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ラブレター編②

ラブレターと思わしき手紙を持って家に帰った僕は、自分の部屋のベットで上向きに寝転びながら、その手紙を眺める。


「ん~……。どう見ても僕宛てだよね……。同じ名前の人が同じ学校にいると思えないし……。それに漢字まで僕の名前の漢字だ……。どうしよう……」


考えられる説は主に二つ。


一つ目は、文字通り本物のラブレター。この送り主が僕の事を恋愛的に好きという事になる。


二つ目は、噓の告白。略して噓告。


……僕としてはもちろん、一つ目の説であってほしいけどね……。


でも、今まで友達もろくに出来ず、いじめられてきた僕は、やはり疑わざるを得ないのだ。


こんなことを言ったら、この送り主にはすごい失礼なんだけど……。この学校で女子の知り合いなんてほとんどいない。いや、最近増えたけど……。


なのに僕を好きなんて……。正直信じられないな……。


……いや、こういう時こそ、伏見さんや桂さんに相談するべきじゃ……?  

あの二人は間違いなく、この類に関しては詳しいはず。


……そうだ! そうしよう!


僕はすぐさまスマホで伏見さんにラインを送る。


『お疲れ様です。アルバイト中に申し訳ございません。自分事で申し訳ないんですが、ご相談さしていただきたい事があるのですが……。明日のお昼休みにお時間お頂戴してもよろしいでしょうか……? 

P.S 同じ文章を桂さんにも送っています』


「……よし。これであとはこの文章をコピペして、桂さんにも送ると……。これでオッケー」




しばらくスマホをいじっていると、伏見さんから返信の通知が来た。


『おっけー!! 恭子と一緒に行くわ! 前の非常階段でいい?』


『はい。そこでお願いします。ありがとうございます』


『おけ!』


ふぅー……。まだラインに慣れていない為か、文章を考えただけで一苦労だな……。


ベットで少し休んでいると、次は桂さんから返信の通知が来た。


『おけ』


………実に桂さんらしい返事だ……。


『ありがとうございます』


よし。これで大丈夫かな。


しかし、ラブレターか……。


今やSNSの時代なのに、手紙とは……。しかも直筆……。

たしかに、手紙で直筆の方が、気持ちが籠っててより想いが伝わってくるような気がする……。


え? ニヤニヤすんなって?


黙れよ! こちとらこんなイベント経験したことないんだよ!!

いいじゃん!! 少しは夢見たっていいじゃん!


確かにまだラブレターと決まったわけじゃないからなんとも言えないけど……。


でもこんなの期待しちゃうじゃん!! 男だもん!!


……まあ? 仮になにかの悪戯でウソ告だとしても? 僕にはVtuberアイドルのみんながいるから? なにも悔しくなんてないけど?


………嘘です。そんなことになったらショックで倒れてアメリカの病院に行かないといけないといけないくらい、悔しいです。


……うるさいよ!! てめーらだってこんなイベントが起きたら普通に嬉しいくせに!! 


表では『え? なんか貰ったんだけどw ラブレターとか今の時代でもあるんだなw 古風すぎて草w』とかかっこつけて言ってんだろー!? ほんとは嬉しいくせにすぐそうやって照れ隠しする!

男の照れ隠しなんて誰が得するんだよ! だれも得しないよ! ただ気持ち悪いだけだよ!


しかもそのラブレターが悪戯だったら『……え? あ、うそ告? なんだよーw ビックリしたじゃんw』とか言って表向けは余裕そうだけど、家に帰ったら枕がびしょびしょになるくらい泣くんだろ!?


普通に可哀想だよ! オタクはみんなが思うより豆腐メンタルなんだよ! オタクでコミュ症だから、家で泣くしかないんだよ! 学校にはオタクが泣いていい場所は無いからね! ウソ告反対!!





ふぅー……。少し興奮してしまいました……。


そうですよ。まだラブレターと決まったわけじゃないですからね。


……でも、もし仮に、仮ですよ? 仮に本物のラブレターとして、放課後に言われていた場所に行って、そこで、こ、告白をされたとして、ど、どう返事をすればいいんだろう……。断るにしても相手が傷づかないように断らないといけないのかな……。


まあ、その辺りも含めて、明日あの二人に相談すればいっか……。

今日はもう寝よう……。


僕は手紙の事で頭がいっぱいで、なかなか寝付けなく、眠りに入れたのは、深夜の二時だった。







そして次の日。寝不足ながらも、いつもの時間に起きた僕は、いつものように準備して、いつものように学校に向かう。


ふぅー……。


き、緊張する!! なんだこのドキドキは!? ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうだよ!!

この世のカップルはこのドキドキを乗り越えてお付き合いしているというのか……!


緊張しすぎてイヤホン持ってくるの忘れたよ!! 死活問題!! 僕の唯一の相棒なのに!!


お、落ち着け……。落ち着くんだ浩二郎……。まだ放課後まで時間はある……!


