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それは秋の夕暮れのことでした。某県在住の『シャクナ』という女の子は何もかも微妙すぎるままに家出まがいのことをしてみたくなりました。家出と言っても、ほんの数時間で帰ってくるつもりで場所にしても山とも谷とも言えないような起伏の先のブランコだけが設置してある公園へです。シャクナは漠然と、



<よるの時間、あのブランコの黄色がどんな風になってるか見てみたいなぁ>



というような事を考えていたのです。それに意味はあって、ないのです。家を出て、シャクナが最初に思った事は<やっちゃった>でした。というのも履いている靴がお気に入りのシューズではなくて母親のつっかけだったからです。戻ったら戻ったで母親にバレてしまう可能性が高いですし、迷いましたがそのまま勢いで進んでしまおうとシャクナは考えました。



<今日のおみそしるは濃かった>



慣れないサンダルで歩きながら朝の事を思い出します。母親が作ってくれた味噌汁の味が何となくしっくりこなかったのがその微妙な心境の理由なのだと分析している様子。実際、そのお味噌汁は味噌を変えたばっかりにいつもの安心する風味とは違ってしまっていて、あとで水が飲みたくなるような気持ちになりました。




田舎なので道を歩いている人はいません。とはいえ幼い女の子が一人で歩いていては心配になるもので、気になったのか誰かが女の子に近付いてゆきます。



「もしもしお嬢さん」



シャクナに後ろから声を掛けましたが振り返ったシャクナは不思議そうに見下ろしてくるだけです。



「??」



不思議そうにしているのも無理ありません。何故って、声を掛けたのはイタチだったからです。イタチがシャクナに喋りかけても、シャクナにとっては変な鳴き声です。



「どうしたの?あなた迷子なの?」



逆にシャクナに訊ねられてしまう始末。身体は小さいですがイタチは成人(?)していて、迷子というよりそこは彼の縄張りの一部でした。彼は律儀なのでシャクナに向かって必死に伝えます。



「お嬢さん。こんな時間に一人で歩いていてはいけませんよ」



「そうなんだ。大変だね。じゃあ、わたしに着いてくる?」




そうしてシャクナはイタチを引き連れて歩き出します。

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