは分からないことでもないが、もう少し元気を出してくれないかっていうことだよ。」

「そ、それってどういう………」

飛鳥の言葉に深夜はニッと笑ってこう言った。

「まあお前はいつも通りバカやっていれば良いってことさ。」

深夜の言葉に飛鳥は顔を真っ赤にしながら深夜の腰元をポカポカ叩いた。

「それに案外その髪の色悪くないと思うぞ、透明ってのも悪くないかもな。」

「えっ? ほ、本当?」

飛鳥は先程とは違う方向で赤面した。 その様子を見た深夜はパンと手を鳴らして、

「よしっ、元気も出たことだし彩夏さん達の所に行くかっ。」

飛鳥もニッコリ笑いながら腕を天井に掲げながら大声を出した。

「お~~、気合い入れていこ~~!!」

「一応病院内だから静かにな………」

深夜の言葉に飛鳥はハッと気づいたような顔をした。

「すんません……」




そして数分後………

「さてと、これで全員揃いましたね。」

部屋には飛鳥、深夜、彩夏そして夜城の四人がいた。

「では、先程彩夏さんにも話したことをお二人に説明します。」

そう言った後、一連の事柄を二人に説明した。


「へぇー、私達専用の回線とか何処かの組織みたいだねー。」

やたらと興奮している飛鳥に深夜は腕を組ながら言った。

「あのな……そんな呑気なこと言っている場合じゃないんだぞ………。 それで夜城さん、もう一個の対策って何なんだ?」

「えっとですね。 今回の誘拐事件の私達限定の作戦本部を作っておきました 。」

夜城がにへらーと笑いながら答えた。

「ちょっと待って、何処にそんなところ作ったの?」

彩夏の問いに夜城は笑いながら答えた。

「えっとですね、彩夏さんの部署んとこです。」

「えっ?」

彩夏は『意外だ』という表情になった。

「あれ? 彩夏さんって警察署本部で働いているんじゃないんですか?」

深夜の質問に彩夏は夜城を指しながら答えた。

「本来は隣町の部署で働いているんだけど、一ヶ月前にね突然呼び出されてはアイツの監視役かつコンビを組まされてね……」

「へぇー、そうなんだー。 何か嫌そうに言っているわりには夜城さんとのやり取り見てると楽しそうだけど……。」

「別に、嫌って訳じゃぁ、無いわよ。」

飛鳥の言葉に彩夏は顔を少し赤くして答えた。

「ツンデレ彩夏さん (笑)」

「うっさい!」

彩夏はそう言いながら夜城の頭を叩いた。

「痛い……、怪我人には優しくですよ。 彩夏さん………」

夜城は頭をさすりながらそう言った。 彩夏はそれを軽くスルーし視線を夜城から深夜に向けていた。

「そう言えば、深夜さんは良いんですか?」

「何がです?」

「だって、大学やら仕事とかで忙しいんじゃないですか? あんまり時間とか取らせてしまうのも何だか悪い気がするので………」

「あっ、それならアニマの方から話はつけときますよ。 一応捜査に貢献していただいているのでいくらかは給料みたいなのは出しますよ。」

夜城がそう話を持ちかけたが当の深夜は何だか言いづらそうな顔をしながら答えた。

「実はかなり言いずらいのですが大学はもう卒業していて現在は……無職です。」

「無職!!!」

彩夏はそう叫んだ後何故か深夜から一歩身を引いた。 それに気付いたのか深夜は少しがっかりしたように頭を下げた。

「えっとかなり脱線したので戻しますが、その施設は警察署と繋がっているので他の人も入ることが出来ますが、常時アニマ達の監視があるためこちらの情報は一切漏れないようにすることが出来ます。」

