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第8話 休符

それぞれの生徒が各々に厳しい勉強、訓練を経て

つい能力調査の日を迎えた。合格点に至らなかった者は退学。

 

 この調査は言わば選抜試験。


 学力調査と身体能力調査は完全なる実力によって

合格と退学の采配が決まる。


 しかしスキル調査は違う。自らの戦闘能力とスキル、たしかにこの二つの力は重要だろう。

 だが戦う相手はランダム。それが本校の強者であっても調査が始まれば誰も文句は言えないのだ。


 そして退学という絶望の影があるように、本校に昇格できるかもしれないと言う希望の光もある。

 生き残ることが目標の者もいれば、本校昇格を目標にし、生き残ることは前提としている者もいるのだ。


 窓越しの光景を眺めてそんなことを考えていたその時、学力調査終了を告げるチャイムが鳴った。


「はぁーーー、終わったー!!」


 机に上半身を委ねて脱力したあやめは教室一帯

響く声で叫んだ。


「なんだか全ての試験が終わったみたいだな。まだ二つの試験が残ってることを忘れてないか?」


「ふふん!終わったも当然!学力調査さえ乗り越えられれば私にとって後はちょちょいのちょいよ!」


 あまり聞かない表現方法だが‥‥まあ楽勝と言う

意味なんだろうな。


「そう言う涼太はどうなのさ?涼太って中学の頃からバカだったじゃん?運動もそこそこだし私からしたらあんたも立派な退学候補なんですけど?」


 そう。俺はあやめと和真とは中学の頃から同じクラスらしく、大抵の生徒はその中学から高校に自動入学してくるらしい。


 李亜はあやめと仲がいいため同じ中学だと思っていたのだが今年の5月から転入してきた転校生こと。その事に驚いたのもここ最近になる。


「まぁ手応えからして俺もそこそこできたぜ。ここ数日間なにもしなかったわけじゃないからな。しっかりと対策したところも出たし、問題ねぇよ」


 実際のところこの数日間、俺は対策もなにもしなかった。

 その間に俺はここの世界についてある程度の知識をおかげで得ることができた。


「そっかそっか、よかったよ。本当にぶっちゃけあんたが1番心配だったしな。」


 まぁ転生前の俺は相当のバカだったらしくクラスで退学するとしたら誰?ランキングでぶっちぎりの1位だったらしい。 


「心配させて悪かったな。これからは大丈夫だ。まぁでも馬鹿が普通に戻っただけだからクラス貢献については期待しないでくれ」


「まず涼太は自分のことだけ考えて今回は調査を乗り越えろ。な?」


 そう言って俺の肩を叩き、他の生徒に労いの言葉をかけに行ってしまった。


「あやめはね、ああやってクラスみんなの士気を高めたり、励ましたりするのが得意なんです。私といえば、勉強会とかの企画を、みんなのために考えて立てたりするんですけど、その前に必ずあやめの意見を聞いて取り入れると、本当にすごいくらい効果があるし、みんなが喜ぶんです!」 


 このクラスは2人が軸となって本校昇格を果たしていくのだろうな。

 そんな今はまだ遠いビジョンが見えた。


 俺は次の調査、身体能力テストを受けるためにあらかじめ指定されたグラウンドB区に来ていた。ここの学校はグラウンドがAからE、体育館が1号館から3号館まであるらしく、それら全て国の税金らしい。


 俺はグラウンドB区に出るといわおのような男が俺を見ては手を振ってきた。


 そう。俺は竜平と同じグループだった。


 坂田は自らのポテンシャルをこれでもかと発揮して長座体前屈の6点以外は全て10を取った。


「よっしゃ!この調査は本校昇格ラインを超えたぜ!」


 学力調査とは違い、評価基準が前もって明かされているためここで歓喜する者、落胆する者。それらが大きく分かれていた。


 ちなみに俺は80満点中65。ハンドボール投げだけ

調節をミスってしまい。評価を全て8で合わせるはずが9になってしまった。まぁしかし4や5といった点を出す生徒は多かったし、まさかの平均点以下なんてことはないだろ。


 結局分校では、坂田の76点を超える者は現れなかった。女子の方ではあやめが70。李亜が66と2人とも好成績を収めていた。


———————————————————————


午後16.50分。


 これから17.30により始まるスキル調査に備えて

クラス全体で作戦会議を行なっていた。

 作戦会議といっても団体戦ではないため警戒することや本校と当たったらどうするかなどを題としたものだった。


 6時間緊張ぶっつけで気が抜け始めたのか少し疲労がクラスメイトに見えつつも調査開始直後に比べたら多少なりの緩みが見られた。


「とりあえずみんな!お疲れ様!あとはスキル調査を乗り越えるだけだよ!」


「やっと最後かぁ!」


 1人の男子生徒がそう言うと他のクラスメイトも

続いて歓喜し合う声が聞こえてきた。


「でもみんな!これで終わったわけじゃない!次無事にみんなで乗り越えた時にこそ帰りにコンビニとかのお菓子を持ち合って食堂でお疲れ様会を開こうよ!」


 そう李亜が言った数秒後。今までの疲労を感じさせない大音量の声が教室に鳴り響いた。  

 作戦会議が終わり、間も無くして、スキル調査の説明をするため佐賀先生が部屋に入ってきた。


「さてと。時間もないので簡潔にルールを説明するわね。」


「まず、試合時間は最大15分。それ以上は引き分けとみなし得点の増減は行われない。尚、双方が引き分けを狙って5分間の相手への攻撃やスキルの使用がなかった場合、即−100点をペナルティとします。」


