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1 中間テストの勉強を周りの人たちが手伝ってくれる件

少し長めです。

 花櫻学園に転校してから一ヶ月以上の時間が流れた。


 右肩の調子も、かれこれ二回の通院でのリハビリを経て段々と良くなってきている。これならもう少しで体育に参加できるようにもなるはずだ。


 新生活にも徐々に慣れ、周りのクラスメイトたちともそれなりに打ち解け始めていると感じている。


 それと、俺が杠葉さんと普通に会話することでクラス内から非難されたりすることが全くない。


 何故か、転校生だからしょうがないという風潮になっており、二岡も全く気にする素振りもない。転校生の役得である。


 だが、やはり俺以外の男だとそうはいかないらしい。相沢に関しては徐々に話す相手が減ってしまっている。


 そんな中、ついにこの期間がやってきてしまった。


 テスト期間……。こんなにも早く恐れていた期間がやって来ようとは思いもしなかった。


 「ぐへぇ……」

 「ん……? 何よ気持ち悪い声出して」


 今日の最後の授業の日本史で中間テストの範囲について知らされ、いよいよ始まるのかと軽く絶望して机に伏せ、つい感情が声に出てしまったのを隣の席の有紗が聞いていたようだ。


 あからさまに不快感を露わにして、気持ち体を引いているように見える。


 「気持ち悪いと思うなら最初から聞かないでもらえる?」

 「隣の席なんだから聞こえるに決まってるでしょうが! バカじゃないの?!」

 「へいへいそれはすいませんでしたー」

 「で、結局何なのよ?」


 有紗は頬杖を突き、視線を外しつつ聞いてくる。


 「テストかぁと思って」

 「あんた、授業態度だけは抜群にいいんだから大丈夫でしょ? 全く寝ないしノートだってちゃんととってるわけだし」

 「俺の学力を舐めるなよ。授業をどれだけ真面目に聞こうとも、ノートをきっちりとろうとも、内容はまるで理解出来てなんかいないのだ」

 「偉そうに言うことじゃないと思うけど……。ま、確かにこの前英語の小テストの点数勝手に見させてもらったけど、悲惨だったわね。……はぁ、良いわ! 今日からテストまでの一週間、毎日一時間英語だけ教えてあげるわ」


 いや、いつ見たんだよ? 勝手に見るんじゃねーよ。せめて俺のいるところで見てくれない?