教室に着いた僕は、日直の仕事をこなし、端の席でスマホをいじっていた。


「うーん……。イヤホンがないと落ち着かない……。昨日色々あって見れなかったアイドルVtuberの配信を見ようと思ってたのに……」


そわそわしながらソシャゲの周回をしていると、伏見さんからのラインの通知が来た。


『おはよー!! 昨日バイト終わるの遅くて寝不足だわー!! 今日昼休みに話あるんだよね? 昼休みになったら秒で非常階段に向かうね!!』


『おはようございます。僕も昨日色々あって寝不足です。非常階段で待ってます』


寝不足になるくらい、遅くまでバイトって……。


色々忙しいんですね……。


『了解! 太田君も寝不足なんだ! 一緒だね! あと、ごめん! 今日は間の休憩時間そっちのクラス行けないかも……。ウチのクラス、移動教室と体育が午前中にあって……。ほんとは行きたいんだけど……。ごめんね……」


『了解しました。では、昼休みお待ちしております』


今日の十分休憩は僕のクラスにはこれないらしい。

いつも来てもらってるから、たまには僕の方から行くべきかな……。


いや、やはりハードルが高すぎる。あの陽キャの巣窟に行くにはまだまだレベルが足りない……。

もうちょっとレベリングしてからじゃないと……。


そこから僕は淡々と授業を受け、ついに昼休みがやってきました。


素早く昼食を済ました僕は、前の非常階段で二人を待っていた。


しばらくすると二人が階段からあがってきた。


「おいっすー! 太田君!」


「おっすー」


「お疲れ様です。すいません。二人ともお忙しいのに、相談に乗ってもらって」


「ううん! 太田君の相談ならいくらでも聞くよ!」


「ありがとうございます」


「……目のクマがすごいけど、またなんかされてんの?」


「いえ、もうあれから僕への嫌がらせはなくなりました」


桂さんは、また僕がいじめられていると心配してくれているけど、今回はまた別のケースであって……。


「ほんと!? よかったー」


「はい。ありがとうございました。伏見さんたちが僕のクラスに来てくれるようになってから、なにもしてこなくなりました。効果は絶大でした」


「……ウチとしては、ただ太田君と喋りたいだけなんだけどね……」


「え、あ、そ、そうだったんですか……。あ、ありがとうございます……」


「……ううん。今日はいけなかったけど、明日からも行っていい…?」


「もちろん。そういう約束ですからね」


「……やった…!」


小さくガッツポーズする伏見さん。


か、かわいい…。


「………あのー。私もいるんだけどー。イチャイチャすんなら私のいないところでしてくんなーい?」


「イ、イチャイチャしてないし!」


この流れ、どっかで見たな……。デジャブだ……。


「はいはい。それで? 相談っていうのは?」


「はい……。じ、実は昨日……」


「「きのう?」」


「そ、その……」


うー…。き、緊張する……。恥ずかしい意味で緊張する……。

でも、相談に乗ってくれって言ったのは僕だし、ここは包み隠さず話そう。


「き、昨日、僕が帰ろうとした時に靴箱を開けると、こんな物が入っていまして……」


僕はそっとポケットから例の手紙を取り出し、二人に見せる。


「「こ、これって……」」


「そ、そうなんです……。内容を確認したところ……、恐らく……」


「「ラ、ラブレター……」」


「お、恐らくですが……。それで、こういう時、どうすればー-」


「……太田君」


「は、はい!」


な、なんかものすごいキレていらっしゃるんだが!?


あれ!? 僕なんか変な事いったかな!?


「……それ、差出人は分らないんだよね」


「は、はい……。名前までは書かれていなかったので……」


「……今からこの学校の女共を絞めてくる」


「ええ!? な、なんでそうなるんですか!?」


な、なんかすごい物騒なんだけど!? 

予想してたのとなんか違う!!


「はい落ち着けー」


「はーなーせー!! 誰よ一体!! ウチの太田君にそんな汚いもの寄越すなんて! ぶっ殺してやる!」


「おーい。なんか飛躍してるぞー。太田君はまだ誰の物でもないでしょー」


伏見さんの首根っこを桂さんが掴みながら説得していた。


なんか、暴れる猫を制圧しているみたいだ……。


「とりあえず、太田君の話を聞いてからだね。はいアンタもちゃんと聞く」


「クッソ……!! ウチがずっと抑止していたはずなのに……!まだ足りないってこと!?しかも手紙なんていちいちエモい事しやがって……!! これで太田君がときめいちゃったらどうしてくれんの!? ウチも手紙とか書いた方がいいのかな……?いやそれだと、こいつの真似してるみたいでダメ……! なにか……。何か手を打たないと……!」


伏見さんがなにかブツブツ呟いているが、よく聞こえない……。


というか、なんかキャラ変わってない……?


「おーい。帰ってこーい。昼休み終わっちゃうよー。ってか、本性丸出しで草。普通にめんどくて草超えて森だわ」




………これ、伏見さんの本性なの……?


っていうか桂さん……。


あんたも本音出ちゃってるよ……。人の事言えないよ……。































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