第九話:償い
疾走? 飽き性? ナニソレ美味しいの?
はいぃ、皆さんの言いたいことは、よくわかっております。 空白の二週間申し訳ございませんでしたーm(_ _;m)三(m;_ _)m
詳しくは後程、それでは登場人物紹介からどうぞ………
登場人物紹介
鬼原義純
年齢:31歳
性別:男
身長:174cm
体重:59kg
髪の色:黒
職業:数学教師 (表向き)
家族:不明
好きなもの:囲碁、ウォーキング、海蘊
嫌いなもの:蝶、RPGゲーム、ナマコ
黒歴史:元厨二病患者
概要:時雨飛鳥と同じ学校で勤めている教師、19才からイギリスへ留学。 それ以前の情報は明記されていない秘密が多い人物。
時雨家姉妹誘拐事件の首謀者である可能性があるが、夜城達とであった後、姿を眩ましている。
アニマ
年齢:不明
性別:男
身長:不明
体重:不明
髪の色:銀色 (初老?)
職業:不明
家族:夜城霊?
好きなもの:読書、辛いもの (特にキムチ等)、家事、ハッキング (得意分野)
嫌いなもの:なし
出身地:アメリカ
概要:夜城の保護者的立場である人物。 夜城と同じく色々と謎が多い人物、それらの秘密は、夜城も知らないとか。
常に、コートと帽子をかぶっており素顔は誰も知らない。 変装も得意と言う。
現在は、鬼原義純の捜索&夜城の見張り役 (もとは、彩夏の役目)となっている。
第三話 その3
6
真っ赤に染まった世界。
止むことの無い頭痛。
全身を襲う痛み。
催す吐き気。
周りの自分を見る視線。
そして______、血に濡れた赤い手。
少女が感じ取れたことはこれだけだった。 死か狂気、どちらか区別のつかないものの狭間に落ちながら少女の意識は完全に途絶えた………………。
7
深夜と彩夏は、物陰に身を潜めていた。
「それで、どうします? 彩夏さん。」
「いや、まさか本当に言ったそばからダースで来るなんて思わないわよ普通。」
彩夏は唇を尖らせながら言う。
「一応、敵の管轄内の建物ですからね。」
彩夏は納得がいかないのか頬を膨らませていた。 しかし、その顔はすぐに不安そうな顔に変わった。
「私たちは、ともかく多分飛鳥ちゃんの方にも敵は向かってるよね。」
「はい。 ですが、飛鳥は奴等にとって必要な人間だったはず………。 だからきっと殺される心配は___」
バァァァァン!!!
その時、入り口の方から銃声が聞こえてきた。 そしてそこから微かに苦しそうに呻く嗚咽が深夜の耳に入ってきた。
「!!!」
物陰から飛び出そうとする深夜を彩夏は全力で止め、問いかけた。
「どうしたの?! いきなり、無防備に出ていったらすぐに撃ち殺されちゃうわよ!」
「今、銃声……、そして飛鳥の声が聞こえてきた。」
「えっ………」
彩夏の顔が途端に真っ青に変わる。 深夜は言葉を続けまいかと一瞬考えたが、また口を開いた。
「しかも、それは悲鳴と言うより嗚咽に近かった気がしたんです。 とにかくこんなところで躊躇してる暇はないと思ったんです。」
「でも、こっちも八人くらいの銃を持っている連中と戦うのよ? どうやって、飛鳥ちゃんのところに行けば………」
彩夏の言葉を聞きながら、深夜は考えた。 この状況をいかに打破するのかを。
(人数の多い相手と戦うための術は、いかに相手側に悟られず的の戦力を減らせるかだ……… となれば………)
「彩夏さん、俺に考えがあります。」
深夜は隣にいる彩夏にこっそり耳打ちをした。
「………………、大丈夫なの? その作戦?」
彩夏は不安そうに深夜に尋ねた。 それに深夜は苦い顔をして答えた。
「急繕いの策ですから………。 それにこのまま黙って応援が来るのを待つって訳にも……」
彩夏は深夜の言葉が終わった後、少し悩んだが拳銃の弾を入れ直しスライドを引いた。
「しょうがないわね……、他の方法を考えてる暇もなさそうだし。」
彩夏の準備が整ったのを確認した深夜はもう一度作戦を説明した。
『作戦概要』
現在、相手側は深夜たちを見つけるべく探し回っている。 その中には単独行動をとっているものもいる。 深夜たちが狙うのはそいつだ。
まず、その男が近づいてきたら、彩夏が他の周りには気づかれない程度の小さな音を出す。 音にもし気づいたなら、当然不審に思って彩夏の元に近寄ってくる。 そしてそこを深夜が別方向から武道技で首を腕で絞めて気絶させる。 といったやり方である。