 でも、今はそんなことどーでもいーや。だって英語教えてくれるみたいだし。


 「マジで?!」

 「その代わりに平均点が取れたら私に感謝の気持ちを込めてラーメンを奢ること」

 「わかった! 平均点の半分、赤点回避が出来たらちゃんと奢ります!」

 「も、目標低いわね……。私としては勝手にハードル低くしてくれるならラーメン奢ってもらえる可能性上がるからいいんだけど……」


 別に俺としてはハードルを下げたつもりはない。有紗が設定したハードルがそもそも高すぎるのだ。


 何せ高校生になってからは、平均点の半分取れる教科なんて現代文くらいしかなかったのだからな。

 補習地獄だったよっ! はぁ、俺って何でバカなんだろう……。


 「じゃあ、そうゆうわけで頼むわ」

 「りょーかい」


 有紗はやや気怠げに返事をしてくるが、申し出てくれたわけだから嫌なわけではないはずだ。ご厚意に有難く甘えさせてもらうことにしよう。


 「はーい全員席に着け」


 藤崎先生は教室に入ってくると、手を叩きながら着席を促し教卓の椅子に座った。

 これがこのクラスの帰りのホームルーム開始の合図だ。


 散り散りになっていた生徒もそれに従い席に着く。


 「えー、今日からテスト期間に入る。テストが終わるまでの十日間原則部活も禁止だ。もし赤点があれば補習もある。それが嫌なら全員しっかりテスト勉強するように」


 藤崎先生の脅し文句にクラスメイトの顔が引き締まるが、正直俺としてはクラスメイトには真面目に勉強してほしくない……。


 なんでかって? だって平均点上がるじゃん? それって必然的に俺の赤点確率の上昇を意味するよね? あぁ、本当もういやだ……。


 「それともう一つ、テストが終わった翌週の水木金で一、二年合同の林間学校がある。その事も一応頭に入れておくように。以上だ」


 藤崎先生は連絡事項を言い終えると、いそいそと教室を出て行ってしまう。おそらく教師もテスト製作で大変な時期なんだろう。


 それに加えて林間学校とか、ざまぁとしか思えない。



※※※※※



 掃除を終えて、有紗とともに学校の図書館にやってくると、普段と違い多くの生徒がテスト勉強に励んでいた。


 騒々しいとまではいかないが、そこら中から話し声が聞こえる。


 有紗曰く、花櫻学園の図書館はテスト期間になると勉強を教え合う人達でそこそこ賑やかになるらしい。まさにその言葉通りだと思った。


 普通、図書館って静かに勉強したい人が向かう場所だと思うんだけどな。でもまぁ、この様子なら必要以上に周りに気を使わなくても良さそうだし、それならそれでいっか。


 「うわ、めっちゃ混んでんな。いつもこんな人いないのに」

 「みんな必死って事でしょ? あ、あそこ空いてるわね」


 とある六人掛けのテーブル席の所に四人分の空席がある。二人分の荷物だけが置いてあって人は居ない状態だ。


 特に別の人が座っていようが俺としては気にしないから、そのまま荷物の置いてある向かい側の席、一応先に席取りしている人と気持ち距離を開ける為に対角線上に座った。


 それよりも……。

 有紗の隣に座る俺に周囲の野郎共から殺意の入り混じった視線を感じる……。


 「何よその恐怖に怯えた顔は。私に教えてもらうのが嫌なわけ?」

 「そうゆうことじゃなくって……。ま、周りの視線が俺にくたばれって言ってるんだが……」

 「ん……? あぁー、それなら任せなさい」


 周囲を見渡す有紗が周りの野郎共を睨みつけていく。


 すると、野郎どもは睨み付けてもらって満足したのか、ニヤニヤしながら勉強に戻っていく。


 き、気持ち悪いんだが……。お前ら揃ってドMかよ……。


 「これで良し。じゃ、やるわよ」

 「お願いします先生」


 かくして、有紗先生による英語教室が始まった。

 が、しかし……。


 「あーもう! あんた! 去年一年間何やってたわけ? 一年生の内容ですら全く理解してないじゃない! これじゃあんた、中学生レベルよ?!」


 俺の学力レベルの現実を理解したのか、有紗は頭を抱えて塞ぎ込む。


 「す、すいません……。去年は勉強させてもらえなかったのです……」

 「はぁ? 何言ってんのあんた」


 こ、怖い……。そんなに睨まないで。ホントのことなんだから。


 「去年は入学してから朝は朝練、放課後は晩まで部活。土日も部活。ホント部活三昧。テスト期間中も関係なし。求められるのはテニスだけ。納得いかないのは、怪我してても問答無用で部活には行かなくちゃダメだったこと。夜は寮監が見回りに来て消灯しないとキレられる。訳すと、自主勉が出来ない。ホント、嫌になっちゃうよねぇ」


