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第1話 ロルフさんは語りたい!

お待たせしました!ロルフとリリアの冒険編、スタートです!

 

 ◇◇◇


 ロルフが休日の昼間、ウトウトと部屋のソファーで微睡んでいると、突然玄関のベルの音がけたたましく鳴り響いた。


「ちっ!んだよっ!せっかくの休みに誰……」


 ぼんやりと目をこすりつつ出てみると、なんとも情けない顔をしたリリアが立っている。


「ちょっ!リリア!お前、なんでまた家に来てんだよ!」


 慌てて乱れた服を整えるロルフ。


「う、うう、ロルフー!森でスライムに粘液掛けられたー!」


 リリアはそう言って粘液でベトベトになった服をつまんでみせる。よくみると、透明の粘液が頬や鼻にもこびり付いていた。


「は、はぁ?もう、何やってんだよ……今日はお前、冒険休むって言ってただろ?」


 ロルフはリリアの頬を手のひらで軽く拭うと、溜め息を付いた。スライムは最弱の魔物であり、特に害もないが、たまに粘液を吐き出して攻撃してくることがある。そうして、相手がひるんだ隙に逃げるのだ。ただ、中には毒を持つものや、酸で溶かす個体もいるため、結構侮れない。幸いリリアに粘液を浴びせた個体は、害が無さそうだった。


「森の近くで散歩してたらスライムがいたから、テイム出来るかなって。そしたら、ううっ……気持ち悪いよう。家のお風呂、壊れててお湯が出ないから、ロルフの家のお風呂貸して!お願いっ!」


「はぁ……。しょうがねえなぁ。んじゃ入れよ」


 ロルフの部屋をキョロキョロと眺めるリリア。相変わらずきれいに片付けられており、余計なものは見当たらない。


(私の家よりもよっぽど綺麗なんですけどっ!)


「おい、お前、人の部屋をジロジロ観察してるんじゃねーよ!とっとと風呂に入れっ!」


「はぁーい」


 ロルフに促され、そそくさと風呂へと向かうリリア。二人でチームを組んで以来、何かと理由を付けてはロルフの部屋に入り浸るリリアに、ロルフは頭を抱えていた。


 ロルフにとっては、一世一代の告白だったのだが、リリアからはまだはっきりとした返事を貰っていない。当然、二人の間に進展はない。だが、二人っきりで部屋にいるとロルフの理性が試されるのだ。たまに俺を試しているのか?と思うほど、リリアは無防備すぎる。誘っているのか、と思うとそうでもなさそうだし。とにかく、リリアが大人になるまでは手を出さない、と決めているロルフにとって、リリアの見せる無防備な姿は実に目の毒だった。


「ねえロルフ、バスタオルどこだっけ?」


「籠の中に入ってるから勝手に使えよ」


「あっ!替えの服持ってなかった!またバスローブ借りてもいいかな?」


「……いや、バスローブはやめろ。俺の服貸してやるからとりあえずそれ着てろ」


 シャワー越しに話しかけられるのもある意味拷問なのだが。リリアはそんなこと微塵も考えないのかとちょっと心配になる。


「リリア、お前さ、他の男の家に行ったりしてねーよな?」


「そんなのいくわけないじゃん!ロルフの家が初めてだよ!」


「……そうか、ならいい」


 良くねーよっと自分でも突っ込みたくなるのだが、とりあえず他の男の家に行かれるよりはマシだと考え直す。しょうがないので、適当にシャツとズボンを掴んでバスルームの前に置いておく。


「リリア、ここに服置いとくから。ちゃんとしっかり拭いてから着替えろよ?」


「はーい、ありがとう!」


 ◇◇◇


 ソファーで再び微睡んでいると、リリアがバスルームから出てきた。


「ん、着替えたか……」


「ロ、ロルフ、これ、ズボンが落ちちゃうんだけどっ」


 ぶかぶかのシャツに今にもずり落ちそうなズボンを履いたリリアは、なんというかもう……


「俺が悪かった。今度からお前の服俺んちに何枚か置いとけ。」


「え?いいの?またお風呂入りにきてもいい?」


「うん、もういいから。で、もう一回風呂入ってろ。なんか適当に女もんの服買ってきてやるから」


「え?ええ~?これ以上入ったらふやけちゃうんですけどっ!しかもそんなお金ないしっ!」


「お前が貧乏なのは知ってる。とりあえず俺は買い物に行ってくるから、絶対に外に出るな!誰が来てもドアを開けるなよ!」


「ひ、ひどっ!うん、わかった」


「絶対だぞ!絶対だからなっ!」


「はいはーい。いってらっしゃーい」


 のんきな返事をするリリアに何度も念を押しながらロルフは服屋に急いだ。


 ◇◇◇


 なじみの服屋に行くと、その店のオーナーが服を仕立てている最中だった。ウエディングドレスだろうか、白い上質な生地にいくつもの繊細な刺繍が施されていて美しい。


「あらロルフ、今日はどんな服が欲しいの?」


 オーナーは羊獣人の男性なのだが、なぜかおねぇ言葉が板についている。丁寧な仕事とセンスの良いデザインで、王都でも評判の仕立て屋だ。ほとんどがオーダーメイドだが、既製品も多少取り扱っている。


「今日は俺の服じゃなくて、女物の服が欲しいんだ」


「あら、女の子にプレゼントするの?尻尾は?」


「尻尾はない。人間の女だから」


「へえ~?」


「なんだよ!」


「べっつに?」


 オーナーがニヤニヤしながらロルフの様子を眺めている。ロルフはプイっと横を向いた。


「年は何歳ぐらいなの?体型は?」


「年齢は14だが、普通より小さめだな。細くて華奢だ。俺の服を着せたらぶかぶか……」


「へええええええ????」


「うるさいっ!いいから適当によこせっ!」


「あらやだ、仮にもプロに向かって適当なんて言わないで頂戴。まあいいわ、とりあえずこれ、もっていきなさいよ。ワンピースだから問題なく着れるはずよ。試作品だからプレゼントしちゃうわ。その代わり、今度ちゃんと紹介してよね?」


「わかった……」


(リリアはちゃんと留守番してっかなぁ)


 包んでもらった服を抱えて、ロルフは家路を急いだ。



読んでいただきありがとうございます♪

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