1/2
プロローグ:僕はただの商人なんですが!
スパイスの香りと市場のざわめきが満ちる下町の生鮮市場の中で、テオは汗を拭いながら、その日の利益を数えて微笑んでいた。
「今日はなかなか悪くないな……」と彼は独り言をつぶやく。
18歳の彼の人生はシンプルだが、いつか金持ちになり、誰よりも権力を持ちたいという夢に満ちていた。
だがその時……彼の目の前の空気が歪み始める。巨大なブラックホールが次元を引き裂き、若き商人の体を一瞬で吸い込んでしまった。後に残されたのは、空っぽになった露店だけだった。
目を覚ましたとき
冷たい感覚が肌を打つ。
テオが目を開けると、自分がドラゴンの頭蓋骨で装飾された巨大な石の椅子に半ば座り、半ば横たわっていることに気づいた。闇に包まれた大広間には、黒い魔力の気配が充満している。
「お帰りなさいませ、我らの魔王様!」
響き渡る声が重なり、テオは思わず大きく身を震わせた。
彼の目の前にいるのは、サバの値段交渉をしに来た客ではない。威圧的な姿をした数百の魔族の軍勢だった。巨大な黒鎧の騎士、優雅な角を持つ若い魔女。彼らは一斉にひざまずく。
「ちょ、ちょっと待って……魔王様って?」
テオはそう言いながら、自分の手を見下ろす。そこには血のように赤いルビーの指輪がはめられていた。
「僕はただの商人なんですが!」




