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5 二岡真人は計画する

短めです。

「新年度が始まって初めての週末だ。とは言ってもまだ授業開始一日目なんだが……、あんまり浮かれて羽目を外しすぎない事! 私からは以上だ。では、放課後は部活なり勉強なり各々好きに過ごすといい」


 藤崎先生はそれだけ言うとそそくさと教室から出て行ってしまう。

 この後は基本的に多くの生徒が班ごとに自分の掃除場所に向かう。ちなみに俺の班は今月は掃除はない。


「みんな、掃除に行く前にちょっといいかな」


 クラスの生徒が各々鞄の整理などを始めている中、教卓の前で一人の生徒が声を上げた。二岡だ。


 二岡の言葉に教室中の視線が教卓に集中する。


「明日か明後日、椎名の歓迎会も兼ねて新しいクラスで親睦を深めるクラス会をやりたいと考えているんだけど、どうかな?」


 うげっ、マジか。そんな大層なことしてもらいたいとか思ってないんですけど。

 というかこいつが言うと藤崎先生のせいで打算的な何かを感じてしまうんだよな。


 だがそんな俺の気持ちとは裏腹に、クラスのほぼ全員が二岡の提案に賛同している。


「椎名はどうかな? 土日のどっちか空いてたりするかな?」


 正直行きたくない気持ちが大きいのだが、ここで断ればクラスの空気が悪くなるのは明らかだ。

 それこそ、藤崎先生の言うクラス崩壊とやらの引き金に俺が成りかねない可能性も否定できない気がした。


「えーと、日曜は次の日学校があるし土曜の方が良いんじゃないかと」

「それもそうだね。綾女はどう思う?」

「そうゆうことなら、良いと思います」


 杠葉さんもこの提案に賛成のようで、今回は昨日と違いはっきりと発言している。


「では明日の土曜日にしよう。急な話だから予定があって来れない人もいるのは申し訳ないんだけど、参加できる人は参加してくれると嬉しいかな」


 二岡は参加出来ない人に詫びを入れつつ爽やかなスマイルで呼びかける。


「この後新しいクラスのグループを作っておくから、詳しいことはその中でトークしよう。まだ全員と連絡先を交換できたわけじゃないから、俺がグループに招待した人はまだされてないクラスの人をグループに招待してくれ。クラス全員が揃ったら参加、不参加の出席を取るからみんなよろしく。少し時間を取っちゃってごめんね。俺からは以上だ」


 そこまで言うと二岡は自分の席に戻っていった。

 二岡の言うやり方ならクラスのグループトークからハブられてしまう人はいないはずだかは、良いやり方だと思ってしまった。

 流石優等生、やはり頭は良いようだ。


「なーに死にそうな顔してんのよ?」

「分かる?」

「分かるわよ。行きたくないって顔に書いてあるから」

「え? 顔に出てた? まさかバレてないよね?」

「大丈夫よ。さっきまでは保ってたから。ま、今はモロ出てるけど」


 とりあえず先程二岡に聞かれた時はポーカーフェイスを保てていたようで安心した。

 掃除は無いから、鞄を手に取り帰宅する為に教室を後にする。


「あ、待って私も行くわ」


 有紗も素早く帰り支度をして荷物を手に取り、教室の外に出てくる。

 校門までの間、やたらと周囲にいる男子からの嫌悪感の混ざった視線が俺に向けられていた気がした。

 やはり有紗もモテるのだろう。

 だがしかし、全く男の影は感じられないのが少々疑問だったりもする。


「有紗はクラス会、行くのか?」

「はぁ……、綾女が行くから行くわよ。むしろ綾女がいないんじゃ絶対行かないわ。あとはるちゃんも」


 俺の問いに有紗はため息を吐き、少々気怠そうに参加することを教えてくれた。


「なんか、杠葉さん第一って感じだな有紗って」

「それはそうよ。あの子は今の私にとって全てなんだから」

「ほぉー」

「失いたくないのよ、もう……」


 有紗はボソッと呟いた。

 有紗は以前陽歌とは『親友だった』と言ったのが俺の中で引っかかっていたのだが、今の一言で何となく察した。

 昔陽歌との間に何かあったのだろう。

 しかし、今現在陽歌との関係が悪いようには全く見えないし、無理に詮索する必要もないから聞き流すことにした。


「クラス会なんて行きたかねーけど、この際杠葉さんともう少し仲良くなれればそれでいっかな」

「はっ? まさかあんた綾女のこと狙ってるわけ? ダメとは言わないけど、私の目利きに適ってからにしてもらえるかしら?」


 何でそうなる?!

 確かに杠葉さんは、個人的に一番可愛いし優しいし礼儀正しいし世の男子の理想系だけど、俺なんかと全く釣り合わねーよ。

 というか目利きに適ったらいいのかよ。何が何でもダメなんだと思ってたけど?


「いやいやちげーよ? まだ有紗とかと比べて距離感を感じるっつーか」

「そんなことはないと思うけど? 少なくともその他の男子よりぜーんぜん近いと思ったけど?」

「そんなことねーよ。俺転校してきたばっかなんだし他の男子より距離近いわけねーじゃん」


 花櫻の男子生徒たちは、心の距離こそ杠葉さんとはかけ離れているように感じるが、実際同じ学園で生活してきたわけだし、物理的距離は俺なんかより遥かに近かったはずだ。

 まぁ、今言われてるのはそんなことではなく、心の距離なんだろうけど。


「あんたは綾女ともっとお近づきになりたいってわけね。やっぱ綾女狙いじゃない」

「だからそうじゃなくて……。そもそも俺なんかと釣り合わねーだろ。そんな淡い期待抱くほどバカじゃねーよ。それこそ、客観的に見てかろうじて杠葉さんと釣り合う男をあげるとしたらこの学園の超人気者の二岡くらいなんじゃねーの?」


 もちろんそんなことは思ってなどいないが、俺の発言に有紗はやれやれといった具合に両手を広げ――。


「あの男が綾女に釣り合うわけないでしょ。あんたもなんとなく分かってるくせに」


 ――呆れたような表情で俺を見てそう言った。


 まぁ、あれだけ公に杠葉さんを困らせるような奴だしな。周りは全く気付いてないっぽいけど……。


「ところで、前に俺に持たせた荷物、いつ取りにくるんだ?」

「丁度いいから、今からあんたの家に行くわ」

「あーそー。んじゃ行くか」


 俺としてもこのままだと俺が持っていく羽目になりそうな予感がしていた。

 特に断る理由もない為、有紗を家に案内することにした。


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