一歩間違えるとまとめて気づかれる可能性もあり、逆に気づかないと作戦自体が行動に移せない。 そして最大のポイントは相手に声を出す暇を与えずに意識を持っていくという方法である。
運の良さと深夜の技術力が試される極めて成功率の低い「策」であり、さらにこの事を八連続成功させねばならないというほぼインポッシブルな内容だった。
確認をしていると、ちょうどそこへ鬼原の部下の一人がやって来た。
「よし、配置にはついてる。 後は………頼むわよ、深夜さん。」
そう祈りながら彩夏はわざと小さな音をたてた。
それから数分の間、深夜の正確かつ俊敏な攻撃が続けられた。 そして、五人目を気絶させようとした時、起こってしまった。 深夜の技が決まる前に五人目の男が大声で叫んでしまった為であったからだ。
「!! おい! こっちだ!」
「やばっ……」
気付かれたことに彩夏は息を飲んだが、深夜はそのまま技を決め、男を気絶させた。
男の身体を床に置いた深夜は彩夏の方に呼び掛けた。
「彩夏さん! ここは俺が引き留めとくんで先にここら辺の警察の人達にに応援をお願いします!」
「なに言ってるの! 一般市民をこんなとこで怪我させるわけにいかないわよ! 深夜さん、その役目はあなたの仕事よ。 だから早く逃げ…………」
深夜を逃がそうと説得している内に、三人の手下達に囲まれてしまった。
その中で銃持ちは一人だけいることに深夜は気づいた。 そして軽く笑った後、彩夏にこう言った。
「それじゃあ代わりに飛鳥の方に行ってやってください。 見たところ大丈夫そうなので。」
深夜の余裕そうな口振りに手下の一人が嘲笑うかのように語りかけた。
「おいおい、正気か、お兄さん? 俺ら三人にたった一人丸腰の男が叶うと思っちゃてんの? それとも、そこの婦警さんにカッコつけようと考えてんのかァ?」
そう言い終わった後、三人は笑い続けていた。
「何なのよ、こいつら。」
彩夏はじっと三人を睨み付けていたが、深夜の次の言葉で場の空気が一瞬にして変わった。
「まあ、ただのチンピラ風情の輩三人にやられるようじゃ、女一人も寄って来ないだろうな。」
「「「………………………」」」
その言葉で相手の三人は一気に黙った。 そして、すぐに一人が深夜に向かって話した。
「テメェ、状況分かって言ってんのか? もう一度聞くがよぉ、たった一人で敵うとでも思ってんのか?」
一つ声のトーンを低くした声で凄まれたが、それに対抗するかのように深夜も顔の色を変え、睨み付けながら重みのある声で言った。
「違うのか?」
「……テメェ、随分とナメたこといっ___」
男が最後まで話す前に深夜は銃を所持している男に飛びかかった。 そしてすかさず背後に回り、方羽絞を決め、あっという間に失神させてしまった。
「さてと………………あと二人。」
深夜が指を鳴らしながら他の二人を見た。
「この野郎っ、」
手下の一人が落ちてる鉄の棒を持ち深夜めがけて殴りっかかったが、降り下ろすとき棒の先を深夜の右手で掴まれてしまったため、それ以上の動作はできなかった。
棒を掴んだ深夜の手は、腕と共に大きく降り下ろし手下の体を前のめりにバランスを崩された。
バランスが崩れがら空きになった手下の腹に左ストレートを喰い込ませた。
「かっは………。」
殴られた手下の体は後ろに吹っ飛び、元の立っていた位置まで戻された。
「俺は自分でも認めているほどの臆病者だ。この技だって好きで使いたい訳じゃない。 この技は、ただ自分の防衛の為に使っている。 だが、今回はその為には使うつもりじゃない。」
深夜は、殴った拳を更に握りしめた。 そして、こう言った。
「一つは たった一人の女の子に対し、大勢でかかっているお前ら全員に対し、姑息だと思ったから、腹をたてたんだ。」
深夜の話に誰も介入することが出来なかった。 しばらく溜めた後、もう一度口を開いた。
「そしてもう一つは、お前達の人の命に対して軽率すぎる言動をずっと喋っていたからだ。 身を潜めている間にもずっと聞こえていた。 人の命ってのはな、お前らクズどもが考えているような軽い存在じゃないんだぞ!!」
深夜の激昂に彩夏までもが気圧されてしまっていた。 気圧された内の一人が怯えに怯えて我を忘れ飛びかった。
「く、クソガァー!」
ところが、それをもう一人の男に取り押さえられた。
「落ち着け、今銃を持っている奴がやられたんだ、俺が引き付けるからその隙に銃を取れ。」
