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第11話 予感


「へぇー、スキルなしなのに分校ではやってけれるんだなぁー」


 茶髪の猫耳少女、菊がそう言うと。


「あれは相手側が油断したんだ。スキルなしだからって身体能力が劣るとは限らないのに‥‥愚かだな。そうですよね?美桜様」


沙織は美桜に話しかけた。しかし返事は返って

こない。


「美桜様?」


「——————え!?」


美桜は驚いた声で反応を返した。


「大丈夫ですか?ボーッとしてましたが。」


「みおーも疲れたんだよー。あーあ、早く終わらねぇかなぁー。」


 菊が手を頭の後ろで組みあくびをしながらそう答えた。


「菊‥‥一応調査中なんだからな。もっと真剣に」


「あー沙織の説教が始まっちゃったよー。長いし、

ぅぜっ」


「きーくぅー?なんか言ったか?」


沙織の目にハイライトが失われる。


「え!?あ、いや!なんも言ってないよー、あはは、あは」


「ちょっとあっちに行こっか?すみません。美桜様。このバカを少々調教してきますので」


「え、えぇ‥‥でもほどほどにね?」


「みおーーー助けてよー!!!」


「お前はこっちだ」


菊は服の襟を掴まれて軽く持ち上げられ、そのまま

連行された。



———————————————————————


試合を終えた俺はベンチに座っていた。片手に持っているこのお茶はスキル調査前に李亜がクラスみんなに差し入れと言ってくれたものだ。


「美女は気遣いもできるっと。さすがだな。」


俺は李亜の評価をアップロードしていた。


その時。意外な名前が呼ばれた。


「赤木高校1年3組小林あやめ。赤木高校1年1組佐藤角次。A区画にて試合を行います。」


「ん?あやめ?ここだったのか。気づかなかったな。まぁでも相手は分校生徒らしいし、あやめなら大丈夫だろ」


 あ、やべ。なんかフラグ立ててね?

 

 そう思ったのも束の間。体育館に物凄い大きな

音が響いた。


そう。舞台に上がろうとしていたあやめが階段を

登る途中で倒れ、転がり落ちたのだ。


「あやめ!!」


 周りに集まる野次馬どもを跳ね除けながら、俺は急いで駆け寄った。


「おい!大丈夫か!?おい!」


 いくら体を揺すっても起きる様子はない。


 これは緊急事態だと思った俺はすぐさま叫んだ。


「おい!誰か!?急いで保健室の先生に連絡を!!俺はあやめを担いで行くか———ら‥」


 俺はここで始めて立場的に、身分的に、本校と分校の圧倒的までな待遇の差を思い知る。


「小林あやめ戦闘不可能。よって勝者!赤木高校 1年1組 佐藤角次!」


「は?」


——今、なんつった?


「続いては赤木高校」


「ふざけんな!!!!!!!!!!」


 気がつけば、俺はあやめが倒れた音よりも大きい声で叫んでいた。


その時は目立つとか穏便にとかそんなことを優先している場合じゃなかった。


「続いては?じゃねえだろうが!生徒が倒れたんだ!先生だろうが生徒だろうが人間である以上助けるのが普通じゃねえのかよ!」


「君、通学校とクラス。あと名前は?」


「赤木高校1年3組三矢涼太だ!いいからそんなことより早く」


「極めて重要なスキル調査の時間を無駄にした。よって、君は静音妨害でスコアを減らすことになった」


 俺は理解できなかった。


 なんだ。これ。


 これが俺が元いた世界か?これが日本か?


 少なくともこんなにも明確な差別ができる国を俺は知らない。

 

 こんなの、異世界でも現実でも許されることじゃねぇ!