 もし学力調査で400を取り、身体能力調査で60を

取ったとしても360に減る、かなりの痛手だな。


「そして中学との決定的な違い。それはダメージよ。中学での模造品ではなく本物の剣や斧、籠手と言った武器で斬られ、殴られるのだからそれ相応の

ダメージは食らうわ。でも安心して、死ぬことがないようにこちらとしても工夫してあるから。」


 それって大丈夫なのか?下手したらガチで死ぬんじゃ。


「あとこれに気づいてる人もいるとは思うけど、

試合は指名制。今から配る紙に三つの空欄があるけどそこに書いた人と必ず当たるとは限らないから注意してね。」


「どういうことですか?」


 李亜がそう答える。


「たとえば、その生徒に希望が集まりすぎて三枠に収まりきれなかった場合は私たち教師が厳選なる選考を行い、他の余った生徒の方に回されるの。」


「では、希望が通らなかった生徒は本校の生徒と当たってしまうかもしれない。そういうことですか?」


「そうよ」


 生徒たちに動揺が走る。


「あと、みんな入学したてなんだからここの分校の生徒の名前だってまだ覚えられていないでしょ?その場合は空欄で提出してもらって構わないわ」


「さてと、一通り話をしたけど何か質問はあるかしら?」

佐賀がそう聞くと。和真が手を挙げた。


「質問なんですが、これって一年生だけの

 試験であってスキル調査にまさかの先輩方が

 おられる。なんてことはないですよね?」


和真がそう質問すると、これまた一気にクラスに緊張が走った。そして佐賀は———


「えぇ、これから先輩たちを含めたイベントはあるけど、今回は分校と本校それぞれの一年生のみよ。」


「そうですか、それはよかったです」


クラスの緊張が緩和され、あちらこちらから安堵の声が聞こえる。


「先生、最後にいいですか。」


黒髪をなびかせながら、手をあげて質問するのは李亜だった。


「赤田さん、なにかしら?」


「もし、攻撃によって、相手を死に追いやってしまった場合はどうなるんですか?」


いきなりぶっとんだ質問にクラスメイトはざわめき始める


「そうね。まぁ、そんなことは絶対に100%

 起きないけど、とりあえずはそれは起きてから

 考えるわ。」


「本当にそのようなことが起きないと?」


「えぇ。断言する。これからの試験において人が死ぬことはまずない」


「わかりました」


学校側がそういうのであれば間違い無いのであろうが確かに懸念する点の一つである。


「では、これにて説明を終えるわ。紙に指名する人の名前を書いたら、この箱に投函しなさい。そのあと教師が集まって選考会議を開き、30分で生徒たちの試合相手を決めるそしたら1年3組は各自 指定された体育館でスキル調査を実施するので集まること。以上よ」


そういうと先生は廊下を出て行った。


30分、か。


———————————————————————


俺はとりあえず誰でもよかったので白紙で提出した。体力調査での貯金もあるし、一勝できればそれでいい。


俺は佐賀に言われた体育館1号室に向かった。しかし、俺の行先の階段の陰で、とある人物が待ち伏せているのが見えたので俺は通り過ぎようとした。しかし案の定そう上手くはいかなかった。


「担任を見かけておいて挨拶の一つもないの?」


「待ち伏せておいて今更なにを言っているんですか?」


「まあいい。学力、身体能力、それそれの調査結果を見させてもらったわ。」


「そうですか。」

 

佐賀はため息を吐きながら話を続けた。


「なに?あの結果、全体の中の上と言ったところよ?」


「なにとは失礼ですね。生徒が頑張って出した結果に落胆するような反応は教師としてどうなんですか?」


「誤魔化さないで、握力だけが抜きん出たものだとしたら8という結果など出ないはずよ?」


「あの握力計が壊れていたという可能性も出てきますね」


「全てが新品で、すでに点検済みの良品だ。いきなり壊れるということはない。」


お互い睨むように目を合わせた。そして少し間が開いたので強制的に切り上げることにした。


「これ以上の会話はなにも生産性を生みません。

それに俺も調査対象なので、それでは」

 

佐賀先生はそれ以上俺に話しかけてこなかった。

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