もう一人の男はそう指示を出すと深夜に対峙し、両腕を大きく広げ、抱き締めるかの如く深夜に飛びかかった。 深夜は倒れはしなかったがガッチリと取り押さえられてしまった為、身動きがとりずらくなった
「クソっ、離せ離せっ!」
何とか引き剥がそうとするが深夜の力を持っても引き剥がすのは、容易ではなかった。 その隙に別の男が銃を拾い発砲した。 彩夏目掛けて。
その場で立ち尽くしていた彩夏は、当然気づくことは出来なかった。回転する銃弾が彩夏の衣服に触れる。
「彩夏さん!」
とっさの出来事に深夜は全力で体を彩夏の方に向けたのでその衝撃で組み付いていた手下の身体はガラクタが積まさっている所に飛び、そのままガラクタの下敷きとなり気絶した。
「あ、あ………………っ。」
彩夏を撃った男は自分でも自覚せずに撃ってしまったことに対し、困惑の表情が露となっていた。 そして、そのまま震えながら銃口を自分の頭に当て発砲した。 そしてそのまま崩れ落ちた。 だが、弾は全て撃ち尽くしていたようで頭から血が流れるようなことはなかった。 男は恐らく音によるショックで気絶したであろう。
その一連の出来事はどれも衝撃的ではあったが、深夜の関心は彩夏に向けられていた。
「彩夏さん! 今、手当てを……」
深夜は傷口を調べようと彩夏の上着を脱がせた。
「………? あれ?」
深夜の視線は上着の下に着ているものに向けられた。 銃弾は、確かに命中していた。 防弾チョッキに………
「………………………。」
何とも言えぬ状況に深夜の目が死んだ。 さらにタイミング悪く上着を脱がせた瞬間に彩夏が目を開いてしまった。
「いてて、ってあれ? 深夜さんなにをやっ___。 ナニヲヤッテイルユデスカ?」
目を覚ますと、知人が自分の服を脱がそうとしている最中だった。 なんてシチュエーションは、深夜にとってはどう言い訳できないものであった。
顔中に脂汗を浮かべている深夜の腹部に彩夏のどストレートが直撃したのは彩夏が目を開けてから五秒も経っていなかった。
「まぁ、何はともあれ早く飛鳥ちゃんの所へ急ぎましょう」
未だ赤面している状態で飛鳥は深夜の顔を見ずに話しかけた。
「そ、そうでふね………。」
深夜も半分涙目になりながら立ち上がり、飛鳥の元へ駆け出した。 そして、彩夏もそれに続く。
誰もいない通路に二人の足音だけが響く。
(おかしい……、ついさっきまではこの奥から人の声やらが聞こえていたはずなのにたった一、二分でこんなに静かに………)
深夜はそれが何を意味するのか悪いイメージが瞬間的に思い浮かんでしまった。
「無事でいてくれよ、飛鳥っ!」
長い通路を駆けている内に入り口へと繋がるフロアが見えてきた。 一旦、二人は立ち止まってお互いに頷き合うと再び走り出した。
辿り着いた後、深夜と彩夏の世界が止まった。
フロアの様子はこんな状態だった。
壁は血飛沫で赤く染まり、しきりに滴り落ちていた。 血は床にも広がっていたがそれが見えなくなるほどの数の死体が倒れていた。 それらは、例えるなら床に叩き落とされたトマトのようだった。 それらの中の一部は時々ピクピク痙攣しながら何とか動こうとしていた。
何かに引き裂かれた者、喰いちぎられた者、抉り取られた者、撃たれた者、切り裂かれた者、叩き潰された者___。
そして、そこで呆然と何かに怯えて悶えている者が一人。
最後に死体の山の中央に同じく血にまみれた少女が横たわっていた。
「………………………………………、嘘。」
彩夏の口から出てきた言葉はそれだけだった。
「うっ………………っ。」
あまりの衝撃的過ぎる光景に彩夏はしゃがみ込んで胃の中から込み上げて来るものを何とかして押さえ込んでいた。
「………………………っ。」
深夜はもはや何も口に出さず生き残っている男に詰め寄り、服の襟を乱暴に掴んで問い詰めた。
「おい……、今ここで何が起きたんだ?! 答えろ!!」
「ぁぃぅうぅあ、おぇあぃぉいんぁ………」
その男は別に深夜の怒気にびびっているわけでは無さそうだった。 もっと何か別のものに怯えているようだった。
「なんだって?! 何て言ってる!!」
男は激しく咳き込んだ後、しっかりとした言語で喋りだした。
「ここから、早く逃ぁがしてくれぇ……、でないと俺もあんたらも皆まとめてアイツに………」
「アイツに………? そいつは一体誰だ?」
男は深夜の言葉に答えようと、ゆっくりと腕を上げ指でそれに指そうとした_______が、
バン!