「おい」


「はぁ。だから君はまたスコアを減らされ」


「黙れよ」


 俺はその審判に向かって精神掌握魔法を放っていた。

 そしてそいつを掌握するのに3秒も要らなかった。


 意識したわけじゃない。俺の魔法は意思なく発動されていた。


「いや‥‥その、ヒッ——————ッ!?」


 審判は体を震わせながら崩れた。


「もう一度言う。あやめを——————」


 言い終える前に俺の魔法は分解された。


「そこまでよ!」


 俺が立っている舞台の下で、あの美桜とかいう

奴が刀を抜いていた。


「すまない。早く済ませる、待っててくれ」


「そういう問題じゃないの!」


 美桜は俺の方を向いて叫んでいた。 


「じゃあなんだよ!?お前もそうなのか?額からの発汗がひどい、熱もある。それも高熱だ!今にでも手当てしないと冗談じゃ済まなくなるかもしれない。それでも、お前は俺を止めるのか?」


 先ほどの規模ではないが俺は再び彼女だけに、今度は意識して精神掌握魔法を放った、が。


 彼女の前で分解される。


「なんだよ、お前」


 今この瞬間。俺はこの女のイレギュラーさに確信を持った。

 コイツはヤバい。


「あなたと敵対するつもりはないわ。あと私も彼女を手当てするのに賛成だから。というか、賛成反対とかの問題じゃないと思うけどね?」


 美桜は審判の方に目線だけを動かして睨みつけた。

 

 しかし。

 


「い、い、やああぁ」


審判の精神は壊れている。だからしばらく修復不可能だろう。


「あなた、何したの?」


 今度は俺の方を睨む


「いや、なにもしてない」


「嘘ね」


「なんでそうなるんだよ‥‥というか俺はあやめの介抱に行かせてもらう。わかったらそこを退いてくれ」


「‥‥そう。わかったわ」


 俺はあやめを担ぐと、体育館を出た。


「あの女子生徒の介抱を至急行いなさい。いい?」


審判が集まっているところに美桜が声を上げる


「は、はい!」


 あの光景を見た後だ。体がすくんだのか、反抗せずに審判が2人、涼太の元へ向かった。

 

———————————————————————


俺があやめを運び、途中で出くわした審判に保健室へ案内されている頃。体育館は静かに騒音をたてていた。


「お、おい。美桜が抜いたぞ」


「あれが名刀”夜桜”。初めて見た」


「あぁ俺もだ」


「で、でもよぉ。なんで抜けたんだ!?」


「確か紅葉家に伝わる家宝のうちの一本。あの

夜桜は気まぐれで、自分と同等、またはそれ以上の力量を持つ相手じゃないと抜けないって」


「じゃ、じゃあ、三矢な野郎がそうだって?まさか」


「あ!あれじゃね!緊急事態の時は抜けるとか!」


「そ、そうだよな!じゃなきゃ、分校のあいつに抜かせられるわけねぇわ!噂じゃあ学校であの刀を抜かせられるのは美桜の兄貴くらいらしいぜ!」


「そうだよなぁ。剣帝くらいじゃなきゃ抜かせられねぇよな」


 事態がひと段落し調査が再開した。


男子生徒がひそひそと話をしている中、美桜は舞台を降り、沙織の元に帰っていた。


「ふぅー」


「お疲れ様です」


「ありがとう。でも疲れたわね」


「つか、れ、たですか?」


「なーに?そのカタコトな言い方」


「い、いえ、その。疲れたなんて、久しぶりに聞いたものでしたので」


「そう、ね」


「まぁでも。急に起こりましたからね。でもあの問題児はいつもああらしいので。気にしないでいいですよ」


「でも彼は倒れた女の子を助けようとしただけ、それを無視したのがいけないし、あの審判に問題があったわ。お父様に言いつけて解雇にでもさせてあげようかしら。」


「はは、美桜様は差別をするものには厳しいですからね」


 まぁでも。審判は精神が壊れかけたし、これ以上何かすると可哀想よね。それよりも。私の刀を鞘から出させ、ある程度の疲労感を与えた彼には興味が湧いた。


 いずれ、相対するその時が来ると信じたいわね

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