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第12話 最弱と最強の対峙

審判の案内のもと俺は保健室に到着すると、俺はあやめのことを審判の人に任せられなかったので自分で介抱することにした。

 治癒魔法は心得ているがさっき魔法を久しぶり

に行使したせいか、体への負担があまりにも大きかった。


「————っ!ったく。この調査が終わったら本格的に鍛えるとするか。あやめの役にも立ってやりたいが、ほどほどに強くならないとな」


 意識のないあやめにそんなことをつぶやくと、保健室のドアが開いた。


「あら、なーに?問題を起こした生徒というのは貴方だったの」


 俺が介抱していると佐賀が保健室に入ってきた。


「倒れた生徒を介抱しようとしたのを問題といいますかね?」


「一般的に考えたら問題にはならないわ。むしろ称賛の拍手が起こるわね。まぁ分校だから仕方ないわよ。」


「人権に支障が出るほどに分校の待遇が悪いことには笑えませんね。」


「まぁそれはそうとして。今さっき学力と身体能力の調査結果が出たわ。」


「そうですか。」


「貴方。ふざけてるわね?」

  

 俺は黙って佐賀の話を聞くことに決めた。


「学力調査全教科60点。身体能力調査スコア65点。学力はまだしも、身体能力に関しては握力100越えした生徒が出すスコアじゃないわ」


「言いましたよね?目立つ真似はしない、と」


「なら今回の件はどう説明するの?」


「彼女を助けることを目的として目立った。それだけです。幸い俺にはかなり前科が溜まっているようなんで、多少の問題ならそこまで目立ちませんよ」


「目立つことに変わりはないわ」


「助けて目立つと、誇示して目立つには明確な違い

があります」


 佐賀はため息を吐いた。それは絶望というより呆れ果てたものがあった。


「もういいわ。でも私は諦めないから。せいぜい貴方を利用させてもらう」


「利用ですか。教師がいうセリフじゃありませんね」


「それより貴方、ここにいていいの?試合に出なかった場合、否応に関係なくスコアが引かれるわよ」


 この人さっきから自分の話ばっかだな。話の切り替えも強引だし。


「えぇ、もう少ししたら向かうつもりです。2回戦目は、はなから捨てるつもりでしたので。3回戦目は参加させてもらいますよ」


「あぁそう了解よ。ならそろそろ私は行くわ。さようなら。」


 そう言うと佐賀の先生は雑に扉を開けると、保健室から出た。


———————————————————————


 体育館に戻ると俺を見ては目を逸らしたり、ひそひそと話し声が聞こえるが、気にしたら負けだしな。


 にしてもどうする?これであやめはかなり退学に近づいてしまったな。学力と身体能力でかなり稼いでいたとしてもこの調査には減点がある。結構ギリギリだな


 視線をずらすと、さっきまでいたベンチが空いていたのでそこで自分の番まで寝ることにした。


しかし寝ることなく、自分の番は回ってきた。


 それも最悪な形でだ。


「B区画全調査終了した。次はA区画最終戦。赤木高校1年3組三矢涼太、紅桜高校1年1組紅葉美桜。試合を行う。至急舞台に上がれ」


 なんてこった。さっき俺の魔法を分解しやがったチート女じゃねえかよ。

 

「美桜様!あの問題児に鉄槌の裁きを!」

「美桜様ーー!!あんなやつやっちゃってー!」

 

 っち。騒がしい連中だな。死ね!と思って

振り返ったら。つい美桜と目があってしまった。

 

 その目は透き通った赤色の瞳で、こちらを見定めているようだった。


 なんだ、この探られる感じ。干渉系魔法いや、干渉系のスキルか?いや、さっき俺の魔法をぶっ壊した奴だ。もっと他のかもしれない。


 俺は警戒しながら舞台に上がる。


「さっきは刀を向けてしまってごめんね。」


 美桜は軽く頭を下げた。


「ダメです!美桜様!そんな外道に頭を下げては!」


 沙織とかいう女が喚いている。あの長い馬の尻尾を引きちぎってやってもいいだろうか。


 俺は沙織の方を睨むと、美桜の方に視線を送った。


「お前の側近は黙って試合が始まるのも待てないのか?」


「それも謝るわ。沙織は貴方の噂で警戒してるだけなの」


「噂?」


 あー前の俺がしでかした噂ね。まぁもうそろそろ軽蔑の眼差しには慣れてきたし、構わないけど。


「私は貴方のことを噂で聞くくらいで実際には

見たことはないの。だからそんな信憑性のない

噂で私は貴方を蔑まない。百聞は一見にしかずっていうじゃない?」


 こいつ。本校の中じゃ1番筋が通っていいやつ

 なんじゃ。


「それはーまぁ、ありがとう。」


「貴方にお礼を言われる筋合いはないわ。そろそろ時間よ。貴方武器は?」

 

 美桜が再び俺の体を探るように見始める。


「仕込み武器‥かしら?」


「いや、そんな器用な武器は俺には扱えないし、使わない。俺は素手だ。」


「素手!?貴方。どうやって戦うのよ!」


 おいおい、そんなに驚くことかよ。


「いくらでも戦い方はあるさ、相手が剣だろうが、槍だろうが、斧だろうが、それ相応の対応をして、戦うだけだ。武器が無くてもこの世界には柔道や空手もあるし?」


「腕に自信があるようね。」


「俺はスキルなしだ。自信も糞も何もない。もしかしたら素手スタイルを選んでいるのも一種の開き直りかもな」


 俺は冗談をかますと美桜が驚きの行動にでる。


「貴方って人は、まぁいいわ。沙織!」


「え!?美桜様!?」


美桜は自らの武器である刀を沙織に投げ、預けた。


「素手の俺を見て戦う気が失せたか?」


 だとしたら非常に助かる。だが、そんな生半可な性格じゃないことは直に話しててわかる。


「貴方が素手なら。私も素手でやるわ。心得が剣道だけでなく、格闘技にも精通してるのよ?私」


 フフン!すごいでしょ!と言わんばかりの顔をしてきた。


 でも、なんだろうな。こう言った相手の土俵に

立って戦うスタイル。


 体中の血がたぎってくる。


 舞台のいや、この体育館の空気が一瞬にして変わると、互いの戦意が交錯する。


「双方!構え!」


 審判の声が鎮静した体育館によく鳴り響く。


「話しててもわかる。貴方は噂通りの人ではない。

でもそうね。戦えばもっと分かるかしら?貴方の強さもね?」


美桜はこの状況を楽しんでいる。そう思い、笑みを見せると、その奥にある鋭い眼光を光らせた。


「‥‥行くわよ?」


 この覇気というか威圧というか、すごいな。異世界で討伐したエージェントドラゴンを思い出させられる。


 常人ならここで威圧され、戦う気を失せるだろう。


 だが、2回の死を経験した俺にとってはどうってことない。


 だから俺は答える。


「あぁ、来いよ」


「スキル調査!最終戦!赤木高校 1年3組 三矢涼太!紅桜高校 一学年主席! 1年1組 紅葉美桜!」


「勝負!はじめ!」


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