He mustn't get rid of his hatred for them for eternity
「権限って結局なんなんすかねー。」
あのあと気づけば俺達は元の場所に戻されていた。
権限とやらも結局なんだかわからない。
「例の殺人鬼を現状当たるしかないって感じだ。」
新城は正気を取り戻したようだ。あの男と一体何があったのだろう。
「中々えげつないことをやるみたいだし、下手な接触は避けた方がいいわね。」
当てもないのに、どうやって見つければ。
困っているところに都合よく携帯が鳴る。
津島からだ。
たしかに、あの人なら何か情報を知っているかもしれない。交友関係はかなり広そうな感じだった。でも信用していいのか、まだ決めかねている。
「誰から?」
俺は黙って首を振る。関わっちゃいけない、そう確信しているから。
「津島さんってあいつじゃないっすか!」
弥富が俺の携帯を無理やりのぞきこんだ。本当に津島は手当たり次第だな。
「津島さんは俺の師匠っすよ!ナンパ術の天才っすよ。あの人は!」
こいつも信用していいか疑うってしまう。
「でも、会ってみる価値はありそうね。他にアテもないし。」
新城はノリ気だ。嫌な予感しかしない。
「3人揃って御出ましとはな。お仲間できてよかったな、瀬戸。」
醜悪な笑いを浮かべている。葛城と、ここの主と同じ笑いだ。
「今回も聞きたいことがあって来ました。」
ここは用件だけ聞いて、とっとと帰ろう。用件を話す。
「その件についてはノーコメントだ。お前らの中から死人が出ることになる。」
不気味な笑いが真剣な表情に変わる。
「なんでですか?まさかあなた自身が!」
新城が食い気味に突っかかる。
「っしゃああああ、やっと見つけたぜ。このゴミ共!!」
「こんな時に限って」
あの時の男だ。常滑を殺そうとしていた男。
「お前だけは、いやその仲間もこの手で殺す。」
相変わらず狂っている。
「ちょっと助言してやる。お前らが与えられた権限ってのはこれのことだろ?」
権限の話なんて、津島にはしてないはず。なんで知っているんだ。
その手には槍が握られていた。
「そんなもん使ったら死んじゃう!」
新城が止めようとする。
「お嬢ちゃんその優しさは、ここでは命取りだぜ。」
新城の制止を払いのけ、容赦なく刺殺しようとした。
「殺しても、憎悪は止まらない。」
倒れているローブの男の周りはなぜか濡れていた。
一体何が起こったのか全く分からなかった。
「そいつは、橿原ナガラ。死刑囚の一人。かつてのいじめっこ達を殺して捕まった。相当惨いことやられていたようだな。情状酌量で死刑にはならなかったが、憎悪はそれでは収まらず無差別殺人を起こした。そういうやつだ。」
「ずっとずっと一人でいい。一人がよかった。それで幸せで…いれたはずなのに!」
なんだよ、ボクをそんな目で見るなよ。
「お前の酷い顔。ちょっとくらい傷つけてもわかんないよな!」
4人の男が笑いながら僕に見る。後で2人の女が笑ってる。
やめろ、やめろよ。なんでそんな。
容赦なく拳が飛んでくる。
「痛い」
「お前の酷い顔に痛覚なんてあるわけないだろ。笑わせんなよ。」
また拳が飛んできた。決して戻らない傷を負った。鼻の骨は折れ、頭蓋骨は大きく歪んだ。
「飽きたから早く死んで。」
蹴られすぎて内臓が壊れた。気づけば毎日血を吐いていた。
暴行のメンバーが気づけば、また一人また一人と増えていった。
9人の男が笑ってる。相変わらずその影にはいつもの女2人。
ある日異変に気付いた。
歩くことすら出来なくなっていた。
「お前のせいで俺は!!」
憎悪が増していく。殺すたびに憎悪は増していく。
「あれは冗談じゃんかよ。ハハハ」
「もう時効だって。」
許さない。許さない。
「あれは、あの女共の彼氏を決めるゲームだったんだよ。一番かっこよく殴ったやつと付き合ってくれるって。だから俺らは悪くないって、だからさ見逃してくれよ。頼む!」
憎い憎い憎い憎い憎い
「あたしはなにもしてないじゃん!」
「醜男のくせして生きてるだけでありがたいと思えよ!」
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
「世の中こんな奴ばっかりだ。」
どうしてこんな苦しまなきゃいけないんだよ!
ただ顔を隠してただ殺し続けた。
しかし、どこまでいっても俺の憎悪は止まらない。
「殺しても救われないってことは殺されても救われないってことかな。」