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明治異聞録  作者: 雪風
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これからの方針

「それで、ティーバッグ製造は許可が下りたと」


「はい、それで一度お茶を栽培している駿府……静岡に行かないかと話が」


 夜、充てがわれた一室で白井は滝川達と今日起きた事を話し合っていた。


 缶詰めが当たり前となり、暇潰しも兼ねた情報交換は半ば恒例になっていたのである。


「静岡か……場所は?」


「そこまでは。


 ただ彰義隊の一部が現地で開墾、栽培しているらしいのですが、麻生さんの口ぶりですと上層部と知り合いのようです」


「又聞きじゃあ具体的な場所を知らないのも仕方ないか。


 蒔田さんは何か知らないかい?」


「彰義隊の上層部なら獄死した天野八郎や渋沢栄一の従兄の渋沢成一郎等が居ますが、本人に聞かないと何とも。


 ただ場所なら見当が付きます、現在の牧之原市ですね」


 蒔田の返答に武田が喜色を浮かべる。


「おお、そりゃ都合が良い。近くに相良油田がある。


 昔行った事があるが、濾過すればそのままガソリンとして使える油田なんだが……。


 バスは軽油だから無理だけど」


 発言に皆の目の色が変わり、大野が口を開いた。


「発電機の燃料は無駄遣いしない限り年内は持ちます。


 バスは荷物を下ろして週に一度、三十分間走らせるだけなら年明けまで。


 車検が切れるのは来年の5月なので燃料があるうちは安全に動かせます。


 発電機はエンジンオイルが手に入らなければ再来年の春が限度です」


 それを聞いた板倉は諦観混じりにボヤく。


「スマホの充電コードも品質保証が最長2年だから、石油掘り当てても持ち込んだスマホが使えるのはそれまでか……。


 コードが太ければもう少し長く使えるんだけどな……」


 一部光明が差したものの、現代から切り離され物資面のサポートが望めない環境に置かれた現実を再確認して嘆息した。


 が、


「あーちょっと良いかな? 自分達の世界の歴史だと今年アメリカのロックフェラーがスタンダードオイルを創ってるんだ。


 この世界でも存在するなら軽油や発電機に合うエンジンオイルを調達出来るかもしれない。


 咸臨丸が太平洋横断に1ヶ月少々かかっていたから3〜4ヶ月は見た方が良さそうだけどね。


 充電コードは薩英戦争の時に薩摩藩が電気着火式の機雷を作ってたからゴムを輸入すれば作って貰えると思う」


 仮定混じりとはいえ大野、板倉両名の懸念を払拭したのは蒔田だった。


「お茶の加工と燃料、バスや情報収集の事を考えると人を分けた方が良いね。


 任せられるの白井さんしか居ないけど椎茸とお茶は……」


 滝川は皆を見渡した後白井に顔を向けた。


「椎茸は一日に一回水やりするだけですから自分が居なくても大丈夫です。


 指示は絵に描いて渡してありますし、手が離せないならあちらも提案しないでしょう」


「それもそうか。 じゃあ白井さんと場所を知ってる武田君、土方仕事やってた三上君、大野君は外せないから関君と何かあった時の為に看護師を最低一人……丸島さん、悪いけど静岡に行ってくれる?」


「はい」


 声を掛けられた女性──十津川郷士に縁があるか否か問われた時に反応していた──は頷いた。


「白井さん、青カビ生えたら取っておくように言ってあるよね?」


「はい。 あ、ペニシリンですか?」


「そう。 JINじゃあないが青カビ培養出来るの麹屋か醤油屋さんだろうしね。


 経過観察期間が明けたら動けるように燃料とか色々含めてその辺もお寺と相談だね」


 他にないかと滝川が尋ね、何もないとわかるとこの日は解散となった。

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