They are creating the old Gods' blessings
「お前どこから?」
「わたしはこの世界の神、それくらいの権限は持っています。」
こいつ何を言って。話が通じてないのか?
「さあ、来て。」
そう言うと問答無用で4人全員が宮殿の食堂のような場所に通された。
「お客様、我は殺人鬼兼このシステムの製作者、葛城アキトだ。」
後ろから現われたのは、若社長とでも言うべき若いながらも大人の装いをした男性。
「単刀直入に言わせてもらう。ここから、NOAHから出る権利を剥奪させて貰ったよ。」
何をめちゃくちゃな。
「やべ~、本当に出れないっすよ〜。」
でまかせじゃなくわざと。
「我は君たちを面白いと思った。だから是非運営側に来てほしい。」
こいつ正気なのか?
「ねぇ、アカリどうして最近会ってくれなかったんだい?」
急に話しが飛んで意味がわからない。
「我はそなたをこんなにも愛しているのに。」
「なんであんたなんかに!」
「その弱さも全部受け入れてあげるよ。優しくあの世へ連れて行ってあげる。甘く優しく幸せなまま。」
憤っていた彼女が膝をつく。その頬には涙が流れた。
「あんたに殺されるなんて、自分で死んだほうがましよ!!」
「こりゃあ、嫌われちゃったな。」
葛城は頭を掻きながら、やれやれという顔をしていた。
「じゃあ、君たちに見せたいものがある。」
完全に葛城のペースに呑まれている。
移動するとそこには、大量のサーバが規則正しく並んでいた。100いや、1000は並んでいる。
「この世界はまだ未完成だ。我々は新世界を電子で構築するために、大きなプロセッサーユニットが必要と見解にたどり着いた。ちなみにこれと同じものがここにはあと4つある。これのユニット群が完成すれば、この世界はまさしく人々を死から救う方舟-NOAH-となる。これは古の神の力を疑似的に再現したものだ。」
何を言っているのか全くわからない。人を救うのになぜ殺人鬼が必要なんだ。それに人々を死から救うってこの世界とはちゃんちゃら矛盾しているじゃないか。
「すっげー、ビッグな夢っすね!!!」
コイツはやはりあほだ。アカリも飽きれている。
「そこでアカリたちには協力してほしいんだ。」
ずっと笑っている。でも、この人の笑顔なんか怖い。そう感じた。人をなんとも思っていないような。最近どこかで見た気がする笑顔だ。
「そこでだな、死ぬ気が無い君たち4人には治安維持に協力してもらおうと思ってね。」
サービス終了に追いこもうとしてる奴らに治安維持を頼むって正気かよこいつ。俺は怖ろしくて膝が震える。
それはアカリも同じようだ。
「二人共なにビビってるスカ!楽しそうじゃないか!正義のヒーローって感じでサ!!」
「ちょっと待ってくださいよ!」
口を開いたのは常滑だ。
「ワタシはとっとと死にたかった。憎悪を向けられて嬲り殺されて、ワタシは罪悪感から解放されると思ってた。でも、邪魔をされて死ねなかった。軽い怪我をしただけ。なのに、なんでワタシまで!」
常滑は憤りを隠せない。
「そうだったか、じゃあ君はここでバイバイだ。マリ!」
最悪な顔だ。やっぱりコイツは確実にクズだ。でもここは従うしかないか。
「はい」
そう天理が言うと、常滑はその場から消えた。
「治安維持と言ってもそこまでのことじゃない。この世界の均衡を乱す不届きものを捕まえてこい!!」
さっきまでの態度と裏腹に、急に態度が荒ぶる。相当手を焼いているのだろう。
「そいつはなぁ、志願者として登録して、志願者と繋がって志願者を現実で人を殺している。犯人は検討もつかない。サーバをハッキングして被害者の情報を消してるからな。おそらく本人のデータも閲覧できないだろう。セキュリティは万全のはずだったんだがな。」
「ただわかっているのは、被害者は現実で殺されている。男女問わず、生殖に関わる器官が抉り取られているというのが共通点です。具体的に言えば、遺体に子宮や、陰茎睾丸がない。」
天理は淡々と語っているが中々にえぐい内容である。もしあの時一歩間違えばと思うと、震えが止まらない。普通に殺人鬼がこんなに混ざってるなんて信じられない。
「なんで、殺人鬼の方がしないんですか?」
俺は率直な疑問をぶつける。
「もう一人すでに殺されてる。それに殺人鬼たちには、好きなようにやらせる契約だからね。そのうえ、アあいつらは命令など守るようなタイプではない。」
俺らは死にに行かされるんだなきっと。自らの手じゃなく争わせて消そうってことか。
「あちらもおそらくハッキングで志願者よりも権限を持っていると推定できる。そこでだ。」
「あなたたちの権限を強化します。もちろん守秘義務と利用規約が発生しますので、契約書にサインはして頂きますが。契約の内容は、権限について口外しないこと。必要時以外の使用は許可されていません。」
「これもまた、この世界と同じく古の神々の力の模倣だ。何が起こるか我々にもわからない。未完成だからな。」