突然の銃撃が男を襲った。 銃弾は頭のど真ん中に命中し身体を小さく震わせた後、息絶えた。
驚きや戸惑いよりも早く深夜は大声を出した。
「誰だ!!」
深夜は辺りを見渡したが誰の姿も捉えられなかった。 そして物陰に潜むための場所もどこにもなかった。
「………………。」
深夜は遠くで倒れている飛鳥を見た。 身体中血で染まっているのが遠くからでもよくわかった。 ぶつけることの出来ない悲しみにただ手を握りしめ、歯を喰い縛ることしか今の深夜には出来なかった。
「飛鳥ちゃん………」
彩夏がそっと飛鳥を抱え上げる。 彩夏の顔は涙で濡れていたが、抱えた瞬間彩夏の表情が驚きの顔に変わった。
「………る」
「え?」
彩夏の呟きに深夜が反応し、顔をそちらに向けた。
「彩夏さん。 い、今何て?」
「飛鳥ちゃん、息まだしてる。 心臓も動いているっ……!」
彩夏が声に出さずに号泣している時、飛鳥の方からも声がした。
「ん………………。」
「飛鳥ちゃん! 飛鳥ちゃん! 私の声聞こえる?」
飛鳥は朦朧とした様子だったがはっきりと彩夏達に聞こえるような声で話した。
「あれ? 彩夏さん…………、どう、したの? そんなに泣いて? 何か起こ___。」
言葉を言いきる前に飛鳥はそのまま眠ってしまった。
「良かった。」
深夜もそう一言言い、彩夏に話しかけた。
「とりあえず一刻も早くここを出ましょう。 さっきの銃撃の正体も分かりませんし………、あっ彩夏さん俺が代わりに車まで抱えて行きますよ。」
深夜はそう言いながら、彩夏に駆け寄った。 それに彩夏も笑いながら、
「そう、それじゃお願いするわね。」
彩夏の腕の中にいる飛鳥をお姫様だっこする形で持ち上げた。
「よいしょっと、意外と軽いな………。 それじゃあ行きましょ………………。」
歩き出そうとした深夜の足がふと止まった。
「? どうしたの深夜さん?」
彩夏の言葉に深夜は何も答えない、ただ腕の中の飛鳥を凝視しながら固まっていた。
「彩夏さん。 こんなことって………」
「え? 飛鳥ちゃんに何か起こったの?」
彩夏は慌てて駆け寄ったが特に変化は見られなかった。 すると深夜が飛鳥の髪に付いていた血を拭って見せた。
「………………?! な、んで?」
「………………………。」
彩夏のとっさの問いに答えるものは誰もいなかった。
飛鳥に外傷はなかった。
勿論、今もしっかり生きてる。
血にまみれた姿を除けば違和感など無かった………、無いはずであった………………。
to be contenued next episode
改めて、いつもより一週間も多く空けてしまいました。 色々と今後の展開等も考えていたらいつの間にかこんなに時間が………
この遅れを取り戻すべく次回のこの章のエピローグは、すぐに投稿させますのでどうぞお待ち下さいませ。
それではこの辺で。 次回もお楽しみに!