 俺が自嘲気味に言うと、有紗は流石に引いた顔をしてしまう。


 「超名門皇東の闇を感じたわ……。あんたがバカなのも頷ける。はぁ……、でも中学生レベルあるのは救いだわ。一応何とかなりそうね」


 俺の皇東時代に同情したのか、有紗は苦笑いを浮かべながらフォローを入れてくれる。


 「お、椎名と姫宮じゃねーか」

 「ヤッホー姫ちんと椎名っち」


 どうやらこのテーブルの席を確保していたのは相沢と春田だったようだ。俺たちがこの席に座ってから結構な時間が経ったのだが、一体どこへ行っていたのやら……。


 「二人も勉強か?」

 「そうそう! お父さんがうるさくってねぇ! 相沢っちにまで口うるさく勉強勉強って。ねっ?」

 「おいおい、俺は別に口うるさいとは思ってねーよ。むしろ親ってわけではないのに俺にまで勉強勉強言ってくれてちょっとやる気出たぜ?」


 弥生日和でアルバイトをしている相沢からしてみれば、店主から可愛がってもらえることが嬉しいのだろう。


 俺も母さんから、小学生の夏休みには頻繁に図書館に向かわされて宿題をやっていた。

 一時間勉強したら、その日は好きにしていいって条件付きで。それが当時の俺には嬉しくて苦にならなかったことを覚えている。


 というか、小学生の頃はそれなりに勉強したのに俺って何でこんなバカなの? やばい、涙が出てくる……。

 でもこんな俺でも現代文だけは赤点は取ったことがないのだ!

 ある人物に影響されて、勉強そっちのけで本を読み漁ってた時期があったからな。


 「なに目をうるうるさせてんのよ。バカすぎてツライなら、ほら、続きやるわよ」


 有紗に促されて再び英語の勉強に取り組む。


 どうやら今日は、一年生の英語で学習する文法の内、今回のテスト範囲で使う文法だけは覚えろとのこと。


 ここはこうでどうしてこうなるのかということを丁寧に教えてくれるから、意外と分かった気になれる。


 集中して勉強すると時間が経つのはあっという間で、既に一時間ちょっと経過してしまった。


 「どう? わかった?」

 「うん、多分」

 「なら家に帰って一通り復習すること! 明日確認するからね! あと、テスト範囲の教科書に出てくる英単語をしっかり覚えること。これは完全に暗記だからあんた次第よ。発音がわかんなかったらメモして明日私に聞くこと。いい?」

 「イエッサー!」

 「真面目に返事してもらえる?」

 「はい……」


 気合を入れたつもりだったのだが、真剣に教えてくれる有紗からすればふざけているように感じてもおかしくはない。

 冷めたトーンで言われると、自分の愚かさに目が覚めた。


 「へぇー、姫ちん教えるの上手いんだねぇ。でも今教えてたの一年生の頃習ったやつじゃなかった? 椎名っちって元々皇東行ってたんだよね?」

 「弥生、皇東にもバカはいるみたいよ」

 「あぁー! 納得! 椎名っちってやっぱバカなんだね!」


 『納得!』じゃねえんだよ! まだ何にも言ってねぇだろ!

 しかもやっぱって何? 日頃からそんなバカに見える?

 俺、割と大人しくしてるんだけど? 二岡の取り巻きみたいにウェイウェイしてないんだけど? あいつらの方がよっぽどバカっぽいじゃん……!


 「さてと、私も自分の勉強しなくちゃ」


 有紗は英語の教材を鞄に仕舞い、生物の教科書と配布プリントを取り出す。


 「姫宮、生物の勉強すんのか?」

 「えぇ。生物はちょっと苦手だから重点的に勉強しないとだから」

 「今から春田に生物教えてもらうけど、姫宮も教わるか?」

 「え? 私もいいの?」

 「いいよいいよ! あたし生物得意だから! あ、椎名っちもついでに教えてあげようか?」


 思いがけない春田からのお誘い。これに乗っからない手はないと思った。


 「お願いします」

 「じゃあルーズリーフか何かメモ取る紙も出してもらえるかな?」


 春田に言われる通りにルーズリーフを取り出す。もちろん有紗もきっちりと用意している。


 かくして、春田先生による生物教室が始まった。


 そして時間にして三十分程度が経過した頃……。


 「や、弥生、すっごいわかりやすいわ!」

 「確かに授業よりわかる気がするわ」


 有紗と相沢にそう言われて春田は満更でもなさそうに笑みを作る。


 「そう言ってもらえると嬉しいよ! 椎名っちはどうだったかな?」

 「かなりわかったぞ。もしかしたら平均点くらいいけるかもしれん。サンキューな」

 「どういたしまして!」


 生物の場合、二年から学習することもあり最初のうちは内容も簡単なはずだ。

 そして、俺は授業だけはクソ真面目に受けてるし、それに加えて春田の教え方の相乗効果でかなりの点数が期待できる気がした。


 「一つ提案なんだが、俺も春田もテスト終わるまで弥生日和で働くことは禁止されてるから、土日以外は毎日ここに来て勉強する。聞いた感じだと多分二人もそうだろ? なら、各々の得意科目を教え合うってのはどうだ? 今日の感じ、自分一人で勉強するより理解度はかなり高いと思うんだが……」