「へぇ、結構本格的にやってるわね夜城。」

彩夏が腕を組ながら言うのを聞いた夜城は、

「別に、ただ久しぶりに凝った事件に巡り会わせることが出来たから少し本気を出してるだけですよ。」

夜城はそう不敵そうに笑った。 が、その顔はすぐに深刻そうな表情に変わった。

「最後に飛鳥さんの身体についてなのですが………我々も全力で調べてみましたが異常は何処にもありませんでした。」

その報告に深夜は腕を組ながらこう言った。

「飛鳥は俺と彩夏さんが向かう前に何発か撃たれたと言っていた。 だが俺達が駆けつけた時、飛鳥の身体には傷一つ無かったんだ。」

「?!」

すると夜城の顔色が変わった。 そしてしばらく黙った後こう言った。

「それ、本当ですか?」

「あぁ、俺と彩夏さんそして飛鳥も保証する。」

深夜の言葉に続け、二人も同じく頷いた。

「わかりました………。 それでは、今回は一旦これで解散し三日後にまたここで落ち合いましょう。 私もまた調べたいことが出来たので………」

夜城の言葉に三人とも頷き、そして部屋を出た。


「飛鳥。」

「んー? どうかしたの深夜?」

病院の廊下を歩きながら突然深夜が飛鳥に話しかけた。

「一つ聞きたいんだが………………、《お前、人を殺したことがある記憶ってあるか?》」

「え?」

飛鳥はその言葉に足を止め深夜に向き合った。 深夜の顔は至って真面目だ、ふざけている気配はない。

「無いけれど………、どうしていきなり?」

「………………………………、いや、すまない。 何でもない忘れてくれ。」

深夜はそう言い、飛鳥から視線を反らした。


(一瞬だが、ほんの一瞬だがアイツのことを思い出してしまった。 だが、あれは………………)


『ねぇ深夜、人をて殺した記憶ってある? ………、私は覚えているんだ。 あの時、一体何が起こったのか……。 だからもし今度私が元に戻れなかったらその時は、あなたが私を……………………』


「……しん、………しんや………………深夜!!」

横からいきなり怒鳴られて深夜は驚きのあまり飛び上がった。

「? どうしたのさっきから、ボーッとしたり色々と大丈夫?」

「あ、あぁ一応は………」

飛鳥にじっと横から見られていたが、何とか話題を変えようとこんな提案を飛鳥にした。

「そ、そうだ。 この後彩夏さんと三人でどっか飯でも行かないか? どこでも良いからさ、俺が全部奢るからさ。」

その言葉を聞き、飛鳥の目が先程の作戦本部の話を聞いたときよりも輝いていた。 そして口から少しヨダレも垂れていた。

「行く! はい、行きます行きます!! 何処へでも付いてきますぜアニキ!」

「すごい食いつきよう………………」

その表情に深夜は少し引いてしまった。 すると、背後から猛スピードで何かが接近してきている感覚を感じた。 その正体は、ついさっき別のところに向かったはずの彩夏だった。

彩夏は二人の間に飛び込んで来て、飛鳥の手を握りながら話した。

「話は聞きました! さぁ! 飛鳥ちゃん行くわよ!」

「おーっ!」

「どっから聞いてたんすか!」

深夜のツッコミは二人が全速力で走り去ってしまった為空しく病院内に響くだけだった。 少しだけさっきの発言を撤回して欲しいな~と密かに深夜は思った。

「やれやれ。 ………………………………」

その光景を笑いながら見ていたが、一瞬だけ真剣な表情でこう呟いた。


「また繰り返されてしまうのか? ………………また俺は、あの時にように………」


(まぁ、今は考えないでおこう、だがその時が来たら必ず………)

深夜は右手をぐっと握りしめた後、二人の後を追いかけた。




『夜城、新しい情報が。』

「何ですか、アニマ?」

『どうやら彼が意識を取り戻したようです。 そして、何かメッセージを残した後再び気を失ってしまいました。』

「そうですか、ではそのメッセージとやらを教えて下さい。」

『わかりました。』

アニマは一拍置いた後こう言った。


次は、あの子だ。 頼む、助けてやってくれ、私の娘を、図盛はかもりの子を___



chapter 1 end to be continued next episord

どうも、竜崎です。

いかがでしたでしょうか? 今回で第一章は終了です。読んでわかる通りまだまだ拙い文章構成力ですが、週末に何回かは手直しを加えております。そこからどんどん文の作り方が上手い作家と成っていきたいです。


次回は新章突入です。新しいキャラも出てきます。何かしらと飛鳥のボケも発展させていくつもりです。

てな訳で次回もよろしくお願い致しますー。


ツイッターもよろしくお願いします

L504RYUZAKIと検索すれば出てきます。 フォローしてね(笑)


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