 「良いわねそれ。私はそれでもいいわよ?」

 「あたしも賛成だよ! 姫ちんの英語わかりやすそうだったし!」


 相沢の提案に有紗と春田は乗り気のようで、後は俺次第といった雰囲気だ。俺ももちろん賛成したい。したいのだが、今の提案には問題点が一つある。


 「えっと、じゃあ俺は……」


 どうしたらいいかわからず言葉に詰まってしまう。


 「椎名、お前は別に教える側にならなくてもいいぞ。どーせ何も教えられないとか気にしてるんだろ?」

 「うっ……」

 「図星って感じだね椎名っち」

 「はい……。俺には皆さんに勉強を教えられるような科目はございません。ですが、明日からも勉強を教えていただいてもいいでしょうか?」

 「ふふっ! しょうがないなぁ! この春田弥生が明日からも生物教えてあげましょう!」


 春田は腰に手を当て顎を上げ胸を張り、最大限に偉そうにする。

 だが、俺は何も出来ずただ教えてもらうだけの立場だ。どれだけ偉そうにされても余裕で許容範囲内だ。


 「ありがとうございます」

 「あ、私は約束さえ守ってもらえればそれでいいわよ?」

 「はいよー。ちゃんと守りますよ」

 「約束って何のこと?」


 話を聞いていた春田が興味津々の顔で聞いてくる。


 「あー、それはだな、俺が英語で赤点回避したらラーメ――っうぎっ?!」


 突如足の甲を激痛が襲った。恐る恐る隣の有紗を見ると、鬼の形相で俺を睨んでいた。


 「ラーメ? って、じゃなくて椎名っち大丈夫?!」

 「大丈夫大丈夫。何ともないわよね?」


 綺麗なお顔にニッコリスマイル。……いや、怖えよ。全然笑ってないじゃないっすか。


 恐らくラーメンを奢る件を他人に話すのは、大食いであることをひた隠しにしている有紗的にはダメなのだろう。これ以上言うのは可愛そうだからやめておこう。


 「も、もちろん大丈夫……」

 「なら良いけど、いきなり奇声発するからびっくりしちゃったよ」


 周りの他の生徒もこちらのテーブルに一斉に振り返ったくらいだから、春田がびっくりするのも理解できる。


 周りの生徒さんごめんなさーい。もう勉強に戻ってもらって大丈夫ですよー。


 「じゃあ、何はともあれ決まりだな。姫宮が英語、春田が生物、俺が世界史。椎名はとりあえず集中して聞くこと。あとは……、数学と古典、日本史、そこら辺は各々自分でってことになりそうだな」


 うーむ、日本史はワンチャン大丈夫かもしれないけど古典はまず赤点だし、数学に至っては壊滅してるからやっぱ不安だな。……あ、そういや数学は陽歌に教わればいっか。確か得意だったよな。


 俺は思い出したようにスマホを取り出し陽歌にメッセージを送る。


 【数学教えてくんね?】


 「姫宮、杠葉は呼べないのか? 確か頭良いよな?」

 「え……? 呼べば来ると思うけど……」


 有紗の反応が鈍い。何かあるのだろうか。


 「どうした?」

 「え?! どうしたって、あんたと弥生は大丈夫かもしれないけど、相沢は大丈夫なわけ?」


 言いたいことはわかった。でも今の相沢なら普通に大丈夫なはずだ。

 おっと、陽歌から返信だ。


 【いいけど、今どこにいるの? 私家だから、教えてほしければ自分で来てくださーい】

 【今有紗とかと学校で勉強中。あとで行くわ】


 「俺は別に大丈夫だけど?」

 「ごめん姫ちん! その、なんと言っていいか、あたしたち、勘違いしてたみたいで!」


 春田がいきなり手を合わせて頭を下げる。ただ俺には、春田が言いたいこともわかっている。


 「え……? どうゆうこと? どうしたのいきなり」

 「まぁ、簡単に言うとだな、相沢も春田も本当の事に気付いたってことだろ」

 「本当の、こと……。それって……」

 「あやちんは最初から二岡くんの彼女なんかじゃないよね! それに気付いたんだけどさ、これまでずっと勘違いし続けてあやちんや姫ちんを苦しめた手前、中々言い出せなくって。だから、ごめん!」


 春田は再び手を合わせて頭を下げる。


 「俺も悪かったな。でも、それに気付いてからは杠葉ともだいぶ普通に接することが出来てきたし、気付けて良かったよ」


 今まで、何度訴えても起こらなかった事態に有紗は目を大きく見開いて驚いている。


 「ホントに、そんなことがあるのね。ちょっと夢を見てるみたいよ」

 「夢じゃねーぞー」

 「わかってるわよ! みたいって言ったでしょ! でも良かったわ。誤解が解けたみたいで。きっと綾女も喜ぶわ。あ、思い返してみれば相沢、ちょくちょく綾女に話しかけたりしてたわね」


 今まで何を見てたんだと言いたくなったが、有紗も以前とは少し変わっている教室の風景を思い出したようだ。


 「俺もただのイカサマ君にいつまでもヘコヘコしてなんかやらねーよ。ま、おかげさまであのグループの輪には入れなくなったけどな! 特に後悔はしてねー」

 「羨ましいな相沢、俺も一度でいいからあの輪に入ってウェイウェイしてみたいわ」

 「あんたの場合、そもそも入る気がないんでしょ……。でもわかったわ! これで何も気にせずあの子も呼べるのね! ちなみに綾女は当然全教科出来るけど、その中でも特に古典と日本史が得意よ」

 「ならちょうど良いな。流石に両方ってのは申し訳ないからどっちかを教えてもらおう」


 有紗は俺に冷静にツッコミを入れながらも杠葉さんを呼べることをとても喜んでいる。


 【あとでって……! それなら私も誘ってよ! バカ!】

 【まず一つ、俺はバカじゃない。二つ、元々有紗に英語を教えてもらうだけのはずだったんだ。三つ、居合わせた相沢と春田も加えてお互い得意科目を教えあうことになったんだ】


 「どうしたの?」


 気付けばスマホに夢中になっていた俺に有紗が尋ねてくる。


 「陽歌に数学教えてって頼んだんだけどさ、勉強に誘わなかったとか言ってキレてまして」

 「なら、明日からはるちゃんも誘えばいいじゃない」

 「確か御影は数学得意だよな? それ抜きにしても別にいいんじゃね?」

 「みんなで勉強した方がやる気も出るからね!」


 有紗のごく当たり前な提案に相沢と春田も賛同している。なら話は早い。


 【そうだね! バカじゃなくて大バカだったね! 間違えちゃってごめんね?!】


 話は早い。そう思ったのだが、こう返信されると無性にムカついてくる。


 「ごめん、やっぱあいつ誘うのやめていい?」

 「えー? なんでよ?」

 「ほれ」


 有紗に先程の陽歌からの返信を見せる。


 「やだぁ! はるちゃんったら可愛いっ! あんたの事よくわかってるわねぇ」

 「あぁっ?!」

 「なによぉ、このくらいのことで怒っちゃって大人げないわねぇ」

 「ったく……」


 【有紗も相沢も春田も明日からお前にも来てほしいらしいぞ。あと杠葉さんも誘うらしい】

 【ホントに?! 行く行く! じゃあまた明日ね!】


 「明日から陽歌も来るってよ」

 「じゃあ決まりだな。明日からみんなで勉強会だ」


 ということで、明日から六人での勉強会が始まることになりそうだ。


 赤点まみれの俺にとっては願ったり叶ったりの案件である。出来れば、今回の中間テストでは半分の教科は赤点回避したいところ。


 机の下で握り拳を作り、気合を入れた。

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